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本連載では「トラフィック可視化で変わるネットワークの姿」と題して、プロセラネットワークス ジャパン代表の菅野真一が、有識者、パートナー企業、社内エヴァンジェリストに話を聞いてきました。今回は、菅野自身が、プロセラネットワークスのソリューションが、DPIの技術をコアにして加入者体験をいかに向上するか、また2016年に挑戦する新たな取り組みについて解説します。(構成:WirelessWire News編集部 板垣朝子・写真:須賀喬巳)

プロセラネットワークス ジャパン代表 菅野真一

「エリアとダウンロード速度」だけで利用者はオペレーターを評価しない

この連載で私はこれまでにたびたび、プロセラネットワークスのミッションを「加入者体験の向上」と説明していますが、それが具体的に何なのか、ということについて、あまりお話していなかったように思います。

「加入者体験の向上」という言葉には広い意味を包含しています。加入者とはすなわちネットワーク利用者ですが、その視点からみると、インターネットへの接続が早い、ビデオがとぎれずに見られる、SNSのアップロードが早い、ゲームの応答(リアルタイム性)が早い、などの体感にかかわるところだけでなく、通信事業者が適切なプランを提供しており、利用できるかどうかということも「加入者体験」に含まれると考えています。

加入者体験の向上は通信事業者にとっては顧客満足度の向上でもありますから、そのために帯域やネットワーク資産を有効活用し、加入者の使い方に合わせたサービスレベルを実現し、また加入者要望に合わせたサービスプランを設計することが課題となります。

しかし、実際に加入者体験が向上しているのかどうかを明確にすることは容易ではありません。これまで通信事業者はエリアとダウンロード速度を主に指標とされていると思いますが、ネットワークの使い方が多様化してきている現在では、加入者から見た体験の指標も変化しています。

▼多様化する指標
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アプリケーションの種類だけでなく、スマートフォン、タブレット、PC、ゲームなど、端末の種別や有線、無線などのネットワークの種別によっても、加入者が重視する指標や期待値は異なります。また、評価指標は時間帯・場所・イベントなど、状況によって、リアルタイムに変化します。プロセラネットワークスのPacketLogic ソリューションは、多様化した指標の改善をトラフィックやネットワークの情報と連携して実現しています。

「可視化」と「制御」を提供するPacketLogicソリューション

プロセラネットワークスのPacketLogicは、DPI(Deep Packet Inspection)技術で収集したトラフィック情報とサーバー・ネットワーク機器が持つ情報を連携して、End to Endのトラフィック可視化に必要な情報を収集し、それをさまざまな切り口で可視化し、加入者体験向上に必要なアクションを取るところまでを提供します。

▼PacketLogicが提供するソリューション
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設定したルールについては、さらに情報を収集し可視化することでその有効性を検証し、必要であればルールの再設定を行うというサイクルを繰り返します。PacketLogicは3つの製品から構成されています。

PacketLogic Realtime Enforcement(PRE)

トラフィックが集中する部分に配置し、必要なトラフィック情報を収集します。プロセラソリューションのコアとなる製品です。IPアドレス、アプリケーション、トラフィックの品質をリアルタイムで測定し、可視化します。また、設定したルールにもとづいてパケットシェイピングなどの制御を行います。

PacketLogic Subscriber Manager(PSM)

PREで収集した情報を加入者情報やポリシーなどと関連づけ、サービスプランや端末情報、ロケーションなどより高度な分析のための情報を収集します。PSMとPREが連動することで、加入者ごとに最適な制御を行うルール設定が可能になります。

PacketLogic Intelligent Center(PIC)

PREとPSMで収集した情報をストレージに蓄積しておき、さまざまな角度で分析します。リアルタイムの可視化により、迅速なトラブルシューティングや詳細なレポート作成が可能になります。

▼ネットワーク内におけるPacketLogic製品の位置づけ(図をクリックして拡大)
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製品体系としては、PREをコアとして、PSM、PICをオプションとしてご提供しています。しかし、PRE単体ではいわゆるDPIをメインにした機能しかご提供できません。我々が目指すのは加入者体験の向上であり、DPI技術はそのための1つのコンポーネントとして位置づけており、そのためにはPSM、PICが必要になります。その点がプロセラネットワークスの強みであり、選んでいただいたお客様の9割は3つを同時に導入されます。

DPIベンダーと一括りにされるのには抵抗がある

プロセラネットワークス ジャパン代表 菅野真一

弊社は市場からはDPIベンダーだと認識されています。DPIとはパケットを見てアプリケーションを識別する技術で、2000年代前半頃に流行ったP2Pアプリのトラフィックを検知してコントロールしたいという要請から始まりました。2010年頃にはP2Pトラフィックだけではなくさまざまなアプリを検知できるようになり、ネットワークの投資最適化などに利用されるようになってきました。更に現在は今ご紹介させて頂いている様な加入者の体験を向上するソリューションとして進化しています。

他にDPI市場には複数社がいて、プロセラネットワークスの参入は後発になります。弊社は、「アプリケーションの識別」や、「PCRFの指定するポリシーにもとづいてポリシーを実行する(PCEF)」というオーソドックスな部分だけに特化するのではなく、パケットドロップ率やRTTなどのサービス品質や、加入者の利用端末、ネットワークの混雑度、ネットワークトポロジーなど、通信事業者のネットワーク上のトラフィックに加えてEnd to Endの情報を可能な限り収集できるよう、取り組んでいます。アプリケーションの識別数についても約2,500種類と非常に多くの検知ができる様になっており、毎週アップデートしてグローバル、および日本の新しいアプリケーションや変更に追従しています。ルール設定も、1つのフローに対してPacketLogicはルールが15まで設定でき、よりきめ細かな制御が可能です。

弊社の方針としては、サーバーやネットワーク機器と連携し、DPI以外の技術も組み合わせて加入者体験の向上に取り組むということです。ソリューションに如何に付加価値を追加していくか日々検討している当社と、オーソドックスな機能を提供している会社とでは目指すところが違うので、「DPIベンダー」として一括りにされるのにはちょっと抵抗があります。後発のプロセラネットワークスがシェアを伸ばせているのも、こうした取り組みによって小さな投資で付加価値の高いネットワークを実現できることをご評価いただいているのだと思います。

日本市場の特異性は製品やソリューションを鍛える場

プロセラネットワークスの本社はアメリカにあり、開発拠点はスウェーデンと、あとカナダにあります。社員は約250名と小さいけれどもグローバルな会社です。日本にいると時差で苦労しまして、日本のお客様は昼間、エンジニアはスウェーデンに合わせて夕方から深夜、本社の対応はアメリカに合わせて深夜から早朝に対応することになります。なので、日本社員の勤務時間もそれに合わせてばらばらだったりします。

▼プロセラネットワークスの概要
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気質的にもミックスされていて、アメリカ人は優雅で大々的なプレゼンテーションが好きですが、北欧の人は日本人に近く、できないことはできるとは言わない気質があります。アメリカ的な自由な発想で新しいビジネスを考え、北欧の地に足がついたエンジニアが実装していきます。そんな違いはあっても、全員が常にトラフィックのことを考えている、オタクの集団です。

プロセラネットワークスのグローバルな組織は「南北アメリカ」「アジア・太平洋」「ヨーロッパ・中東・アフリカ」「日本」の4つのリージョンに分けて運営されています。2011年に設立されたプロセラネットワークス ジャパンは、APACの下ではなく、独立した日本リージョンの組織として存在しているのです。なので、私も、本社の製品、開発、営業の責任者と直接やりとりしています。

そうなった背景には、「品質に対する要望が高く、独自仕様への対応が必須」という日本市場の特異性があります。また、「礼儀やルールを重んじる」「新しいことには慎重で細かいことまで気を配る」といった、日本のお客様ならではの特性もあります。こうした日本市場を面倒だと見るのではなく、「要求が厳しい市場を手本として製品やソリューションを鍛え、良い物をグローバルに展開していく」という考え方を経営陣がしているからこその独立リージョンなのです。

同じものをグローバルで売るという考え方の会社もありますが、プロセラネットワークスは「お客様の要望は国やオペレーターによって違う」という前提で、お客様に合わせていくという方針です。日本で特殊な要望があって実現した機能が取り入れられ、標準機能としてリリースされるということもよくあります。私も、グローバルの考え方と日本のお客様の両方を理解し、日本のお客様に満足していただくことで、グローバルを引っ張っていくという気持ちでやっています。

売上利益は第一目標ではなく最終目標

プロセラネットワークス ジャパンは2011年に設立し、大手通信事業者様、ケーブル会社様、MVNO様、ISP様向けに事業を展開してきました。お客様との関係を構築し、要望と課題を把握したうえで、グローバルのサポートや知識、経験を活用し、多様なソリューションの中からベストな解を見つけて提案し、実現することで、単なる箱売りベンダーではなく、お客様の課題解決のパートナーになるべく活動しています。

▼ユースケースの広がり
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米国企業ですから売上や利益には厳しいノルマは課されていますが、私は売上至上主義にはなりたくありません。売上というのは、お客様に価値を認めていただき、払っていただくものです。すなわち、売上を第一目標にするのではなく最終目標に置き、そのためにはお客様の課題を解決して満足度を向上していくことが大切です。

そのための課題を逆に考えていきましょう。ベストな提案のためには、顧客の要望を理解し、本社との調整をする必要があります。そのためには顧客との関係構築と積極的な提案活動が必要です。そのためには社員が活動する環境を整備する必要があります。そしてさらにさかのぼると、このような考え方に共感できる社員を採用する必要があります。

お客様に良い提案をしようとすると必ず労力がかかります。通信事業者様でもネットワークへの投資方針は大きく違いますし、更に新たに異業種からMVNOに参入するお客様は、必ずしも通信で儲けようとしているわけではありません。ショッピングサイトで買い物をしてもらうための通信、旅行業で申し込んでもらうための通信、車を売るための通信となると、従来の通信事業者とは全く違ったロジックになります。お客様全体のビジネスを理解し、考えて、どのような通信サービスを加入者に提供するのか提案できなくてはいけません。

お客様を理解するためには手間も時間もかかります。このやり方を「効率的ではない」という意見もあり、必ずしも賛同してくれる人ばかりではありません。でも、当社のソリューション特性からいって、こうしなくては売れないと私は思っています。その考え方に共感してくれる人を採用し、彼らが活躍できる環境を整えるのが私の役割です。

2016年、新たな市場への挑戦

プロセラネットワークス ジャパン代表 菅野真一

2016年、プロセラネットワークス ジャパンは、引き続き大手・中堅通信事業者、MVNOのお客様との関係を構築し、ご満足いただけるご提案をさせて頂ける様、鋭意取り組んでまいります。通信業界を取り巻く環境は、政府も推進するサービスプランの多様化、MVNOプレイヤーの増加、光コラボモデルによるモバイルと固定回線のセットプランなど新しいビジネスモデルの登場、そして2020年の東京オリンピックとIoTの広がりと、大きく変化しており、プレイヤー、サービス、アプリケーションの多様化が進んでいます。ここに我々としてはビジネスチャンスがあると思っています。

また今年、新たな取組として、エンタープライズ市場のお客様にも用途を広げるべく、新たに「認定パートナー制度」を発足したいと考えています。エンタープライズ市場は我々がよく知る通信業界とは全く別世界で、一つの企業がアプローチすることは不可能です。さまざまな業種のお客様を熟知したパートナー企業の方に弊社のソリューションをご理解いただき、ご提案の中に、プロセラのソリューションを付加価値として柔軟にご提案いただける仕組みを作っていきます。

日本においては、エンタープライズ市場は未開拓ですが、アメリカや韓国では大企業、スタジアム、美術館、大学、コーヒーショップなど、さまざまなユースケースがあります。例えば、コーヒーショップで店内のフリーWi-Fiからポルノコンテンツへのアクセスを遮断する、スタジアムのWi-Fiでアップロード用の帯域とQoSを確保するといったケースです。

我々の役割は日本のエンタープライズのお客様向けに、ユースケース別に機能を絞り込んで分かりやすくパッケージしたソリューションを提供することです。販売モデルを変えることで、日本のエンタープライズ市場にもプロセラネットワークスのソリューションを採用していただきたいと考えています。

お客様の要望と課題が多様化する中、お客様を理解し、キーとなるソリューションを提供することを2016年も愚直に続けていきます。プロセラネットワークスが提供するDPI技術は、加入者体験を向上するソリューションの一部を構成することで、利用者のサービスを向上するために利用されているのです。決してあきらめずに、DPIの枠内にとらわれないで、それぞれのお客様に最適なソリューションをご提案し続けていきたいと思います。

 

【関連情報】
さまざまな利用パターンの可視化でユーザー体感を向上するソリューション プロセラネットワークス
メールでのお問い合わせはこちらまで japan-sales@proceranetworks.com

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特集:トラフィック可視化で変わるネットワークの姿

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