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グーグルのディープマインド、英国で膨大な患者データを入手可能に

2016.05.06

Updated by WirelessWire News編集部 on May 6, 2016, 16:11 pm JST

囲碁AI「AlphaGo」を開発したことでも知られるグーグル傘下の英ディープマインド(DeepMind)が、今年2月に英国の公的医療機関と結んだ契約を通じて膨大な量の患者データを入手できる立場にあることが報じられ、一部で波紋を呼んでいるようだ。

ディープマインドは今年2月に、英国の国民保健サービス(National Health Service、NHS)と医療関連アプリの開発などに関する契約を結んだことを明らかにしていた。英New Scientistによると、この契約は表向き「腎臓病患者の容態をモニターする病院関係者向けアプリの開発」などとされて、ロイヤル・フリー・ロンドンNHSトラスト(Royal Free London NHS Trust)が運営する3つの病院が患者データをディープマインドに提供することになっていた。ただし、病院側では腎臓病患者のデータだけを区別して保管してはいないことから、実際にはこれらの病院を利用した全患者のデータがディープマインド側に渡る可能性があるという。

また、ディープマインドに共有されるデータのなかに、HIV感染や中絶、薬物中毒などのセンシティブな情報が含まれるほか、契約内容との関連性が低い、もしくは関連性のない検査結果や通院記録、さらにいつ、どの患者に見舞客があったかといった情報なども含まれている。3つの病院を利用する患者の数は年間約160万人とされ、ディープマインドでは過去5年間のデータを利用できる取り決めになっているという。

ディープマインドには、患者の医療データ利用に関して、同社が契約した第三者の手でデータを管理することや、共有したデータを英国内に保管すること、また契約の期限が切れる2017年9月にはすべてのデータを消去することなどが求められているという。

メドコンフィデンシャル(MedConfidential)という医療情報関連の市民団体の運営者は、New Scientistに対して「ディープマインドがこれだけの患者データを利用できる立場にあることは今回初めて知った」「彼らは腎臓病患者のデータだけでなく、あらゆるデータを手にすることになる」などとコメントしている。

いっぽう、グーグルやディープマインドが入手した患者データを他の目的に流用したり、患者のプライバシーを侵害する懸念はないものの、分析技術の開発などを通じて同社のNHSに対する影響力が大きくなりすぎることを懸念するケンブリッジ大学研究者の見方も紹介されている。

【参照情報】
Revealed: Google AI has access to huge haul of NHS patient data - New Scientist
Google's DeepMind gains access to wide swath of British healthcare data - ZDNet
Google given access to healthcare data of up to 1.6 million patients - The Guardian

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