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21世紀のゲームセンターはVRでどう変わるか

You can play old fashion game in arcade at 21st century

2016.05.26

Updated by Ryo Shimizu on May 26, 2016, 05:39 am JST

■バブルボブルおじさん現る

 ふとしたときに「最近、秋葉原のゲームセンターがアツい」と聞きました。
 年齢もありますがすっかりゲームセンターから足が遠のいてしまった筆者は、久しぶりに聞いたその単語に、強い郷愁を感じずにはいられませんでした。

 「どうもバブルボブルをニコ生で中継していて、めちゃくちゃ上手いテクニックを持つバブルボブルおじさんと呼ばれる人が毎日4時間くらいプレイしてカンスト(筆者注:最高得点を出すこと)してしまうらしい」

 半信半疑で秋葉原のゲームセンター「Hey」に行くと、筆者はおおいに驚きました。

 ゲームセンターが様変わりしていることではありません。
 むしろ全く、様変わりしていないことに驚いたのです。

 そのゲームセンターはエスカレーターで登っていった2FがUFOキャッチャーやプリクラなど、比較的デートで使われそうなライトなゲームが設置されていて、3Fがなんとレトロゲームコーナー。

 90年代のゲームを中心としてさまざまな名作がプレイできるようになっています。
 写真は、弊社の社員がダライアスをプレイしているところです。

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 レトロゲームの定番、雷電シリーズはもちろん、ダライアスやニンジャウォリアーズのオリジナル筺体、筆者が高校時代に大いに100円玉をつぎ込んだレイフォースもありました。

 懐かしさのあまり、Suicaをかざし(今のゲームセンターは電子マネーでプレイできるようになっていることにやや驚きました)、レイフォースを一通りプレイすると、少年の日に感じたワクワク感を手の中に思い出し、なんともいえない暖かな気分になります。

 果たして、バブルボブルはどこに、と場内に目を向けると、入り口の一番目立つ所にありました。
 「ニコ生中継中」と書かれたサブモニターにはコメントが何件かついています。

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 まさにゲーム実況というわけです。

 筆者がSuicaをかざしてプレイすると、フランス語でコメントされました。
 いつのまにか国外のユーザーがニコ生を使っていると知りおどろいたのもつかの間、筆者はバブルボブルが得意な方ではないので、16面くらいまで進んでゲームオーバーに。

 せっかくだから他のフロアも見て回ろう、ということで4Fへ上がると、そこはいわゆる格闘ゲーム専門のフロアで、平日の早い時間帯だというのにかなりの人が遊んでいました。

 客層としては年齢層が高めの人たちが多い印象で、30代から40代が中心のようです。
 ゲームセンターといえば大学生のたまり場だった時代に比べると隔世の感ですが、だからこそレトロゲームで1フロア埋めても採算がとれるのでしょう。

 5Fへ上がるといよいよ最新ゲームのフロアです。
 こちらの一番人気はなんといっても艦隊これくしょんのアーケード版です。

 筆者らが訪れたのは平日の夕方、17:30頃とまだ早い時間帯でしたが、4台程度の筺体が全て埋まり、さらに行列が5,6人に達していて、あらためてその人気の白熱ぶりに驚きます。

 あとは既にややレトロの域にある「機動戦士ガンダム 戦場の絆」の筺体が設置されていて、こちらは比較的空いていたので仲間内で少し対戦しました。

 かつてゲームセンターといえば、新技術の宝庫でした。
 ゲーム機は、特に大型筺体のものは一台が数百万円することもざらで、ゲームメーカーは数百万円でゲームセンターにゲーム機を販売し、ゲームセンターはゲーム機を設置して100円ずつ儲ける、というビジネスモデルです。

 専用筺体を作りこむこともできるので、かつてセガが「体感ゲーム」という一大ジャンルを擁立して巨大な装置を使って筺体を傾け、実際の体感覚を作り出すものが大人気でした。

 今でもヨーロッパのゲームセンターなどにふらりと立ち寄ると、往時の体感ゲーム機、たとえばセガラリーやMANX TTといったものが現役で動いています。国内でも探せばあるかもしれません。

 そういう大仕掛なものに比べると、最近のゲームセンターのゲームは、ICカードを発行して継続的に遊びに来る、ロングスパンのゲームが主流になってきました。

 体感ゲームは、プレイヤーがハマれば儲かりますが、継続的な収益を生みにくいという問題があります。また、むかしと違って家庭でも十分美しいグラフィックスのゲームが楽しめるようになったので、ゲームセンターからゲーマーが遠のいたという問題もあり、継続して集客が見込める方式のゲームがフロア(ゲームセンター)側の都合で好まれるようになったという背景はありそうです。

 
■バーチャルリアリティの出現でこれからのゲームセンターは復活なるか!?

 これからのゲームセンターにチャンスがあるとすれば、バーチャルリアリティの活用でしょう。
 バーチャルリアリティにも、ハコスコやGoogleカードボードなど、スマートフォンをただボール紙の筺体に入れるだけという簡単なものから、Oculus RiftやPlayStation VRのようにヘッドトラッキング(頭の向きや位置を追跡する装置)を含む本格的なもの、そして最終的にはhtc Viveのように実際に身体を動かして、狭い範囲を歩きまわったりできる完全没入型のものと様々な種類があります。

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 バンダイナムコゲームスがお台場のダイバシティにオープンしたバーチャルリアリティ専門ゲームセンター「VR ZONE」は、4月から10月末までの期間限定のゲームセンターですが、連日予約で埋まっています。

 平日の昼間は「バーチャルリアリティとはなんだ?」というビジネスマンから、週末はゲーム好きの学生やサラリーマンが、とにかく連日ひっきりなしに訪れるそうで、これはいまどのきゲームセンターとしては空前と言ってもいい盛り上がりでしょう。

 VR ZONEで最も多く使われているのはhtc Viveで、やはりこれはある程度のスペースが必要なゲームほど家庭でプレイしたり環境を整えたりするのが難しいため、ゲームセンター向きという判断があってのことでしょう。

 VR ZONEを体験した人たちに話を聞くと、老若男女関係なしに一様にただただ「すごかった」という感想を漏らします。

 実際にはたった12万円のHMDとパソコンで動いている、ゲームセンターの機材としては比較的お金のかかっていないものでありながら、体験そのものはそこから想像できないほどに豊かである、というのが概ねの感想ようです。

 実際、VR空間に没入すると、いっとき、現実世界のことは完全に忘れてしまいます。

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 散々VR空間を体験して、それからヘッドアップディスプレイを脱いだとき、そこで感じる違和感が凄いのです。

 「あれ?さっきまで確かに自分が居たはずのキラキラした素敵な世界はどこに行ってしまったの?」という、なんとも言えない喪失感めいたものを感じます。

 あまりにも仮想空間での体験が自然なため、ヘッドマウントディスプレイを脱ぐと、とつぜん別の世界にワープしたかのような錯覚に陥るのです。

 htc Viveとは反対に、この性質を活かして狭い空間を広く感じさせるというVRの活用例もあります。

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 カラオケチェーンの「まねきねこ」グループが実験的に開始したVRを使ったカラオケを新宿歌舞伎町1号店で実際に体験することができます。

 こちらも平日だというのに、背広姿のビジネスマンが「VRカラオケとはなんぞや」という感じで列を作っていました。

 仕組みは簡単で、バンドと一緒にステージの上で歌えるという体験を提供するもの。

 歌詞が視界に常に入るように付いてくるので、どの方向を見ても歌詞が見え、左を向けばベース、右を向けばドラム、後ろを向くとボーカルが、一緒に演奏して歌ってくれるというサービスです。

 この臨場感はなかなかのもので、ヘッドマウントディスプレイをかぶるとやはりそこがヒトカラ用の狭いスペースだということを忘れて没入してしまいます。

 惜しいのは、まだ実験展開のため楽曲が1曲しか提供されていないことと、VR体験するためにクレジットカード情報を登録しなければならず手間が掛かることですが、ここが解消されていけば相当なキラーコンテンツになるのではないかという可能性を強く感じます。

 広めのカラオケなら複数台のhtc Viveを設置して、複数人で空間を共有しながら歌うというもっとカラオケ的な方法も考えられますし、見ている人たちも、たとえばMixed Realityを使ってその場で何が起きているのか外部からでもわかるようになれば、さらに応用範囲は広がります。

 Mixed Realityは、「混交現実感」と訳される手法のひとつで、現実空間とVR空間を混交する方法です。
 VRの欠点の一つは、外から見ていると体験している人がなにをしているのかよくわからないことにあるのですが、Mixed Realityを使うと何が起きているのか容易に理解することができます。

 複数のhtc Viveと、グリーンバックがあればMixed Realityも容易に実現することができます。

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 必要なのはグリーンバックだけです。カラオケ店の場合、内装の色を変えるだけでいいかもしれません。

 お台場のVR ZONEが盛況とはいっても、期間限定のイベントです。また、ゲームの内容もまだまだ原始的なものだけです。物珍しさで一巡したら、今度は本格的なゲームをどうやって実現するかということになるでしょう。

 現状のヘッドマウントディスプレイは、激しく動くと汗をかく上に、肌に密着するという問題があり、これは不特定多数のプレイヤーがかわるがわる使用するゲームセンターのような状況では問題になるでしょう。普及のためにはマイHMDを持ち込むのは非現実的としても、なんらかの方法でここを清潔に保つ手法の登場が必須になると思います。

 とはいえバーチャルリアリティの民生化はまだ始まったばかりで、これからどんなコンテンツが飛び出していくのか、期待に胸が膨らみます。

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清水 亮(しみず・りょう)

新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。