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日本でも相変わらずIoTが話題ですが、先日ロンドンで開催されたSMART IoTで気になった会社を何社かご紹介してきましたが、面白いなと感じたのは、IT業界以外からの転職組が起業しているケースも少なくなかったことです。IT出身ではないからこそ、他業界のニーズに気が付きやすく、それをIoTやVRなどで問題を解決するアイディアがあるわけです。

スタートアップ企業が集まったコーナーで偶然出会ったMOHARAという企業の創業者であるRichard Samsさんの経歴はその良い例だと感じました。

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元々先生だったRichardさん。笑顔が素敵です

MOHARAはVRやeLearningなどを展開するスタートアップですが、そのビジネスアイディアには、Richardさんの経歴が生かされています。元々バンコクのイギリス系インターナショナルスクールの先生で、IT教育や学校のITインフラの整備を担当していましたが、教育現場や企業でのVRやWebを活用した教育の需要に気が付き、教職を去って起業します。

教職から起業というのも日本的に考えると十分ユニークなのですが、面白いのは、バンコクでの経験やネットワークを企業にフルに駆使していることです。滞在中に現地の開発者とネットワークを作り開発はタイで行っています。インターナショナルスクールという環境にいたため、アジアを始めとする海外での需要を知ることもできました。

日本だと多様な経験をしている人は「一貫性がない」とか「腰が落ち着かない」といわれてしまいますが、イギリスやアメリカ、カナダだと、Richardさんの様な「体験したことを次の職場や企業に生かす」ことは当たり前どころか、様々な経験があることはとても良いことだと評価されます。

特に起業の場合は幅広いネットワークや多様な業界の需要の理解は強みになりますから、より歓迎されます。

私や日本人の友人達の様に国内外で様々な職場を渡り歩いていると、伝統的な日本企業の人に履歴書を見せると「胡散臭い人」「信用できない」「忠誠心がない」といった捉え方をされ、あまり良い印象を持ってもらえないことが多いのですが、アメリカ人やイギリス人と話すと「あなた凄く面白いわ」「色々な組織での経験は財産だよ」といわれますから、随分と違いますね。

MOHARAはVRで教育訓練を行うAURA360を開発、提供していますが、これは学校、製造業、軍事などで、現実に近い状況を作り出し、研修受講者の理解を深める製品です。学習進捗やコンテンツの追加などはITに不慣れなユーザーでも扱えるようになっており、教育現場の実態をよくわかっているRichardさんの経験が生かされています。

他業界出身だからこそ、教育提供者の仕事が多忙なこと、システム開発や設定には時間を取れないこと等を理解しているからこそ、ユーザーフレンドリーな製品が出来上がったのでしょう。

日本に滞在していて気がつくのは、日本のシステムに限らず家電のユーザービリティが恐ろしく悪いことです。多すぎるボタン、華奢で個人で修理できない部品、冗長すぎる説明書等。

その理由は設計やユーザビリティのテスト不足、商品コンセプトがおかしいことにありますが、雇用流動性が低く、他業界からの転職者や、人のシャッフルが少ないことも大いに関係あるように思います。同じ組織にいるとどうしても考えが凝り固まりますが、他業界、他社からの人は思いもよらぬ指摘をしてくれることがあります。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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