original image: © keatikun - Fotolia.com
AI時代に大学に進学する意味はあるか?
Go to Universities in AI era
2018.09.27
Updated by Mayumi Tanimoto on September 27, 2018, 10:01 am JST
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Go to Universities in AI era
2018.09.27
Updated by Mayumi Tanimoto on September 27, 2018, 10:01 am JST
ここ数日ネットでは、大学に行く代わりにオンラインサロンに参加するべきだ、という議論が盛り上がっています。
・落合陽一氏やブロガーの間で大学に行かずにオンラインサロンを受けることを勧める意見が続出→大学に行きながら受けることもできるのでは?と賛否両論
テック業界においても、大学教育は必要なのかどうか、ということが議論されることがありますが、AI時代に高額な大学教育は必要なのでしょうか?
私としては、大学教育にはまだまだ価値があると考えます。
はじめに、先進国でも新興国でも、テック業界ではまだまだ大学教育の有無が、インターンシップや就活でのスクリーニングになっています。
最近、GoogleやE&Yが求人で学歴不問にすると発表し話題になりましたが、しかし実際は求人のほとんどでは学部卒やそれ以上の学位が応募条件になっています。
2点目に大学在学中に得られるネットワークです。
まれに大学中退や高卒でも実力を買われて雇われる人もいますが、大多数ではありません。
起業する場合は学歴は関係ありませんが、しかし資金調達やパートナーシップ作り、採用ににおいて大学で作ったネットワークを活用することが少なくありません。
イギリスや欧州北部だけではなくアメリカも、テック系スタートアップの少なからずは大学発だったりしますし、学生時代に友達と一緒に経営することも少なくありません。Facebookも元々は大学の女子学生の格付けサイトでした。
3点目に、先進国の多くではテック系の最高レベルの教育機関は大学です。みっちりと訓練を受けたいのであれば大学はコスパの高い教育機関です。
国や大学自体の豊富な財源が設備や教員の人件費に注ぎ込まれ、ありとあらゆる授業を受けることが可能です。
また、数学や物理といった基礎の基礎をみっちり学ぶことができるのも重要です。民間のトレーニングセンターや自習でも最先端のテクノロジーを学ぶことは可能ですが、基礎の基礎になる部分は流行りものではないのであまり提供されていません。
4点目。大学に入れば若い人であっても大規模で高価な実験設備に触れることが可能です。民間企業や軍ではないので、学生であれば、短期間で成果を求められるわけではありません(教員やリサーチフェローの場合は異なりますが)
5点目。理論的な思考のスキルを身につけられられます。
自習やオンラインコース、トレーニングセンターでもスキルは身につきますが、大学の場合はより長い時間をかけて、議論や対話、論文作成をすることでより洗練された訓練が可能です。教員による対面でもフィードバックもあります。これは自習やオンラインコースでは得られないものです。直接質問することも可能です。
6点目。様々な設備やイベント
案外見過れされがちなのが、大学の設備や場としての価値です。
大学図書館やデータベース、スタジアムといったものは、民間の設備には存在しないこともありますし、図書館の規模や深さは公立図書館とは比較にならない場合があります。
アメリカの場合はスポーツ施設なども充実しており、一つの街状態です。
また、学内での無償の公開講義、文化的なイベント、祭り、演劇、スポーツと言った大学ならではの行事や文化活動も大変価値の高いもので、そういった様々な活動に触れることは、見解を広げるのに最適です。
大学にはこの様な利点がありますが、これらはオンラインサロンでは得られないのです。
またオンラインサロンを主催している方々は、一流大学を中退していたり、卒業しており、その様な経歴をもとに大企業勤務経験があったり、自らの経歴に大学名が必ず書かれている点は重要視するべきでしょう。
就職する場合だけではなく、自営業になった場合も、学歴が強烈な能力の証明とマーケティングのツールになるわけです。大学卒業歴は履歴書にかけますが、オンラインサロン参加記録は無理です。
アメリカやカナダ、イギリスでは大学の学費が高騰しており、中流の家庭であっても、その費用を負担するのがかなり大変になっています。これは大学への入学希望者がどんどん増えており、需要が高いからです。
大学教育不要論が議論される一方で、必要とされるスキルや知識はより高度化し、英語圏の著名大学には大学進学を希望する人が世界中から押し寄せるのです。
またオクスフォードやケンブリッジ、ロンドン、ベルリン、サンフランシスコ、ニューヨーク、トロント等、良い大学がある街にテック系の企業や周辺コミュニティが集まっているのも注目すべきでしょう。
大学街には似たような知的レベルや興味のある人が集まるのでネットワークを作りやすく、若くて自由闊達な文化があるので起業に向いているのです。
治安もよく文化も豊かなので優秀な人々が集まってきます。
そういった場に自分を置くことも大学に通う重要性の一つです。
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登録はこちらNTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。