第1回 通信の自動化とは何か?
AI for Network Operations
2018.10.29
Updated by Takashi Kokubo on October 29, 2018, 22:45 pm JST
AI for Network Operations
2018.10.29
Updated by Takashi Kokubo on October 29, 2018, 22:45 pm JST
皆さん、はじめまして。Tupl(トゥプル)の小久保と申します。
WirelessWire Newsには、数年前に対談などで参加させていただいて以来になります。今月から「通信業界における自動化・AI化」を主なテーマとして、不定期でコラムを執筆させていただくことになりました。どうぞよろしくお願いします。
簡単な自己紹介をさせていただきます。米国で2014年に起業されたスタートアップTuplにて、昨年、日本事業の立ち上げを行い、以来日本のカントリーマネージャーを務めています。Tuplについては以前、サンドバイン社(当時はプロセラ・ネットワークス社)様のご厚意で、本サイトでも会社紹介をさせていただきました。
■加入者を理解し、オペレーター業務のAIによる自動化を推進する、トゥプル社とプロセラの協業
現在の立場に就く前は、グローバル通信機器ベンダー、その前は日本の大手通信事業者と、社会人になって以来、変わらず通信業界で働いています。Tuplにおいてもメインのお客様は通信事業者(テレコムオペレーター)であり、通信事業における運用業務の自動化を実現するソリューションを提供しています。
AIや自動化はまだまだ新しい分野で、日々状況が変化しています。そのため通信業界での自動化やAI化について、「適用分野」「ユースケース」「ベンダー」「ソリューション」として何がメインストリームとなるのかも、まだまだ流動的です。このあたりを綺麗に整理できると素晴らしいのですが、本執筆では整理にはあまりこだわらず、弊社のソリューションと絡めた最前線での自動化の動向や目についた話題・ニュース、それらに対する考察を共有できればと思っています。なお、私のバックグラウンドやお客様の関係から、通信業界の中でもモバイル通信寄りになってしまう点はご容赦ください。
さて、自己紹介も終わったところで、この第1回目では、「なぜ通信事業の中で自動化が必要なのか?」という目的について簡単に挙げてみたいと思います。通信業界だけでなく、他の業界であっても「運用」と呼ばれる業務に関しては、基本的には同様ではないでしょうか。
なぜ自動化が必要か、自動化の目的は以下の3つに分けられると考えています。
・効率化
・品質の平準化・向上
・高度化
実際の事例については、今後触れていくことになるので、今回はそれぞれの言葉を簡単に説明します。
まず、「効率化」は一番意識される項目です。運用担当者が実施している業務(マニュアル作業)を自動化し、必要とされる人的リソースを減らし、かかっていた運用コスト(OPEX)を減らすことです。厳密には、同じリソースで、より多くの価値を提供することも「効率化」ですが、通信業界において現時点で着目されるのは、やはりリソース削減の方となっています。
「品質の平準化・向上」は、業務の担当者による品質のバラつきがあった場合に、それを無くして全体の品質水準を向上させる、という意味になります。例えば「担当者の中で〇〇さんだけが原因を発見できる」という場合に、〇〇さんのノウハウをシステムに取り込むことで、その運用業務が常に○○さんレベルの優れた解析力、高い品質でアウトプットできるようになります。
3点目の「高度化」とは、人間では実現できない複雑な作業を代わりに実現し、新たな価値を提供することを意味します。例えば、数十種類におよぶ多量なデータソースを同時に処理・分析することで、これまで人間では気が付けなかった新しい問題パターンを発見するなどです。また、自動化は人間の代わりにコンピュータが処理することになるため、短時間で業務を処理し、結果を得ることができるようになります。そのような単純な「高速化」も、ここでは「高度化」の一部と捉えたいと思います。
なお、あえてここで「AI化の目的」ではなく「自動化の目的」と書いた理由は、正確にはAIは自動化の手段の一つと考えているからです。状況や自動化対象とする業務に応じて、必ずしもAIの技術を使う必要は無く、RPA(Robotics Process Automation)やルールベースで動作するシステムでも、効果的な自動化を実現することが可能です。
終わりに、前職では米国とフィンランドでそれぞれ1年半ほど勤務するという経験をさせてもらいました。本連載では海外生活者として見た、日本と海外における通信関連の違いについても触れることができればと考えています。
それでは、これからどうぞよろしくお願いします。
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登録はこちらTUPL ジャパン・カントリー・マネージャー。NTTドコモにてネットワーク装置開発や経営企画に従事後、2009年に外資通信機器ベンダーであるノキアシーメンスネットワークス(現ノキアソリューションズ&ネットワークス)へ転職。ノキアでは日本の事業戦略統括やフィンランド本社での事業分析責任者を歴任。2017年2月より現職。2001年京都大学情報学研究科社会情報学専攻修了。