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ロンドン マスク イメージ

日本企業に欠けている「安全管理義務」の視点

Japanese companies lacks health and safety point of view

2020.02.18

Updated by Mayumi Tanimoto on February 18, 2020, 10:40 am JST

日本と同じく、イギリスでもニュースのトップを賑わせているのが、新型コロナウイルスです。

イギリスでは、シンガポールのカンファレンスに出席したブライトン在住のイギリス人男性が、11人に対して感染源になってしまう「スーパースプレッッダ」になったことが大騒ぎになり、病院が閉鎖されたり学校やパブが消毒されるといった事態です。

イギリスの専門家は、感染が拡大した場合に国立病院が対応できない可能性が高く、学校など公共施設を閉鎖することを政府に対して提案しています。武漢からの帰国者は軍事基地に隔離されています。

中国から物理的に遠い割には、日本よりも深刻度が高いのですが、テック業界の中にはこの状況を受けて、従業員の在宅勤務を増やしているところが増えています。

日本でも、NTTをはじめとしてNECなどが以前からテレワーキング推進していますが、やはりイギリスや欧州大陸そして北部に比べますとその取り組みはだいたい15年から20年遅れているな、という印象です。

そもそもイギリスや北米で在宅勤務が盛んになった理由は、プロジェクトが多国籍化しておりメンバーが世界中に散らばっていること、オフィスのコストの上昇で従業員の席を用意するよりも自宅から仕事に参加してもらった方が固定費が安い、柔軟性を持たせた方が離職率が低くなる、という「ビジネス的な観点から見て非常に合理的なこと」なのです。

単に新しい働き方を進めるというようことが理由なのではありません。

特にここ20年ばかりは、業界では人材不足で離職率を低くすることが大きな課題ですから、柔軟な働き方を締結することはごく当たり前のことになっています。

さらにもう一つの重要な課題というのが職場の「安全管理義務」です。

イギリスや北米は大変な訴訟社会ですから、企業側や管理職が従業員の安全を確保せず無理な働き方を命令した場合には、訴訟を起こされて莫大な賠償金を払うことが少なくありません。

台風やストの場合も、従業員を早く帰宅させたり在宅勤務に切り替えさせるといった意思決定が大変迅速です。

そういった意思決定に大きな役割を果たしているのが「リスク管理部」です。日本に比べますとリスク管理部の役割が大きく、異動や移籍の決定に果たす権限も強いことが多いのです。

例えば、会社の前で環境保護の過激なデモがある場合、数時間前に通知があったとしても従業員を早期帰宅させるといった意思決定を迅速に行います。

今回のような感染症の場合は、企業側が迅速に従業員の健康を守る対策を講じないと明らかに訴訟の対象になってしまいますので、どの企業も大変に対応が早いわけです。

日本企業も多国籍化は進んでいるわけですが、この安全管理義務に関する視点というのはまだまだ弱いところが多いのではないでしょうか。

 

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。