画像はイメージです original image: New Africa / stock.adobe.com
競馬とウイスキーとくれば、、、。 ウイスキーと酒場の寓話(27)
2020.06.01
Updated by Toshimasa TANABE on June 1, 2020, 17:27 pm JST
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2020.06.01
Updated by Toshimasa TANABE on June 1, 2020, 17:27 pm JST
今年も日本ダービー(正式名称は東京優駿)が終わった。新型コロナウイルスのため無観客でのダービーとなったが、1番人気のコントレイル(飛行機雲の意)が、父のディープインパクトと同じく「無敗のダービー馬」となった。皐月賞とダービーで、まずは牡馬クラシック三冠のうち二冠獲得である(残る一冠は秋の菊花賞)。2着は2番人気のサリオス(ローマ神話から命名)、3着に10番人気のヴェルトライゼンデ(ドイツ語で世界旅行者)という結果であった。
勝ったコントレイル、好スタートからさっと好位に付けて(この時点で勝ったと思った)インコースをロスなく進み、直線では前が壁になることもなく、多少外に出して追い出しを遅らせ、満を持してのスパートで後続を突き放した。2着との着差は3馬身。完勝といえる内容だった。福永祐一騎手の騎乗も、無敗馬で1番人気を背負ってのダービーというプレッシャーはあっただろうが、完璧だった。
馬券は、馬単(1着2着を着順通りに)と三連単(1着2着3着を着順通りに)を的中させることができた。馬単は1番人気で350円(3.5倍)だったが、三連単は3着が10番人気ということで5140円(51.4倍)の好配当だった。実績からも、前走の皐月賞の走りを見ても、1着2着の馬が他馬よりかなり実力上位ということと、木曜に公開される調教VTR(JRAのサイトで見られる)をチェックして、3着馬の調子が良さそうだと感じていた。馬券は、1着2着を固定(軸馬という)して6頭に流していた。ダービーの馬券的中は久しぶりだ。
ちなみに今年の春競馬は、いつもの調子で馬連(着順に関係なく1着2着の2頭)で買ったら1着3着、三連複(着順に関係なく1着2着3着の3頭)だと1着2着4着などということも多いのではあるが、ここまで、青葉賞、ヴィクトリアマイル、オークス、ダービーが的中した。
競馬は年中開催されているのだが、ダービーだけはどうしても特別である。ダービーは、約8000頭の同世代のサラブレッドの頂点を決める、3歳馬だけの1回きりのレースだからだ。その「刹那の美しさ」ゆえ、特別なのである。競馬のある国であれば、3歳馬の頂点を決めるレースとしてダービーがある。チャーチルをして「首相になるよりダービー馬のオーナーになる方が難しい」と言わしめている。
「あと何回見られるのか、、、」と思わされるのもダービーである。モノごとは、突き詰めるとどれも一期一会な側面はあるのだが、競馬においては、ダービーほどそれを強く感じさせるレースはない。ダービーと同じ東京競馬場の芝2400メートルなら、世界の強豪馬が集まる「ジャパンカップ」(1989年のホーリックスとオグリキャップが忘れられない)など、ドラマチックなビッグレースは他にもあるが、ダービーでの最後の直線を駆け上ってくる各馬の姿は、他のレースとは何か違って見えてしまうのである。
競馬を真面目にやっていると、1週間があっという間に過ぎ去って行く。日曜のレースの余韻を味わっているうちに、水曜、木曜には次の日曜のレースの調教が行われ、その様子がスポーツ新聞などで伝えられる。過去のデータもチェックしなければならない。金曜には枠順が発表され、一気に仕上げの予想モードに突入する。
若い頃は、金曜の夜は焼き鳥屋のカウンターで、競馬新聞を見ながら飲んでいることが多かった。最近は全部ネットなので、競馬新聞は競馬場に行くときくらいしか買わなくなった。もっとも、薄暗いカウンターでは、加齢のため競馬新聞の小さい字は辛い、ということもある。
高校生までの数学が「案外、役に立つ」と実感するのも競馬である。順列・組み合わせの考え方で、買い目によって何通りになるかがすぐに分かるのだ。4頭で馬連ボックス(全通り)だと「3+2+1 = 6」である。5頭になるとさらに4通り増えて10通りとなる。頭数マイナス1から1までの数を順次足すからだ。馬単なら裏表があるので2倍になる。
三連複4頭ボックスは、3頭選ぶなどと考えてはいけない。1頭除くと考えると、4通りと即座に分かる。三連複5頭ボックスであれば、3頭選ぶのも2頭除くのも同じなので、馬連5頭ボックスと同じく10通りなのだ。何通りになるかを把握することは、当たったのに買い目が多かったために結果的に損をする、ということを防ぐためにも重要だ。レース前夜に、ウイスキーを飲みながら胡乱な頭で考えていても、間違えることはない。
競馬とウイスキーとくれば、やはり「ミント・ジュレップ」だろう。アメリカには、1875年から続いている伝統あるレース「ケンタッキー・ダービー」(毎年5月の第1土曜日であるが、今年は新型コロナウイルスの影響で9月5日の土曜日)があるが、このレースのオフィシャルカクテルがミント・ジュレップなのである。ミント・ジュレップを飲みながら競馬を観戦するのだ。
ミント・ジュレップは、バーボンやライウイスキーを使ったカクテルである。まず、ミントの葉と砂糖と少量の水を深めのグラスに入れ、バースプーンなどで底に押し当ててミントを潰す。そこにクラッシュアイスを満たしてウイスキーを注ぎ、軽くステアすれば完成だ。グラスの上の方は氷だけなので、細いストローを突き刺して飲む。
ケンタッキー・ダービーの日だけで、数万杯のミント・ジュレップが飲まれるともいわれている。普段でさえ、大きなグラスに氷を満たして、たっぷりとウイスキーを注いでいるようなお国柄だし、1人で何杯も飲むのだろうから、数万杯もさもありなん、である。実際、出張でアトランタに行ったときに、ハンバーガー屋のコールドカップのLサイズくらいのグラスにクラッシュアイスを満たして、そこにウイスキーをグラスの縁まで注がれた経験がある。ジャズクラブなどではそういうことはなく、常識的な量だったが。
グラスの外側に霜が付くくらいに冷えたミント・ジュレップは、ミントの香りが爽やかで、いくらでも飲めてしまう薫風な季節に相応しいカクテルだ。やはり、腕の良いバーテンダーに作ってもらうのが一番であるが、自分で作るなら、ペパーミント、スペアミントなどとミントの種類を変えてみたり、バーボンやライウイスキーの銘柄をいろいろ試して、好みの味を見つけるのが楽しいだろう。ウイスキーは、ジャックダニエルでも良いだろう。
ジャックダニエルでも、というのは、ケンタッキー州がバーボンの産地であって、ケンタッキー州で造られたウイスキーでなければ、バーボンを名乗ることはできないからだ。厳密にはジャックダニエルは、バーボンではなくテネシー・ウイスキーなのである。
インターネットで「ミント・ジュレップ」を検索すると、メーカーズマークやアーリータイムズの「瓶詰めされたミント・ジュレップ」を見付けることができる。度数はメーカーズマークが33度でアーリータイムズは30度、両者とも1リッターの瓶で、そこそこのお値段だ。いちいちミントを潰して作ってはいられないので、出来合いで、ということなのだろう。独り暮らしであれば、こればかり飲むわけにはいかないし、量も多いので持て余す感じもある。数人集まって、ミント・ジュレップ・パーティーなどをすると良いかもしれない。
そろそろ梅雨入りも見えてくるこの季節、ベランダなどで風に吹かれながら、明るいうちからゆっくりウイスキー(に限らないが)を飲むのは、1年の中でも最も貴重なひと時といえるのではなかろうか。週末なら競馬もある。馬券が的中したりすれば最高の休日となる。「競馬は買わなきゃ当たらない」ので、最高の休日にするために馬券を買うのである。馬連で1着3着など、掠るのもまた醍醐味だ。
競馬には「競馬が人生の比喩なのではない。人生が競馬の比喩なのだ」(寺山修司)という名言もある。いろいろな受け止め方があるだろうが、馬の世代交代が人のそれより早い、ということがその要因のひとつではないだろうか。2世代、3世代に渡るドラマをリアルタイムに体験できるのが、ギャンブルという枠を超えた、競馬の本当の楽しさでもあるのだ。
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登録はこちら北海道札幌市出身。システムエンジニア、IT分野の専門雑誌編集、Webメディア編集・運営、読者コミュニティの運営などを経験後、2006年にWebを主な事業ドメインとする「有限会社ハイブリッドメディア・ラボ」を設立。2014年、新規事業として富士山麓で「cafe TRAIL」を開店。2019年の閉店後も、師と仰ぐインド人シェフのアドバイスを受けながら、日本の食材を生かしたインドカレーを研究している。