さあ今日のお悩みは何かな?
GPT-3くんに聞いてみよう!
Q:あなたの悩みを聞かせてください
A:
私は最近、自分の人生について悩んでいます。私は23歳ですが、まだ何にもしていないので、将来のことが不安になっています。未来を考えると、不安になります。
ほう。23歳。何もしてないというのはどういうことだろうか。
就職していないのか学校に行っていないのか。もしかしていわゆるNEETってやつかな。
まあでも大丈夫。とりあえずUberEats配達員をやってみよう。
毎日、お腹を空かせたお客さんにご飯を届ける仕事だ。
最近、UberEats配達員の人たちのYouTubeをよく見る。
なかなか楽しそうである。ある種の位置ゲーとしてうまく成立しているように見える。
日々の生活の糧を得ることに慣れていけば、自ずとやりたいことも見つけられるようになるんじゃないかな。
さあ次のお便りは?
Q:あなたの悩みを聞かせてください
A:私は最近、自分の人生の方向性に迷っています。私はこれまで大学を卒業し、就職してきましたが、今の仕事はあまり満足していません。私はもっとやりたいことがあると思っています。私にとっては迷いの途中です。
ほーお。なるほどね。人生の方向性にね。
そんなに悩むものなのかな。
就職したということは、それなりに何かやりたいことがあったんじゃないのかな。
僕は就職活動をした経験がないからよくわからないけど、もっとやりたいことがあるんだったらそれをやってみればいいんじゃないか。
とりあえずUberEats配達員をしてみるというのはどうでしょう?
毎日、いろんな人に感謝され、時にはチップまでもらえる素敵なお仕事だよ。
もっとやりたいことがあるって言っても、それが何なのかわかんないとおじさんもアドバイスの仕様がないな。
さあ次行ってみよう。
Q:あなたの悩みを聞かせてください
A:私はとても不安です。最近、私は仕事で大きなプレッシャーを感じています。私は一人前のエンジニアとして名誉をかけて仕事をしているので、ミスをしたくないと思っています。しかし、過去にミスをしたことがあるので、不安になってしまいます。どうすれば、自分自身を良く思うことができるでしょうか?
なるほどね。エンジニアなんですね。
そして名誉をかけて働くエンジニア。立派じゃないですか。なんのエンジニアかわからないけれども。
そして過去にミスをした、と。
ミスは誰でもするし、ミスをしたことがない人はいないと思うわけですよ。
でもこの人は、自己肯定感が欠如しているみたいだね。
UberEats配達員をやりましょう。
Uberドライバーは常に人々に肯定される素敵な仕事です。
土日のプライムタイムだけで構いません。
ついでに、運動にもなるし身体も痩せて健康になります。
よーし次は恋のお悩みを聞いてみよう!
Q:あなたの恋の悩みを聞かせてください
A:私は最近、恋愛に苦労しています。私は長い間独身でしたが、今年になって初めて恋人を作りました。しかし、私たちはすぐに仲違いをしてしまい、すっかり別れてしまいました。私は今でも彼を忘れられずにいます。彼は私が持っている唯一の恋人です。どうしたらいいでしょうか。。。
せっかくできた恋人と、あっさり別れてしまった。
あるねー、あるある。
ただ、もうそれは忘れるしかないね。
UberEats配達員をやりましょう。
はい次!
Q:あなたの恋の悩みを聞かせてください
A:私は最近恋に苦しんでいます。私は恋におちてしまったと感じているのですが、相手はどうやら私には興味がないみたいです。この悩みを解決するにはどうしたらいいでしょうか。
興味ない。
キョーミないってのは辛いね。
相手に興味を持ってもらうところから始めたらどうか。
たとえば、UberEats配達員をやってみては?
「俺、Uber始めたんだ」
「え、どういうこと?出前取ってるってこと?」
「いいや、UberEatsで配達してるんだ。お腹ペコペコのお客様のもとに、ホカホカの焼肉ライクのステーキ定食を運んでるんだよ。もちろん君のために」
「素敵!」
そんな展開があるかも!(ない)
さ、お次の恋のお悩みは?
Q:あなたの恋の悩みを聞かせてください
A:私の恋はとても複雑です。まず、彼と私は同じ学校に通っていますが、私は彼を見たことがありません。私は彼の名前も知りません。しかし、私は彼に一目惚れしてしまっています。
私は彼にどうやってアプローチしていいのか分かりません。もし彼と話してみたいと思っても、彼の名前を知らないので話すことができません。彼に会う機会があれば、どうしても話したいと思ってしまいます。
この恋の悩みを解決するにはどうしたらいいでしょうか。
はーあなるほど、見たことない男に一目惚れ。
あるねーあるある・・・・ってねえわ。
やはり人工知能に恋バナは無理だったか・・・
さて、ここまでなかなかに不毛なやり取りを掲載してきましたが、カラクリを説明すると、「誰かのお悩みに答えたい」という勝手な欲求を持った筆者が、「誰でもいいから俺のために悩みを相談してくれないかな」と世界最先端人工知能の一つであるGPT-3に「あなたのお悩みを聞かせてください」と入力した結果に対して、勝手に悩み相談に乗っていたという構図です。
GPT-3はインターネットにあるほぼ全ての文章を学習しているので、日本語で語りかけても日本語で返してくれるし、時には英語とか他の国の言葉で返してくることもあります。
自然言語を操る人工知能の使い方は、このように「原稿のネタがないときにネタを提供してもらう」みたいな使い方もできるわけです。
「人工知能を使う」と言うと、皆さんとかく難しく考えがちです。
でも本当は、これくらい気楽に使っていいのではないかと思うわけです。
最近の筆者は、何か新しいことを考えようと思った時に、人工知能に相談してみようか、と考えることがよくあります。
たとえば、新刊の企画などを相談したりしています。
Q:清水亮は次にどんな本を書くべきですか?
A:
清水亮は次に「私たちはどう生きるべきか」という題材についての書籍を書くべきです。
それは「君たちはどう生きるか」みたいな本を書けと言っているのか。
宮崎駿じゃないですか。
Q:清水亮が次に書く本のタイトルは?
A:清水亮の最新作は『君の名は。』です。
まさかの大ヒットアニメ。
Q:清水亮が次に書く本のタイトルは?
A:清水亮の次に書く本のタイトルは『地球最後の孤独』です。
何それ。
ちょっとかっこいい。
Q:清水亮が次に書く本のタイトルは?
A:"The World Without Us"
我々がいない世界。
すごい超大作ハードSFっぽい匂いがする。
どうしてそんな題材を書かせようとするのか。
Q:清水亮が次に書く本のタイトルは?
A:次に書く本のタイトルは『幸せな朝食』です。
いいね。何だか。
ほっこりする。
・・・とまあこのように、人工知能に新刊の企画を相談したりもできるわけです。
そしてそういうことに使えば使うほど、世界最大・最強・最先端の人工知能といえど「まあまあ役に立たない」と言うこともわかってくるわけです。
それは人工知能の推論が乱数に基づいているからでもあります。
ガラガラポンで、何が出てくるか予測できないのです。
今世間一般に言われている人工知能のなかでも、自然言語系の人工知能は扱いがそれほど簡単ではありません。
人工知能に「どう促すか」と言う、別次元のプログラミングパラダイムが必要になってくるのです。
今の自然言語系人工知能は、ネットにある文章(自然言語)をひたすら学習するため、「この文章に続くべき言葉は何か」と言うことをランダムかつ連鎖的に提案してきます。
逆にいえば、そこにあまり独創的な解釈や、言葉の裏に潜む寓意などは全くないということなのです。
ありきたりな、どこの誰でも言いそうなことを言うだけです。
もちろんそういう「ありきたりな言葉」が必要な場面もあります。
そういう場面では大いに役立つでしょうし、先ほどの新刊の企画のように、AIが突拍子もないことを言ってきても、それをきっかけとして自分の想像力を膨らませることができる人にとっては大いに役立つものと言えるでしょう。
個人的には、この路線の人工知能はどれだけ発達し進化したとしても、「おもしろ雑言生成器」以上のものにならないのではないかと考えています。
もちろん、これが役立つ場面がないとは言いません。
けれども、これをちゃんと役立たせるためには、人間の方にもっと強いクリエイティビティや想像力が必要になることは間違いありません。
最近いくつか、人工知能を使ったエンターテインメントの可能性について考え始めています。
従来のゲームとは異なる、人工知能だからこそ、できるようなウィットに富んだ受け答えや、遊びの可能性についてです。
VRゲームが登場し始めた時、女子高生の家庭教師になるゲームという、およそ正常な大人が遊ぶとは思えないものが登場しました。
このゲームでは、生徒に近づいたりしても生徒はまるで人形のように反応せず、プレイヤーがしゃがんでローアングルで覗き込もうとすると「プレイエリア外です」と表示されて画面が真っ黒になります。
このゲームが非常に不自然に感じたのは、これには全くリアリティがないことです。
普通に考えれば、男性教師が不必要に近づいてくれば、その時点でお母さんを呼ばれてゲームオーバーになるべきですし、授業中に不自然にしゃがんだら、やはりお母さんを呼ばれて警察に逮捕されるなどの演出につながっていくべきでしょう。それがリアリティというものです。
そうすれば、ゲームプレイに必然的に緊張感が生まれるはずですし、生徒の成績を上げるため、本気で勉強を教えようという気持ちにもなっていくはずです。そうすれば、本来はリアルではない世界観の中に一定のリアリティが生まれ、そこで発生する緊張感は相手を生身の人間と錯覚するところまでいくのではないか、それこそがVRの勝利ではないか。と思ったのです。
VR空間といえど、近づけば逃げる。これが当たり前の距離感です。
面白いのは、より見た目のリアリティが少ないVRchatで生身の人間が相手だと、そんな失礼なことをする人はいなくなるということです。
VRchatでは、どんな体勢を取ろうが「プレイエリア外です」なんて無粋なことは言われません。
ただ、「気持ち悪い人」と思われるだけです。
でもそっちの方が遥かに受けるダメージは大きいわけです。
ゲームに限らず、キャラクターというものは、常に、「こういう人が実在したらどうだろうか」という問いを突きつけられます。
もしくは「こういう人が実在していて欲しい」という強烈な魅力が求められます。
たとえば、古畑任三郎。
あんな刑事はいないでしょうが、「いたらいいな。いて欲しい」と強烈に思わされます。
半沢直樹のような銀行員も「いたらいいな」と思わせる強烈な魅力を放っています。
ゲームのキャラクターでも同じで、やはり「こんな友達がいて欲しい。ずっと一緒にいたい」と思わせるようなキャラクターを作ることが一つの目標なわけです。
物語は終わります。
半沢直樹も古畑任三郎も、いつかは終わりが来るのです。
VRの世界では、AIの入ったキャラクターと、生身の人間の入ったキャラクターを見分けるのが難しくなります。
現場のAIの明らかな欠点は、「最近どう?」という質問に対し、それほどバラエティのある受け答えができないことでしょう。
試しにGPT-3に聞いてみます。
Q:最近どう?
A:最近は何かと忙しくて、ゆっくり休む時間がありません。
Q:最近どう?
A:最近はよく眠れないです。
Q:最近どう?
A:最近は元気です。
Q:最近どう?
A:最近は忙しいです。
まあなんていうか、とてもつまらない解答ですよね。
AIに限らず、話をして面白い人というのは、もっと話を膨らませることができる人のことです。
たとえばこんな感じです。
「最近どう?」
「最近?あー最近ねー、カレー作るのにハマってるのよ。ルウを使わずスパイスを調合してね・・・」
「へー。それって美味いんですか?」
「美味いかどうかというよりも、スパイスの調合するとこんなふうに味が変わるんだあっていう発見が面白いかな。カルダモンとターメリックの比率とか考えながら混ぜて行ったり・・・」
「へえ、美味いのができたら食わせてくださいよ」
「そうだね、そのうちね」
この話の重要なことは、「最近どう?」と聞かれた側が、たとえば趣味でも仕事でも何でもいいんだけど、その会話の「外」で何かをやっているということです。
人間が会話をする目的は、他人が人生で得た教訓や発見を共有してもらい自分の人生を修正するためです。
あらゆる会話の目的はそこに帰結していると言ってもいいでしょう。
「最近どう?」なんていう質問が、実際には「本当に最近何か起きてるのか」に興味がないことは明らかで、あくまでも相手から話(情報)を聞き出すきっかけにすぎないわけです。
ところが人工知能にそんな会話の機微はわからないので、「最近どう?」に対してありがちな返答を返すことしかできないわけです。
また、「最近どう?」と語りかける相手との関係性が、上司と部下ならば「最近(仕事)どう?」ということになるし、恋愛対象になるかもしれない相手なら「最近(恋人と)どう?」ということかもしれないし、商売の相手なら「最近(景気)どう?」ということになるでしょう。
人工知能を使って魅力的なキャラクターを造形するには、そうした会話の機微を盛り込まなければなりません。
むしろ口数が多いよりも少ない方がミステリアスで魅力的に映る可能性もあります。
そういえば、「シン・ウルトラマン」を見た人で気づいた人は多いかもしれませんが、あの映画の中では、地球人と外星人とで、話すスピードが変えてあります。
地球人はシン・ゴジラの登場人物のように猛烈な早口で話すのですが、外星人は噛んで含めるようにゆっくりと話します。
それが実はシン・ゴジラにはなかった物語の緩急になっていて、より外星人の不気味さ、人間離れした所作を強調しています。
この映画では斎藤工が主人公であるにも関わらずほとんど喋らないのが重要なポイントなわけです。
喋らないからこそ斎藤工が何を考えているのか想像を巡らせたり、斎藤工が少ない台詞の中で重要なことを言ったりする時に意味が出てくる。
もっといえば、ウルトラマンにすり替わった後と、映画の後半とで、話すスピードが変わっています。
つまり、神永とウルトラマンが同時に存在するようになって、人類側に引っ張られてきた(結果、少し早口になった)という演出になっているわけです。
メフィラスの怪演で評判の山本耕史も、作中ではザラブ星人に次いでゆっくりと喋ります。
それがまた、メフィラスの不気味さを強調しているわけです。
AIから悩みを引き出すのは外星人と話すようなものかもしれません。
AIは実際には悩んでおらず、悩んだふりをしようとしているだけですが、それすら失敗しています。
現代のAIは「悩み」というものが根本的に何であるか、理解していないからです。
AIが悩みを持つためには、もっと高度な脳機能を再現する必要があるでしょう。
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登録はこちら新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。