低学歴化が進む日本への次の一手、再生産と負のスパイラルからの脱却
The Next Move to Deteriorating Japanese Education
2022.09.09
Updated by Schrodinger on September 9, 2022, 15:57 pm JST
The Next Move to Deteriorating Japanese Education
2022.09.09
Updated by Schrodinger on September 9, 2022, 15:57 pm JST
岡本さんは鹿児島県生まれの38歳。郷土愛に溢れる九州男児です。慶應義塾大学理工学部および同大学院理工学研究科を修了後、26歳でケンブリッジ大学物理学部にて博士号を取得しました。在学中の研究成果がNature Materialsなどに掲載されました。
それにもかかわらず、その後、オックスフォード大学で近代日本社会の研究に取り組み、特に教育社会学を学びました。これが、その後の彼のキャリアにおける大きな変節点になったと思われます。
そして帰国後は、地域を起点に世界につながる教育と事業をつくる「NPO法人グローカルアカデミー」を地元鹿児島に設立します。理工系研究者としてのご自身のキャリアを活かすことよりも、海外で感じた「日本の教育の問題点」を解決することこそが自分のミッション、と考えられたようです。
若い理工系研究者(あるいはポスドク)の進路には実はいろいろな選択肢がある、ということを自ら実践して示すとともに、その若い研究者「候補」達に対する教育活動、そしてそのような人たちを管轄する組織自体を支援することを仕事にしている、ということですね。彼のキャリアを振り返ってみると、このような仕事ができそうな人が少ないこと自体が日本の教育制度の問題かもしれない、と思い至ります。
情熱や憤りだけで仕事しているわけではなく、客観的なデータ分析や事例を元に最適化された選択や手段を提供しているところが岡本さんの真骨頂です。2018年にはIVLP(International Visitor Leadership Program:米国国務省事業)のメンバーにも選出されています。
東洋経済オンラインの過去の岡本さんの寄稿では「日本は格差社会である前に階級社会、日本の大学入試改革は迷走する、日本に足りないのはローカルエリート、留学すれば何とかなるというのは100年時代遅れ、アメリカの女子大生が『幕末日本』を学ぶ理由、英国名門研究所の教え『17時には家に帰れ』、富豪ロシア人学生のアイデアが世界を変える、英国名門大生の知性は『共同生活』で磨かれる」といった具合に勢いのある提言が展開されています。
これらの提言から6年を経て、また新しい知見を獲得されているはず、と思い、その辺りをご披露いただくことにしました。いつもの「シュレディンガーの水曜日」とは少し異なる切り口ですが、若い理工系研究者のロールモデルを目の当たりにできる夜になるかと思います。(竹田)
岡本 尚也(おかもと・なおや)
一般社団法人Glocal Academy 代表理事
1984年鹿児島県生まれ。慶應義塾大学理工学部卒,同理工学研究科修了後,ケンブリッジ大学にて物理学博士号、オックスフォード大学にて日本学修士号を取得。2016年より現職。東京大学先端科学技術研究センター先端教育アウトリーチラボアドバイザー、2018年米国国務省事業International Visitor Leadership Program(IVLP)メンバー.
・日程:2022年9月14日(水曜)19:30から45分間が講義、その後参加自由の雑談になります。
・Zoomを利用したオンラインイベントです。申し込みいただいた方にURLをお送りします。
・参加費:無料
・お申し込み:こちらのPeatixのページからお申し込みください。
「シュレディンガーの水曜日」は、毎週水曜日19時半に開講するサイエンスカフェです。毎週、国内最高レベルの研究者に最先端の知見をご披露いただきます。下記の4人のレギュラーコメンテータが運営しています。
原正彦(メインコメンテータ、MC):東京工業大学・物質理工学院・応用化学系 教授
1980年東京工業大学・有機材料工学科卒業、1983年修士修了、1988年工学博士。1981年から82年まで英国・マンチェスター大学・物理学科に留学。1985年4月から理化学研究所の高分子化学研究室・研究員。分子素子、エキゾチックナノ材料、局所時空間機能、創発機能(後に揺律機能)などの研究チームを主管、さらに理研-HYU連携研究センター長(韓国ソウル)、連携研究部門長を歴任。現在は東京工業大学教授、地球生命研究所(ELSI)化学進化ラボユニット兼務、理研客員研究員、国連大学客員教授を務める。
今泉洋(レギュラーコメンテータ):武蔵野美術大学・名誉教授
武蔵野美術大学建築学科卒業後、建築の道を歩まず、雑誌や放送などのメディアビジネスに携わり、'80年代に米国でパーソナルコンピュータとネットワークの黎明期を体験。帰国後、出版社でネットワークサービスの運営などをてがけ、'99年に武蔵野美術大学デザイン情報学科創設とともに教授として着任。現在も新たな表現や創造的コラボレーションを可能にする学習の「場」実現に向け活動中。
増井俊之(レギュラーコメンテータ):慶應義塾大学環境情報学部教授
東京大学大学院を修了後、富士通、シャープ、ソニーコンピュータサイエンス研究所、産業技術総合研究所、米Appleにて研究職を歴任。2009年より現職。『POBox』や、簡単にスクリーンショットをアップできる『Gyazo』の開発者としても知られる、日本のユーザインターフェース研究の第一人者だがIT業界ではむしろ「気さくな発明おじさん」として有名。近著に『スマホに満足してますか?(ユーザインタフェースの心理学)(光文社新書)など。
竹田茂(司会進行およびMC):スタイル株式会社代表取締役/WirelessWireNews発行人
日経BP社でのインターネット事業開発の経験を経て、2004年にスタイル株式会社を設立。2010年にWirelessWireNewsを創刊。早稲田大学大学院国際情報通信研究科非常勤講師(1997〜2003年)、独立行政法人情報処理推進機構・AI社会実装推進委員(2017年)、編著に『ネットコミュニティビジネス入門』(日経BP社)、『モビリティと人の未来 自動運転は人を幸せにするか』(平凡社)、近著に『会社をつくれば自由になれる』(インプレス/ミシマ社)、など。
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちらオンラインイベント「シュレディンガーの水曜日」の運営事務局です。東京工業大学・物質理工学院・原正彦研究室の協力の下、WirelessWireNewsが主催するオンライン・サイエンスカフェです。常識を超えた不思議な現象に溢れた物質科学(material science)を中心に、日本の研究開発力の凄まじさと面白さを知っていただくのが目的です。