photo by 佐藤秀明
巨大な宇宙から持ち帰れるものは情報だけである:モダンタイムズ
2022.11.15
Updated by WirelessWire News編集部 on November 15, 2022, 06:36 am JST
photo by 佐藤秀明
2022.11.15
Updated by WirelessWire News編集部 on November 15, 2022, 06:36 am JST
※本稿は、モダンタイムズに掲載された、科学ジャーナリストの松浦晋也氏によるコラムの抜粋です。
加速する宇宙ビジネス
2022年の初頭、様々なメディアが年頭に出した記事を横断検索すると、意外な位に宇宙とビジネスを結びつける記事が多かった。曰く「宇宙旅行元年」「宇宙旅行目指す」「宇宙空港に期待」「民間人も続々宇宙へ」「衛星データ利用で新たな動き」などなど。
正月のメディアは景気づけに宇宙の話題を扱いたがるのは事実だ。が、単なる宇宙ネタではなくビジネス絡みというのは、2021年の宇宙を巡る活況に刺激された結果とみて間違いない。2021年、世界の衛星打ち上げロケット打ち上げ機数は145機と過去最高となった。この活況を引っ張るのは、宇宙への巨額投資で成長著しい中国(55機)と、世界各国のベンチャーだ。宇宙ベンチャーのトップに立つ米スペースXは「ファルコン9」ロケットを31機打ち上げた。小型衛星打ち上げ用ロケットで始めてサービスインした同じくベンチャーのロケットラボも7機を打ち上げた。
2021年に複数の有人商業飛行が実施されたことも、メディアの耳目を引くことになった。9月16にはスペースXが同社製「クルー・ドラゴン」有人宇宙船で、世界初の民間人のみ4名が搭乗した打ち上げ「インスピレーション4」を実施。4名は3日間の地球周回飛行の後、大西洋に着水して帰還した。12月8日には、実業家の前澤友作氏と前澤氏マネージャーの平野陽三氏が、ロシアの「ソユーズMS」宇宙船に搭乗して国際宇宙ステーション(ISS)に向い、12日間の滞在の後に12月20日に帰還した。これらは商業契約による宇宙飛行。インスピレーション4では米決済代行会社のシフト4社のジャレド・アイザックマンCEOが、スペースX社との契約で飛行を企画し、自らもクルー・ドラゴンに搭乗して宇宙を飛んだ。前澤氏の飛行はソユーズの座席を宇宙観光として販売するアメリカの宇宙旅行会社スペース・アドベンチャーズ社との契約に基づくもの。前澤氏はこの飛行で2人の搭乗とISS滞在のために100億円を支払ったという。
また、高度100kmほどの宇宙空間に到達し、数分間の無重力体験の後に地上に帰還する弾道飛行でも大きな進展があった。ジェフ・ベゾス・前AmazonCEOが率いる宇宙ベンチャー、ブルー・オリジンは7月20日に弾道飛行宇宙機「ニュー・シェパード」で初めての有人飛行を成功させ、さらに21年末までに2回の有人飛行を実施した。初回飛行にはジェフ・ベゾス本人も搭乗した。同じく弾道飛行を狙う英ヴァージングループのヴァージン・ギャラクティックも7月11日に、同社の弾道飛行宇宙機「スペースシップ2」に6人が搭乗し、初の乗客も乗せた弾道飛行に成功した。この飛行にはヴァージングループのリチャード・ブランソン総帥も搭乗した。
現実は死屍累々
人間は、人間に関するゴシップが大好きだ。「誰それが宇宙を飛んだ」という話が重なれば、その方向で耳目を集める記事を書きたくなるのは理解できる。
が、宇宙ビジネスはそう簡単なものではない。宇宙をビジネスの場とする取り組みは1981年の米スペースシャトルの就航から始まったが、そこから現在までの40年の道のりは、死屍累々といっても良い。これまでに、ビジネスとしての離陸に成功したのは、第一に通信衛星に放送衛星。そしてここにきて地球観測衛星がビジネスになりつつある。これらの進展によって、ロケットによる衛星打ち上げビジネスも軌道に乗った。今、ビジネスになっている、あるいはなりつつある分野に共通しているのは、「宇宙から持ってきているのは情報だ」ということである。
では、なぜ情報だけなのか。
「本当のDX」を考えるウェブメディア『モダンタイムズ』
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちら