photo by 佐藤秀明
ロシアの侵攻で脱炭素は進む。欧州に働くもうひとつのロジック
2023.02.09
Updated by WirelessWire News編集部 on February 9, 2023, 07:14 am JST
photo by 佐藤秀明
2023.02.09
Updated by WirelessWire News編集部 on February 9, 2023, 07:14 am JST
なぜ「ポスト石油」を考えなければならないのか
過去3回の連載で、脱炭素の真の定義等について説明してきたが、実は私はエネルギーアナリストであり、脱炭素の専門家ではない。
どちらかというと、エネルギー供給(石油や天然ガス、石炭、原子力、再生可能エネルギーなど)の調査や、使う側(自動車や空調システム等)の研究を通して、エネルギーの循環を俯瞰して見てきた立場の人物である。
もともと大学院時代は物質科学に軸足を置いていたが、エネルギーの動き全体を見ていくと国際情勢、政治、ビジネスの面で見えてくることが数多あり、ここ十数年はエネルギー周りの情勢をとらえるという膨大な領域を相手にすることを続けている。
現在、私は「ポスト石油戦略研究所」という会社を設立し代表を務めているが、「ポスト石油」に対する明確な答えを持っているかというと、やや曖昧だ。
まずこの社名に対して「なぜ脱炭素研究所ではないのか」と疑問を持たれることがある。
その理由に、石油が抱える課題がより大きいということが挙げられる。現状、世界のエネルギー供給の約80%が化石燃料であり、そのうちの概ね3分の1ずつを石油、天然ガス、石炭が構成している。その三大化石燃料の中で、供給上、最も懸念が大きいのは石油である。
だから脱炭素だけでなく、石油の次の時代を考えることが自動車産業が強い日本にとって特に重要だという思いを込めて、このような社名にした。石油をどのように利用していくかが、今後の日本にとって最重要課題になるだろうという問題意識を表している。
石油に対する懸念が最も大きい理由は、エネルギー量当たりの経済的な価値が一番大きいと考えられるのが石油だからである。エネルギーを扱う際には、専門的にはジュールなどの単位が用いられることが多いが、ここでは一般で通用しやすいカロリーを用いて説明する。
1カロリー当たりの経済価値が最も高い石油は、使い勝手がよく用途も非常に広い。ゆえに、他の2つの化石燃料に比べて石油は先に手に入れたいと願う組織が最も多い。そのため比較的優先的に採掘されてきたという経緯があり、一番最初になくなることが懸念されている。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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