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創造的発見の動機づけとなる「メタファー」

2023.03.20

Updated by WirelessWire News編集部 on March 20, 2023, 07:07 am JST

実は相互類似性がない「メタファー」

「男は狼である」というのは、46年前のヒット曲にあるメタファーである。しかし、よく考えてみると「男」にも「狼」にも相互類似性は認められない。これがある種「悪口」として作用するのはなぜなのか。野生の狼は人間を襲ったりしないし、むしろ家畜化して犬になるくらいの適性と品格がある。

哲学者ブラックの古典的な著書 Models and Metaphors, 1962 によれば、こう解釈される。「男は狼である」と聞くと、男はますます狼に近づき、他方、狼の方は一層人間味を帯びてくる。互いの意味空間は変容して、新たに混成概念を形成する。この際に、男でもない、狼でもない、もともとは無かった新しい意味の創出が起きる。つまり「豹変して女性を襲う色情魔」は、相互作用の結果生まれたことになる。本当にそうなのだろうか。

メタファーは非対称である

「光は波である」という物理学の古いメタファーを例にとろう。光は太陽光線、波は海辺に押し寄せる波である。狼のメタファーと大きく違う点は、この命題は明らかに偽である、とは言い難いことだ。どちらも日常よく知るものでありながら、本当のことはよく分からないから、両者をイコールでつないだ時にさほど違和感がない。特に波については、「人波」や「寄る年波」の如くメタファーとして汎用され、実在の様態として奥深い何かを感じさせるが、だとしても即座に共通項が見つかるわけでもない。

レオナルド・ダ・ヴィンチの残した膨大な草稿やスケッチのなかに、光を波として捉えた描画がある。光は蝋燭から放たれ、波形を描いて広がってゆく。光を波として理解しよう、という意図が分かる。言い換えると、光は「被説明項」つまり説明される側であり、波の方は「説明項」即ち説明する側である。

光は神々しいまでも鮮やかな現象ではあるが、未だ謎が多く、その正体をつかみかねている。一方、海や湖沼の波はなじみのあるもので、波形としてすでに図像化されている。この関係は逆転することはない。謎めいたものをなじみのもので説明する。自然の哲学者たちはこの種のメタファーを多用してきた。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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