photo by 佐藤秀明
生きている生物を分けていくことで、人は世界の解像度を上げている
2023.04.25
Updated by WirelessWire News編集部 on April 25, 2023, 07:34 am JST
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2023.04.25
Updated by WirelessWire News編集部 on April 25, 2023, 07:34 am JST
名前がついたからこそ、人類は新型コロナに早い対策を打てた
分類学とは、生物に名前をつけ、認識可能にすることで、人類が生物を利用することを可能としている生物学のいち分野である。例えば世界を騒がせたSARS-CoV-2、いわゆる新型コロナウイルスも、名前がつけられているからこそ、いち早く世界中で情報を共有することができ、感染拡大を防ぐ対策を打つことができた(ウイルスを生物と捉えるかは議論があるが)。
また、新型コロナウイルスの対抗策として開発されたワクチン(特にmRNAワクチン)の製造には大腸菌が用いられる。この大腸菌にはEscherichia coliという名前がつけられており、そのお陰で、我々は大腸菌を用いた研究や、その先にある科学技術の恩恵に預かっている。
このEscherichia coliというアルファベットの綴りこそが、生物学で用いる「学名」である。我々人類という生物種にも、Homo sapiensという学名がつけられている。これは、人類が共有できる唯一の綴である。「ヒト」と綴っても、「ホモ・サピエンス」とカタカナで綴っても、それは正式な学名とはならないし、当然、それをもって世界中の人と、ヒトという生物の情報をやり取りすることはできない。分類学の世界では、必ず生物に学名を付ける。現在、世界中で約200万種に上る生物に、このアルファベットの学名がつけられているのである。
この世は新種だらけ。分類ができている生物は2割にすぎない
さて、ここまで話すと、分類学にはきっちりしたプラットフォームがあり、全ての生物はその中にきっちり収められていると思った方もおられるかもしれない。だが、残念ながらそうではない。この地球上の生物について、その分類については、まだまだわかっていないことが多いのだ。
その理由の一つとして、まずこの世は新種だらけである、ということが挙げられる。先程200万種ほどに学名がつけられていると書いたが、ではこの地球上の全生物の一種一種をパズルのピースであるとし、そして地球自体をパズルの台としよう。この時、既知の200万種分のピースを並べていくと、この台はどれくらい埋まっていると想像されるだろうか? おそらく、台はほとんど埋まっていて、空白の部分がちらほら、と思われる方が多いのではないだろうか。だが、実際はおそらく違う。今日の世界中の分類学者が予想するに、現在までに埋まっているパズルのピースは、実は全体のほんの一部であると言われている。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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