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「バカ」に学ぶ、不幸を回避するソリューション

2023.05.11

Updated by WirelessWire News編集部 on May 11, 2023, 07:51 am JST

バカという人々

中部アフリカ、カメルーンの熱帯雨林に、バカという自称の狩猟採集民が住んでいる。彼らは、コンゴ盆地各地に離散的に分布している「ピグミー」とよばれる10あまりの異なる民族のひとつである。

遺伝的研究によれば、コンゴ盆地の東西のピグミーは数万年前には分岐しており、言語の系譜も民族間で大きく異なっている。それにもかかわらず、小柄であるなどの身体的形質、狩猟採集に重きをおく生業、ポリフォニーと森の精霊に特徴づけられる歌と踊り、近隣農耕民との緊張感を孕んだ共生関係など、共通点も多い。

カメルーンでは、フランス統治時代の1930年頃から近隣農耕民が定住化・集住化しはじめ、1960年の独立以降、バカの定住化が進んだ。今日では、大半のバカが道路沿いの集落を生活の拠点にしている。ただし、1年のうち数カ月から半年程度を森のキャンプで過ごす人も多くいる。

私は、2001年から2003年に約2年にわたってカメルーン東南部の小さな村でフィールドワークをおこない、その後も訪問をつづけてきた。本稿ではそのなかで経験した狩猟にかかわるタブーを紹介し、その背景をめぐる考察を述べてみたい。

卓越した技能をもつ男は、外部にとっては特別

カメルーン東南部に「ゾウは倒れない」という現地の言葉に由来する、ヨカドゥマという町がある。私がフィールドワークをしてきたZ村は、そこから南西に100キロあまりのところに位置している。

私がはじめてZ村を訪れた2001年には、まだ村まで道路が通じていなかった。7キロほど手前の村で車を降り、カヌーで川を渡って、そこから歩いてたどりつく必要があった。ところが2002年に木材会社が道路を整備して車でアクセスできるようになり、肉を買いつける商人や象牙をもとめてゾウ狩りを依頼する人などが頻繁にやってくるようになった。

現在のバカの狩猟は、体重5-20kgの森林性アンテロープ(ウシ科の哺乳類)を狙う、くくり罠猟が主流であるが、伝統的には、20-50kgのアカカワイノシシを狙う槍猟がさかんだったようだ。いまでも男たちは、森に行くときは槍を携え、機会があれば槍猟をおこなう。また、狩猟団を編成して1-2週間にわたって移動しながらゾウやイノシシを狙う、バカ語で「マカ」とよばれる狩猟行がある。かつては槍だけでおこなわれたことも多かったと思われるが、2000年代初頭にZ村でおこなわれたマカは、外部者からライフル銃を委託された「ゾウ狩り」であった。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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