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太古の地球のデータが集積している、樹、サンゴ、氷

2023.07.31

Updated by WirelessWire News編集部 on July 31, 2023, 06:52 am JST

現在の温暖化は人間の活動が原因だと特定できるのか

最近、気候変動に関するニュースを耳にする機会が多くなってきた。イギリス各地で観測史上最も高い40℃を超す気温が観測され、日本でも観測史上最高気温を観測する都市が相次ぎ、パキスタンでは例年の10倍もの降雨によってもたらされた史上最悪の洪水によって1,200名以上の死者を出し、米フロリダに上陸したハリケーン「イアン」はアメリカ史上最悪となる100人以上の死者を出し、台風14号は中心気圧が910hPaにまで下がり、特別警報級の勢力に発達して九州に上陸した。

これらの、気温の上昇、降雨現象の極端化、台風の強化などは大気中の温室効果ガス濃度の上昇によって生じる、地球温暖化の一側面だと考えられている。例えば、気温が上昇すると、大気中の水分の保持量が増加するため、降雨現象がより極端化する。温暖化によって海洋表面も暖められているため、台風もより強大化しやすい条件が整っている(一般に水温が26.5度を上回ると台風は発生・成長するといわれる)。

これらが、地球温暖化によるものだと特定するためには、単に背景にある物理(温室効果)を理解するだけでは不足している。

世界で最も長い気温観測の歴史を持つのはイギリスだが、それ以前の気温は、実際にどのように推移していたのだろうか? イギリスの気温の観測記録は1659年まで遡るが、それ以前には今よりも温暖な時代はあったのだろうか? もしそうだとしたら、現在の温暖化は自然のサイクルの一環で、人間活動が原因で生じている現象と特定できないのではないだろうか? 計器を用いた観測以前の気温を推定する方法はないのだろうか? これらの問いに答える一助になるのが、古気候研究である。

樹木が教えてくれる、約12,000年前からの気候の変遷

古気候(paleoclimatology)研究とは、文字通り古(paleo)の気候学(climatology)である。似た言葉に、古海洋研究(paleoceanography)があり、古気候学の中でも海洋学(oceanography)に特に焦点を当てた学問領域である。

最も長い歴史を持つ古気候研究の一つは、樹木の年輪を使ったものであろう。木は気温や日照などの条件が良いほどよく成長するので、年輪幅の変動は気候変動の記録と見なすことができる。さらに季節変化を反映して年輪を形成するので、非常に厳密な、一年単位での年代を求めることが可能である。さらに同じ地域で、異なる年代に生育した樹木が入手できれば、樹木の寿命を超えて、数千年、あるいは数万年に及ぶ年輪の記録を作成することが可能になる。

実際に、樹木年輪年代学(dendrochronology)が早くから始まった欧米では、記録は現在から遡って約12,000年前にまで及んでいる(日本でも、ヒノキやスギなどを用いて、約3,000年前まで年輪記録で遡っている)。こうした関係を利用すれば、測器による観測開始よりも前の時代の、気象条件を復元することが可能である。すなわち、樹木の年輪の幅の変動を、気温・湿度・降水量・日射量といった物理量に変換して読み解くことが可能になる。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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