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日本のITは「日本の信頼性」をもっとアピールすべき

Japanese IT should promote the reliability of Japan

2023.08.31

Updated by Mayumi Tanimoto on August 31, 2023, 17:52 pm JST

日本人全体だけではなくIT業界にいる人々も、日本の潜在的な力というものを理解していない人が少なくありません。ビジネスにおいては、意外と取引先 や外注先の国のイメージというものが決断を左右することがあったりしますが、その点に関しては 実は日本はかなり有利な立場にあります。

例えば、朝日新聞の報道によれば、フィリピンの政治コンサルタント会社パブリカス・アジアの調査では、フィリピン人の外国に対する信用度を調べたところ、日本を「信頼する」と答えた人は92%で、東南アジア諸国連合(ASEAN)ではトップとなっています。「とても信頼する」と答えた割合は55%です。

「日本を信頼」が92%でトップ フィリピン、「最大の脅威」は中国

日本を「あまり信頼しない」は8%、「全く信頼しない」は1%と大変少ない数字です。

「とても信頼する」の割合では、ASEANが45%、カナダが44%ですが、意外なのが米国は39%で低めです。韓国やオーストラリアと変わりません。フィリピンは歴史的にアメリカとのつながりが強く、経済でも重要なパートナーですが、意外と信用していない人が多いのです。

一方で、経済的なつながりがかなり強い中国に関しては不信感があり、79%が中国を「最大の脅威」としています。信用すると答えた人はたったの9%で、ロシアの14%よりも低いのです。このような調査の結果に驚く方が多いかもしれませんが、他の先進国でも、実は日本に対して信用すると答えている人はかなり多いのです。

例えば、オーストラリアのLowy Institute Pollによるオーストラリア人の世界の国における信用調査を見ても似たような傾向があります。

How much do you trust the following countries to act responsibly in the world ?

日本を「とても信用する」と答えた人は28%にのぼり「信用する」と答えた人は57%で、なんと85%の人が「信用する」と答えているわけです。これは主要国でトップの結果で、2位のイギリスの84%よりも多くなっています。

ロシア(8%)と中国(15%)は、調査対象国において最も信頼されていない国であり、特に中国は5年前と比較すると著しく低下しています。5年前には、オーストラリアの半数(52%)が中国を信頼していました。

同様に、ロシアへの信頼は昨年のウクライナ侵攻の影響で急落し、現在では2018年の水準から20ポイント低くなっています。

アメリカ合衆国への信頼(61%)は、2022年と比較して4ポイント減少しましたが、2020年(トランプ政権最後の年)よりも10ポイント高い水準です。

インド(58%)とインドネシア(51%)への信頼レベルは、前年と比較して安定しており、前の年とあまり変わりません。

このような 世論調査の結果というのは最近の国際政治などの調整を反映したものが少なくありませんが、ビジネスや日常生活において その国の人と接触した際の経験や印象というものが、調査の結果に反映されているという点もあります。

つまり日本は、国際政治においても他の国で大変 印象が良く、日本人全体のイメージが非常に前向きであるということです。特に フィリピンやオーストラリアは、日本と仕事で関わる人も多いので実際に日本人と接触した人の経験も反映されているのでしょう。

「信頼する」 という回答には、日本人が非常に 律儀で真面目であるという点も含まれているということに注意するべきです。

つまり、それまでこれらの国の人々が日本と取引をやってきて、契約書通りに仕事をしてくれたりお金をきちっと 払ってくれたという経験があるわけです。これは一朝一夕でできることではなく、長年の積み重ねがあってのことです。

日本を信用している人が多いので、日本のサービスや製品を買いたいという人は思う以上に多いのです。これは厳密なサービスが必要であるIT業界においては意外と重要なことです。

予定通りにプロジェクトが進み、契約書通りのサービスが提供されるということは、クリティカルなビジネスを行うにあたって非常に重要なことで、 間違いが少ないということも大変重要です。これに関して日本は、非常に信用できるビジネスパートナーであり 日本の技術やサービスというのは思った以上に価値が高いのです。

日本では、IT 業界の賃金が安さや 競争力のなさが長いこと指摘されてきていますが、実際の現場では日本のサービスは大変にレベルが高く信用性も高いので、思った以上に競争力があるのです。

ただし 日本の人々に足りないのは、自分たちのサービスを海外に売る工夫、営業力、広報宣伝力、人脈作りです。製品単体の宣伝を見ても実に謙虚で、本当に良い部分がうまくアピールされていないなと思うことがあります。

日本のIT系の会社の方には、海外のサービスや製品の実態を把握し、日本の良さを強調した上で、ネットワーキング作りや 広報の部分にもっと力を入れてほしいなと思います。

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谷本 真由美(たにもと・まゆみ)

NTTデータ経営研究所にてコンサルティング業務に従事後、イタリアに渡る。ローマの国連食糧農業機関(FAO)にて情報通信官として勤務後、英国にて情報通信コンサルティングに従事。現在ロンドン在住。

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