photo by 筆者の岡村氏
10人に1人が認知症をもつ時代、人類の基本動作である「農作業」が危険な2分法を回避する
2023.08.31
Updated by WirelessWire News編集部 on August 31, 2023, 18:27 pm JST
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2023.08.31
Updated by WirelessWire News編集部 on August 31, 2023, 18:27 pm JST
10人に1人が認知症をもつ時代のイノベーション
21世紀の半ばには高齢者(65歳以上の人)は人口の40%を超え、認知症をもつ人は1,000万人前後と推計されている。そのころ人口は1億人を下回っているのであるから、日本人の10人に1人は認知症をもつ可能性がある。
医学の発展と、世界水準から見れば非常に安価で平等な医療保険制度が、日本の健康長寿社会を支えている。素晴らしいことであるが、物事には両面があり、増え続ける認知症の人のケアについてもイノベーションが必要だろう。それは「IT革命」「DX革命」のような、quantum leap(量子跳躍、転じて劇的な進化)であるだろう。そして、私たちは新しい認知症ケアを開発している!
と、さんざん煽ってみたが、皆さんは、じゃあ私が何を開発しているのか気になったであろうか? ロボット? 人工知能?
いやいや、1周回って、そういうのはもう古い。センセーショナルな報道はされているのかもしれないが、科学者の立場から見ればきちんとしたエビデンスがなさすぎる。あれらはまだWizard-of-Ozと大差ないように(私には)思える。
もっと地に足の着いたエビデンスのある新しい認知症ケアの一つとして、「農」を紹介しよう。
塗り絵やカラオケのほかにもしたいことがあるのでは?
もしあなたが認知症をもち、症状もだいぶ進んで、日々の生活が難しくなってきたとする。ご家族はいない、あるいはとても忙しく充実して働いているという設定である。あなたは、毎日デイサービスに通いながら在宅で頑張るか、高齢者住宅等への入居などが選択肢になるだろう。ここでは、あえて現実的に考えることにしよう。絶対に施設は悪だとか、そういう原理主義的思考は置いておこう。そこであなたはどういった体験をするのだろうか?
さて認知症の人は、我が国では結構大事にケアされる。お絵描き、塗り絵、投げ輪、カラオケ、風船ボール遊び、など安全で工夫を凝らしたアクティビティが提供される。ここで声を大にして言いたいが、こうしたケアをしてくれる作業療法士等のスタッフは少ない人員の中で本当に真面目に取り組んでいるし、認知症をもつ高齢者は朗らかで優しい方ばかりではなく嫌な思いも時にするだろうから、私は心から尊敬している。
しかし、である。本当にこのような活動が、私たちが老いて弱ったときにしたい活動なのだろうか? 大地の上で、美しい自然の中で、農作物を育てるというのはどうだろうか、というのが私たちの提案だ。
※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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