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テクノロジー・欲望・苦痛 理工系の学部増設に意味はあるか?

2023.12.19

Updated by WirelessWire News編集部 on December 19, 2023, 07:37 am JST


テクノロジーにお金をかける

テクノロジー礼賛は、F・ベーコン以来の古い歴史を持つ。ベーコンは、有用であることこそ、学問(サイエンス)に求められるべき成果と信じていた。日本のように化石燃料や広大な土地といった資源を持たない国では、技術立国こそが生き残りの道である、と声高に言われたりもする。そこで、役に立つテクノロジーを開発する人材も求められるわけである。

こんなニュースが目についた。「文部科学省は、デジタルや脱炭素など成長分野の人材を育成する理工農系の学部を増やすため、私立大と公立大を対象に約250学部の新設や理系への学部転換を支援する方針を固めた。今年度創設した3000億円の基金を活用し、今後10年かけ、文系学部の多い私大を理系に学部再編するよう促す構想だ」(読売新聞オンライン[2023/01/12 07:15])。

そもそも、お金のかかる理系大学は経営に配慮せざるを得ない私学から敬遠されがちだったのであり、戦後長い間、教育に人材やお金をかけてこなかった政策の失敗にすぎない。実は、理系人材よりも、すぐれたビジョンとまっとうな倫理観をもって政治のできる人材育成こそが急務であるのに、「彼ら」の思考の埒外にあるようだ。

しかし、3000億円とはしみったれている。焼け石に水であろう。市場調査をすれば、理系大学への需要に対して既に供給過剰に近い状態であることがわかる。日本では、大学進学者のうち理学と工学を専攻する学生がOECDの平均27%よりもだいぶ低く、17%に留まっている(読売新聞オンライン、同上)。理系学部をたくさん新設しても、受験生がそこに進学したくなるわけではない。需要と供給のミスマッチをどう補正するかが問題であるし、人材育成のためには不可欠である。

※本稿は、モダンタイムズに掲載された記事の抜粋です(この記事の全文を読む)。
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