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オープン化、光伝送、NTN活用など通信技術の変化を感じる――MWC Barcelona 2025(2)

2025.05.19

Updated by Naohisa Iwamoto on May 19, 2025, 06:25 am JST

 MWC Barcelona 2025では、無線を中心とした通信関連の技術の進展を感じることができた。フォトレポート形式で、トピックを紹介する。

●情報通信研究機構(NICT)

情報通信研究機構(NICT)がMWCに初出展。地上通信ネットワーク(TN)と非地上系通信ネットワーク(NTN)を融合した無線アクセスネットワークの制御のデモを実施。MWC会場のジョイスティックで、シンガポール工科デザイン大学(SUTD)のドローン模型をリアルタイム制御する様子を見せた。同時に、利用者が少ないエリアはTNの基地局を動的にオフにして、NTNで通信をまかなうことで、低消費電力化が可能になると説明があった。


300GHz帯を活用した4K非圧縮映像伝送も実演していた。実際に通信機を対抗で配置し、紙などで間を遮ることで映像伝送が途切れることからテラヘルツ波の特徴を体感できた。

●KDDI

KDDIは、米Skydioのドローンの活用シーンを紹介。ローソンを想定したコンビニエンスストア店舗にドローン基地を設けることで、全国にドローン基地を展開することを想定する。Starlink 衛星回線を経由し Skydio製ドローンによる配送や災害時の支援 を行うユースケースを紹介していた。


●NTTドコモ

NTTドコモのブースでは、NECと共同で設立した Open RAN 事業子会社 OREX SAI(2024年設立)によるOpen RANサービス「OREX」の取り組みを解説。仮想化基地局と無線装置を世界の主要ベンダーによるマルチベンダー製品を組み合わせて提供できるだけでなく、自律運用が可能なソフトウエアなども提供。世界の通信事業者が、コストや消費電力を抑えたモバイルネットワークを構築できる環境に貢献する。OREX SAIとSURGE(現地通信事業者)、ノキアがインドネシア数百万世帯へのブロードバンドサービス提供に向けて提携を結んだことについても紹介があった。


NTTドコモのAIの取り組みについてもプレゼンテーションがあった。広告やヘルスケアなどの分野でAIの活用が進んでいるほか、今後はドコモのビッグデータインフラやパートナー企業のデータを活用したAIエージェントの提供を進めるという。

●楽天

楽天ブースでは、三木谷浩史代表取締役会長兼社長の講演もあった。「2018年以来7年ぶりのMWC出展であること、当時はソフトウエア的にモバイルインフラを構築することを笑われたが、Open RANによるインフラで850万ユーザーを獲得するに至った」と実績をアピールした。

●京セラ

MWC 会期中に設立発表があった O-RU Allianceについて、京セラブースでは専用エリアを設けて紹介した、5G Open RAN 用無線装置の相互接続推進を目的としたアライアンスで、京セラをはじめとした内外6社の通信機器ベンダーが加盟する。専用エリアではアライアンスメンバーの無線装置(RU)を展示した。多様なRUの利用だけでなく、京セラの基地局(CU/DU)との連携でトータルソリューションの提供を目指す。

●IOWN Global Forum

MWCへの初出展となったIOWN Global Forum。同ForumはIOWN技術のユースケースを開発するための民間組織で、150以上の組織で構成する。技術だけでなく、ユースケースやアプリケーションの開発に力を入れていて、リモートメディアプロダクションや金融サービスでのユースケースも紹介した。KDDI研究所が開発した、1つのコアに6つの伝搬モードを伝送可能な19コアのマルチコア光ファイバーも展示があった。


●ノキア

ノキアブースでは、AIを利用した自律的なネットワーク運用への移行のステップを示した。条件付きの自律ネットワークから高度な自律ネットワークへの移行では人間をガイドするが、将来的にはAIによるフル自律ネットワーク化が進み、人間は監視するだけで済むようになる世界観が提示された。



●エリクソン

Photonic Integrated Radioと呼ぶ無線周波数信号を光信号から発生する装置のプロトタイプのイメージを展示。電気信号から電波に変えるプロセスを、光信号から電波に変えることで、損失を抑え効率の良い通信システムの実用化を目指している。

エリクソンブースで実施していた、6Gを想定したcm波の伝送デモ。ダウンリンクで約3Gbpsの通信速度がテスト用のUEで実現できていることを示した。

最新の無線機やアンテナなども展示したエリクソンブース。デュアルバンド FDD Massive MIMOの「AIR 3285」(中央右)は、従来の4倍のアップリンクを提供しながら、重量は50kgから30kgへと軽量化。燃料消費や炭素排出を大幅に削減する。脇のスリットで横風の荷重を逃がす工夫もある。

●クアルコム

クアルコムブースでも5GインフラとしてOpen RAN/仮想化RANの展示があった。クアルコムのDragonwing X100 Accelerator Cardを組み込んだ vDU が、NTTドコモの Open vRAN 展開で商用採用されていることを紹介していた。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。