March 4, 2026
清水 亮 ryo_shimizu
新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。
Claude Codeの威力がようやく一般の人にも理解されつつあるようだ。
筆者のタイムラインには、毎日のようにClaude Codeで思い思いのツールを開発する非エンジニア職の人々の感動と嘆息が埋め尽くされている。いい兆候だ。
高性能なGPUを手軽な価格で使えるようになったという点で画期的なDGX Sparkが発売されたことに加え、最近のSLM(小規模言語モデル)の進歩は目覚ましく、最近ではQwen3.5 9Bがその脅威的なコンパクトサイズに反して高度な推論機能を持っていることが衝撃を持って受け止められている。
ここで最近、筆者とその周辺の興味は、
クラウド上のAIは、確かに高性能かもしれないが、大量のユーザーを同時に捌くため、どうしても一人一人への対応は雑になる。一人の秘書が100人のボスに仕えているような状態だからだ。
それに対して、ローカルAIを使った自家醸造(ホームブリュー)なエージェンティックAIは、100%のリソースが全て自分一人のために使われる。これはバスに乗るのと、自家用ジェットに乗るくらいの違いがある。

ローカルだからといってそこで完結する必要はなく、ローカルのエージェンティックAIは、必要に応じてクラウドの巨大なAIの助けを借りることもできる。
最近のクラウドAIは、例えば日によって調子がよかったり悪かったりする。
筆者のオフィスでは毎朝のように「今日はChatGPTの機嫌が悪い」とか「今日はViduの調子がいい」といった会話が交わされる。彼女たちの仕事はAIを使ったクリエイティブがメインで、AIの調子が悪いのは死活問題になるからである。
特にGoogleの作画AIであるNanobanana2は出来はすごいのだが波があるらしく、Nanobanana2などクラウドAIの調子が悪いと感じた時は、彼女たちはFlux.2 Kleinなどのローカルで動く画像生成AIを使うという使い分けをしている。
これがエージェンティックになると、人間がLLM(例えばChatGPTとかGeminiとか)を使って「行ったり来たり」で作業するプロセスを丸ごとエージェントが肩代わりする。
例えば筆者は毎日AIニュースを調べて配信する番組「デイリーAIニュース」をやっているのだが、それまで手動で集めていた情報に加えて、自作のエージェンティックAIであるSiki(式神に由来する)が、いつのまにか24時間ニュースを監視するようになった。
もちろん、そのように仕向けたのだが、自分でエージェンティックAIを作る、つまり自家醸造することの良さは、「自分が欲しいエージェントに仕立て上げることができる」という点に尽きる。
実は、すでにトップエンドのLLMの世界では、人類の上位数パーセント(あるいは数人)の知性と闘うほど賢くなっている一方、日常の業務、例えばユーザーが本当にやって欲しいことにきめ細かく答えるようなことはおざなりになっている。
それは、LLMの「ベンチマーク性能」が企業の株価に直結するからであり、そちらを優先するとどうしてもユーザー向けのサービスを向上させること、つまりユーザビリティへの配慮が疎かになる。
しかし、ローカルエージェントの場合は、暇さえあればユーザー一人のために「ユーザーはどんな人か」「ユーザーが次に求めることは何か」「それを先にやっておけないか」と考えて、自律的に行動することができるようになる。
あるいは、関連する情報を集めて、簡単なローカル画像生成モデルを使ってインフォグラフィックに仕上げたり、スライドショーにしたり、動画を生成したりと言った作業をさせることができる。

人によって、扱いたい情報は、ニュースなのか、それとも株価の値動きなのか、メールなのか異なる。
OpenClawはSlackやDiscordなどかなりの範囲をカバーしているが、筆者はSlackはあまり使わないのでできればメールでサマリーが欲しい。ローカルエージェントなら、新しい機能が欲しければ自分で追加することができる。当たり前だがすごい進歩なのだ。これは。
この開発そのものもClaude Codeのようなエージェントで行なっているのだが、近い将来、これ自体もローカルエージェントに置き換わる予感がしている。
Claude CodeはMAX20倍プランだと月額3万円。その強大な機能を考えれば安すぎるほどだが、使えば使うほど、制限に苦しめられることになる。筆者は3つのアカウントで3つの20倍プランに課金しているが、それでも10万円だ。これは、普通に大学生のインターンを一人雇うよりも圧倒的に安く、しかも能力は、大学生のインターン20人分以上だ。プロのプログラマー5人分くらいに相当する。
しかし、例えば筆者がRaspberry Pi5と5060tiという廉価なGPUの組み合わせで、システム合計15万円以下で作ったマシンでも、ローカルエージェンティックAIを動作させることができる。
これはクラウドのAIと違い、電源さえ供給されれば無制限に思考することができる。
実はすでに、小規模な言語モデルでも、時間をかけて推論すれば大規模言語モデル並の結論を出せることがあるという研究がある。
多分、トップノッチで比較されているような高度な数学的推論は難しいのかもしれないが、世の中の人が必要とする大抵の割とそこまで賢い人間でなくてもできるようなタスク、例えばあるキーワードについて調査してまとめて報告書の形にしたりとか、アンケート結果をまとめてグラフにしたりとかと言ったことについては全く問題ないどころか、人間より上手く正確にやってくれる可能性すらある。
唯一の違いは、人間の場合、成果物が間違っていると「お前が悪い」と責任をなすりつけることができるが、エージェンティックAIを使った場合、それを使った人間の責任になるということだ。
筆者の周囲でエージェンティックAIの自家醸造に精を出している人間の多くは、経営者だったり経営経験者だったりして、「責任を取る」ことに慣れている人たちだ。
この辺りの動きがあまりにも面白いので、自家醸造のエージェンティックAIを作っている知人を集めてイベントを開催することにした。
名付けて、「ホームブリュー(自家醸造)・エージェンティックAIクラブ」である。
Wireless Wire Newsのライターの一人である川崎裕一や、筆者、AIやプログラミングの著書を多数出している布留川英一、同じく多数の書籍を執筆しているからあげ氏、そして元ユニティテクノロジーズジャパンの代表で、ゲームプログラマーの大前広樹といった面々が集まった。
どんな話が飛び出すのか、今から楽しみであると同時に、筆者自身も発表するために日々自分のエージェンティックAIを改良するのが楽しくてたまらない。
会場が狭いのでオンライン配信も行う予定。
イベントのページはこちらです。 https://homebrewai.peatix.com/view