March 20, 2026
清水 亮 ryo_shimizu
新潟県長岡市生まれ。1990年代よりプログラマーとしてゲーム業界、モバイル業界などで数社の立ち上げに関わる。現在も現役のプログラマーとして日夜AI開発に情熱を捧げている。
Claude CodeやOpenClawなど、ローカルで動作するエージェンティックAIが注目を集めている。
Claude Codeの場合、推論は基本的にAnthropicのクラウドで行われるが、OpenClawを始め、さまざまなオープンソースのエージェンティックAIツールは、クラウドとローカル(手元にあるPCで動作する)LLMを複数種類組み合わせて使うことができるようになっている。
これこそが筆者が昨年指摘した「AIシステム」であり、LLMとプロンプト(最近はskillと呼ばれる)、または知識を統合したものだ。
興味深いのは、Claude Codeの普及などによって、それまでプログラミングに全く縁がなかったビジネスパーソンでも、自分専用のエージェンティックAIを作ったり、それを活用したりできるようになってきたこと。
そこで、自分でエージェンティックAIを作っている/作ろうとしている/活用している人々を集めてライトニングトーク大会をやってみた。

登壇者は、AI関連の技術書を多数著しているnpaka(布留川英一)、ユニティテクノロージズジャパン元日本代表でゲームクリエイターの大前広樹、AI関連の著作でしられるkaraage氏と筆者の五人。オフラインのチケットは即完売。オンラインのチケットも販売されている。
「ひとり10分ずつ」という話だったのだが、言いたいことがありすぎて一人20分ずつくらい喋ることになった。
冒頭は筆者が感じている「エージェンティックAIのカンブリア大爆発」ということについて。
筆者は、個人で使うためのAI情報収集エージェントであるSiki、エージェンティックAIをセットアップするためのツールであるSuzaku、Claude Codeの契約すら不要で自動的に環境を認識して完全ローカルなエージェンティックAIとして立ち上がり起動する無貌(mubo)と、まだ公開してないが内部にブラウザで動作するバーチャルマシンを組み込んだRLMエージェントの四つのエージェンティックAIを開発し、主にオープンソースとして公開している。なぜそんなに作っているのか?

それは、まだAgentic AIの最適な形が定まっていないからである。
最近、筆者はClaude Codeさえ契約すれば誰でも自分のエージェンティックAIが作れるハンズオン講座をオンラインで開催した。その時に浮かんだキーワードが「Agentic AI is next “Hello World”」というもの。

https://shirasu.io/t/zelpm/c/shi3zlab/p/20260304154702
「Hello World」とは、かつてコンピュータが一般におりてきたときに、まだ何もわからない人たちが最初にコンピュータに触れる時、とりあえず画面に「Hello World」と表示するプログラムを書くという通過儀礼から来ている。かつてはあらゆる人が最初にやることだったが、今はプログラミング言語に最初に入門するときの決まり文句として知られている。
エージェンティックAIを使うだけでももちろん便利だが、作ったり改造したりできるようになるともっと便利になる。
たとえば筆者の場合、平日ほぼ毎日配信している「デイリーAIニュース」のために、情報収集エージェントのSikiが、筆者が寝ている間でもほかのことをしている間でも、TwitterやBlueskyといった情報源を自動的に漁り、AIに関連するニュースか、その重要度はどのくらいか評価した上で、定期的にメールで最新のAIニュースを送ってくるようになっている。
しかもこれはASUS GX10という60万円程度のマシンで完全ローカルで動作するのでAPI使用料金が青天井にかかってしまう心配もない。
人によっては医療や経済や政治といった興味分野も違うだろうし、見るべき情報源もニュースサイトやティックデータや気象データなどに変化するかもしれない。これだけ多岐にわたる「使い方」を通りいっぺんのユーザーインタフェースで提供できるわけがない。
そこで、エージェンティックAIを構成する論点としては、UI、ツール、プロジェクト管理、プロンプティング、ログの記録・検索、アーキテクチャ、タイムライン、パーパスなどがあり、それらひとつひとつを紐解くと、今はまさにエージェンティックAIのさまざまな形を模索すべき段階にある。
要はOpenClawやその派生系がいくら流行っているように見えても、安易にそれに飛びついて「自分でエージェンティックAIとは何か」を考えるチャンスを失うべきではないということだ。
例えば今回のイベントで、布留川英一(npaka)氏は、ロボットをエージェントのUIにするべきだという主張を広げた。

ロボットはエージェントの有力なUIのひとつである。
まず、カメラ、マイク、といった入力が充実しており、スピーカーだけでなくジェスチャーというディスプレイ装置も充実している。
人間同士が会話するとき、あるいは人間と人間でないものが会話する時(プロジェクト・ヘイル・メアリーのように)、必ずしも言語やテキスト入力が最適解とは言えない。首を傾げたり、頷いたり、サムズアップ(あるいはダウン)したりハグしたりするほうが、遥かに豊かな情報を伝えることができる可能性がある。

はてなの元副社長として有名で、その後、mixiやスマートニュースで執行役員を経験した個人投資家の川崎祐一氏は、プログラミングと全く無縁だったが、Claude Codeを活用して、秘書やCFO、フィットネストレーナーやnoteの記事を書くゴーストライターなどさまざまな分野に応用しているという。
これは入力はテキストだけでなく、GmailやGoogle Calender、出力としてnoteやメールといったものをフル活用することで自分にとって快適なエージェントに作り込んでいる様子が窺える。
川崎氏自身による参加レポートはこちら https://note.com/yukawasa/n/nd9fe65624b83

冒頭の挨拶で「プログラマーではない」と冗談を言ったゲームクリエイターの大前広樹氏は、「本業であるゲームには生成AIの作ったものは一ミリたりとも入れたくない」と強い意志を表明するが、実際の業務のうち、非クリエイティブな業務、所務業務や秘書業務のようなものには積極的にClaude Codeを活用しているという。

本業が某有名研究機関でのエンジニアであり、エージェンティックAIハーネスのxangiを開発したkaraage氏は、日常のさまざまな場面でエージェンティックAIを作り込み、猫日記やヘルスアドバイザーとして活用しているという。氏の参加レポートはこちら https://karaage.hatenadiary.jp/entry/2026/03/19/070000
このように三者三様の活用方法があり、似ているようで似ていない方向を模索していることがわかる。
エージェンティックAIは今まさにカンブリア紀にあり、自分にとって必要なエージェンティックAIとは何かを考え、実際に手を動かして作ってみたりすることが実は重要になってくる。
いま、専門知識が少なくてもエージェンティックAIを自分で作ったり改造したりできる時代にこれを体験しないのは実にもったいないことだと思う。
実は、最近のChatGPTもGeminiも、実質的にはエージェンティックAIとして動いている。ただし、クラウドの向こう側にあり、がんじがらめのセキュリティや、実は限定されたリソースでしか動作できないため、その潜在的な能力を最大限発揮できていない。
そうした、クラウドで、あるいはWebで与えられた環境だけでAIを使っているだけでは今やAIのことをほんとうに理解できているとは言い難い。
なお、このイベントは4月18 日まで視聴することができる。この機会にぜひエージェンティックAIとは何かを考えていただきたい