日本においては、総務省が移動体通信分野における競争促進を目的として2002年に「MVNO事業化ガイドライン」を策定した。2010年頃からスマートフォンやモバイルルーター向けに主にデータ通信サービスをMNOよりも安く提供するSIMを提供する事業者が登場。当初の参入時業者は通信事業者やインターネットサービスプロバイダーなどが中心だったが、2013年頃からスマートフォンの急速な普及に伴い流通事業者、端末メーカーなど異業種からの参入でサービスの低価格化が進んだ。これらの多くはMNOに比べて安い通信料金を売りにしているため、消費者からは「格安SIM」として認知されている。
MVNOのサービスの基本はMNOとMVNOの間で契約した帯域をMVNOが利用者に提供するもので、限られた帯域に対して効率的に利用者を割り当てることで収益を上げることになる。提供サービスの形を決めるのが、MNOとMVNOのネットワークの接続形態で、「L2接続」と「L3接続」に分かれる。L2接続では利用者の端末はMNOの基地局に無線で接続され、接続を認証されてIPアドレスを払い出されることで外部ネットワークとの通信が可能になる。IPアドレスの払い出しをMVNOの設備で行うのが「L2接続」で、利用者端末とMVNOのPGW(パケット終端装置)がL2トンネルで接続される。また、利用者の管理認証、課金情報、通信ルール管理とルールに基づくパケット転送制御などの機能もMVNO側に設置される。料金プランを含めたサービス設計の柔軟度を高めるためにはL2接続が必須となる。一方、L3接続はこれらの機能をすべてMNO側におくもので、MVNOは単にパケットを転送するだけの役割となる。設備を自社で持つ必要がないため安価に事業参入できるが、サービス設計の自由度は低くなる。
通信ルールを自由に設定できるため、料金とパケット通信量以外にも特色を持たせた料金プランの設定も可能になる。一例として、2015年10月にケーブルテレビ事業者のJ:COMが開始した「J:COM MOBILE」は、自社のオンデマンド動画配信サービス「J:COMオンデマンドアプリ」についてはゼロ課金(パケット料金を課金しない)を実現している。海外では、移民をターゲットに特定の国向け通話料金を格安に設定したMVNO事業者も存在する。
Googleが2015年7月にアメリカでサービスを開始した「Project Fi」は、1枚のSIMでSprintとT-Mobile、2社の回線に接続できるMVNO。この2社の回線とWi-Fiの中から接続状況の良い回線を選択してデータ通信サービスを提供する。米国外でも、120カ国で現地通信事業者へのローミング接続が可能で、データ通信サービスについては米国内と同じく1GBを10ドルで提供する(通話については従量制)。こちらも料金よりも利便性に特色があるサービスだ。
最近の動きとして注目されるのが、IoT/M2Mに特化したMVNO。「定期的あるいは不定期に小さいデータトラフィックが発生する」という通信形態に合わせた料金体系が設定されており、テレマティクスサービスやセンサーネットワークを活用したIoTソリューションにおいて末端の端末をネットワークに接続するためのいわゆる「ラストワンマイル」接続を安価に提供する。接続用のSIMを提供するだけでなく、IoTプラットフォームの一部として通信機能をMVNOとして提供する事業者が増えている。