Sensor Network

概要

「多数のセンサーを配置し接続することで場の状況を知る」というセンサーネットワークの研究は1980年初頭に端を発するが、当時はネットワークが有線に限られたため、センサーそのものの配置に制約があった。2000年前後から無線による通信が実用化されたことで「測定可能なものを全て測定し、ネットワークする」ことが技術的には可能になり、応用範囲が飛躍的に広がった。

「ノード」と呼ばれるセンサーネットワークの端末は、1個もしくは複数のセンサー、データを処理するプロセッサー、通信インターフェイス、電源で構成される。検出された値は、外部のネットワークとセンサーネットワークを仲介するゲートウェイに転送される。ネットワークの形はゲートウェイと各センサーがそれぞれ結ばれるスター型、ノードが階層構造を持つツリー型、ノードを網の目のようにつなぐことで複数の経路を確保するメッシュ型、ノードが線形に繋がるリニア型などがある。また、データを転送する経路の決定(ルーティング)も、あらかじめ決められた経路を通る方式や、状況に応じてノードが自律的に最適な経路を構築する(アドホックネットワーク)方式がある。

測定データはノードのプロセッサーにより分散処理される場合もあれば、ゲートウェイを経由してサーバーに送信されそこで処理される場合もある。IoTにおけるセンサーネットワークでは、クラウド上に配置されたアプリケーションやデータベースがAPIをを経由してセンサーの情報を取得し、処理を行い、それにもとづく情報の可視化、デバイスの制御、アラートの発報などを行う。処理は統計的処理の場合もあればAI技術を利用する場合もある。

用途

さまざまな用途があるが、大別するとモニタリングと制御のいずれかになる。モニタリングは、センサーの情報に基づき状況を記録しわかりやすく提示したり異常があった場合検知するもの。家庭内の見守りシステム、バイタルセンサーを利用した健康モニタリング、雪崩・地すべり・河川氾濫などの防災警報システム、ウェアラブルデバイスを活用した疲労度の可視化、農地や家畜のモニタリングなど多岐にわたる。

制御はセンサーの情報にもとづき状況を判断してシステムにフィードバックすることにより何らかの自動化を行うもので、利用者の電力メーターの値を集積することで電力需要と発電量を予測し電力需給を最適化するスマートグリッド、工場や建設現場における機械制御、室内の照明・空調制御、プローブカーデータを活用した自動運転へのフィードバックなどが代表的な用途となる。

Industrial Internet

米GEが提唱する「産業機器とデータと人がつながる」という新たなコンセプトで、「産業革命」「インターネット革命」に続く第3の革命と位置づける。センサーによりあらゆる情報をビッグデータとして集約・分析することで、個々の産業機器の監視・管理だけでなく全体の最適化と効率化をはかり、予測へとフィードバックする。このプロセスをブラックボックス化するのではなく、現場の担当者などにもスマートフォンやタブレットなどの端末で可視化することにより、業務の効率をさらに高めていく。2014年3月にAT&T、CISCO、GE、Intel、IBMの5社が設立した「Industrial Internet Consorcium」は、重点分野として、「エネルギー」「ヘルスケア」「製造業」「パブリックセクター」「交通」の5分野を挙げている。また、GEは、2015年3月にインダストリアル・インターネット向けプラットフォーム「Predix」を全ての企業で利用可能にすることを発表している。

課題

省電力化

多くの場合センサーノードは外部電源を取ることができないため、センサーそのものだけでなく通信モジュールについても省電力であることが求められる。また、用途によっては、太陽光発電などにより電力を補う場合もある。

ノード間通信技術

センサーノードから送信される個々のデータはそれほど大きくない。また狭い範囲にネットワークを構築する場合は、物理的な通信距離もそれほど長くなくて良いため、通信速度が遅く到達距離が短くてもロバストな方式が必要となる。BLE(Bluetooth Low Energy)、ZigBee、Wi-SUN、IP 500などの規格が現在提案されている。逆に、防災目的など広範囲にセンサーを配置する必要がある場合は、特定小電力無線などを活用する場合もある。

 また、ゲートウェイとインターネットの接続にはセルラーネットワークが利用される。次世代ネットワークとされる5Gでは、センサーネットワークも含むIoTの接続需要に対応すべく、接続密度の増加、高信頼性、低遅延の実現を目指している(→5G)。

測位と時刻の同期

状況を把握するためのネットワークであるから、「いつ、どこで」測定されたデータであるかを正しく判別できることは重要である。システムのセンサーの時刻を同期するためには電波時計、ネットワーク経由の時刻サーバーとの同期、衛星システムとの同期などの手段が用いられる。また、位置情報についても、自動運転や機械制御など精密な位置情報が必要な用途については衛星測位とネットワーク経由で受信する補正信号を併用することで解決している。ネットワークが低遅延であることがここでも重要になる。

セキュリティと信頼性

センサーから送信されるデータは全ての基礎となる。情報が経路の途中で改ざんされたり盗聴されるようなことがないよう、アクセス制御や暗号化を適切に行う必要がある。また、センサーそのものの盗難や破壊も想定する必要があり、一部のセンサーが失われた場合にもルーティングとデータの集約が適切に行われることが必要になる。

プライバシー

画像に写り込んだ顔や服装、バイタル情報など、個人を特定することが可能な情報もセンサーネットワーク内を流通する可能性は十分考えられるため、適切にアクセスを制限するだけでなく、データや分析結果の取り扱いのルール化が課題となる。