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[先週の動き]国内発売を受けてiPad活用の動きが続々、次世代マルチメディア放送の勢力争いも

2010.06.07

Updated by WirelessWire News編集部 on June 7, 2010, 10:10 am JST

5月28日のiPad発売騒動から明けた5月31日の週も、国内のiPad熱は簡単には冷めなかった。端末が実際に発売されたことで、個人向け法人向けを問わず、iPadの活用法を広げるような報道発表が続いた。

iPadを業務で使える端末として活用

企業システムの端末としてiPad導入を考えたときに、1つのソリューションになるのがシトリックス・システムズのデスクトップ仮想化だろう。パソコンを仮想化してサーバー上に設置し、ネットワークを介して端末から操作するソリューションである。これは、シンクライアントのソリューションとして耳ににしたことのある人もいるだろう。端末側では画面情報を表示して、操作情報を送信するだけ。サーバーと端末がネットワークでつながっていれば、場所を問わずに安全に企業システムを利用できる。

iPadの上で、Windowsなどによって作られた企業システムのアプリケーションを実行させるには、デスクトップ仮想化はもってこいのソリューションになる。サーバーが実行した結果の画面情報を表示するだけなので、端末のOSに関わらずに企業システムをリモート利用できる。要するにiPadでWindowsなどのアプリが動くのだ。シトリックス・システムズがiPad向けのクライアントアプリを提供したことで、すぐにでもiPadを業務端末に利用できるようになった(関連記事:シトリックス、企業システムにリモートアクセスできるiPad用アプリを提供)。

企業システムの端末としてiPadを使う動きはメガバンクにもあった。みずほ銀行は、iPadを営業店に試行導入して、窓口での商品説明などに利用することを明らかにした(関連記事:みずほ銀行がiPadを試行導入、商品説明などに活用へ)。営業店や外部訪問営業で分かりやすい商品説明に使うほか、営業店のロビーでの顧客への情報提供のための端末としても試行する。話題のiPadを使うことで、顧客への満足度を高められるなら、この投資は"安い"ものになる。

iPadをネットワーク上のストレージやサーバーとして活用できるソリューションも登場した(関連記事:iPadをネット上のサーバーにできる「ServersMan HD」、フリービットが提供へ)。フリービットが提供する「ServersMan HD」というアプリを使うと、ネットワークにつながったiPadに対して、外部の機器からファイルを読み書きしたり、保存したりできるようになる。これまでにもiPhoneやAndroid端末などに対して、同様のソリューションを提供してきたが、対応機器にiPadが加わることで利用範囲がぐっと広がりそうだ。業務ソリューションでの利用もさることながら、iPadを遠隔操作で写真を蓄積できるデジタルフォトフレームとして使うといったパーソナル用途でも楽しめる。

iPadとXperiaのサービスでトラブルが続く

コンシューマ向けのiPad対応サービスとして6月1日にソフトバンクグループのビューンが開始したのが、新聞や雑誌のコンテンツを定額で楽しめる「ビューン」だ(関連記事:ビューン、iPadやiPhoneで30種類以上の新聞・雑誌・動画ニュースが楽しめる定額サービスを開始)。数百円の月額(または30日間)定額料金で、毎日新聞などの新聞、週刊朝日、ALBATROSS VIEW、FRIDAYなどの雑誌のコンテンツを閲覧できる。ところが、このサービス、開始当日にサーバーへのアクセス集中を理由に提供が止まってしまった。

システムを増強して再開するとのことだが、1週間近く経った6月6日時点でも再開のアナウンスはない。iPadなどのユーザーに評価されたことが招いた事態だろうが、ユーザーへのきちんとした説明がまず求められる(関連記事:iPadで新聞・雑誌を読める「ビューン」、アクセス集中で開始直後にダウン)。

トラブルといえば、アップデートファイルの誤配信という珍しい事態も起こった。NTTドコモのスマートフォン「Xperia」向けのアップデートファイルが5月28日に誤って実際のユーザーの端末に配信されてしまった。6月の中旬に予定していた内容のものだという(関連:Xperia、更新ファイルの誤配信で6月中旬のアップデート計画が明るみに)。

当初NTTドコモとソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズは、アップデートしてしまったユーザーに対して故障扱いとしてNTTドコモのショップへの持ち込みを要請するアナウンスをした。しかし、週が明けて31日には、バージョンアップファイルが正式のものだったこととを確認し、そのまま利用を続けてほしいと方針を変更した。5月28日といえばiPadの発売日であり、Androidの存在を世に問うための誤配信といううがった見方もできそうだが、その後の対応を見ると本当になんらかのミスだったのだろう。

アップデートの内容は公式には明らかにされていない。ネット上では、日本語入力で「フリック入力」方式に対応したなどといった変更が報告されている。

次世代マルチメディア放送に向けて動きが活発化

2011年7月に地上アナログテレビ放送が終了することは、周知の事実になってきている。地上波のテレビ放送がデジタル化されるということは、現在利用しているVHFの周波数帯が空くことになる。この帯域の一部を、携帯端末向けの次世代マルチメディア放送に使うことが決まっている。高機能なワンセグのようなイメージのサービスである。そこに参入できる1社の選定のためのアピール合戦が加速している。

名乗りを上げているのはKDDI陣営とNTTドコモ陣営。米クアルコムの技術「メディアフロー」(MediaFLO)を採用するKDDI陣営に対して、NTTドコモ陣営は国産のISDB-Tmmという技術をかつぐ。グローバルな視点でのメリットを掲げるKDDI陣営と、ワンセグからの連続性などを標榜するNTTドコモ陣営とが、がっぷり四つになっている構図だ。

KDDIは、テレビ朝日などとともに6月3日に「メディアフロー放送サービス企画」を設立。この会社は、メディアフローによる放送サービスでコンテンツを提供する事業を展開する企画会社だ。既存のインフラ会社「メディアフロージャパン企画」と併せて、コンテンツ提供とインフラの両輪が揃うことをアピールする(関連記事:KDDI、テレビ朝日など、メディアフローによるコンテンツ配信に向けた企画会社を設立)。

一方のNTTドコモ陣営は、実験用の基地局設置にコマを進めた。6月4日に、NTTドコモやフジテレビなどが出資するマルチメディア放送が、6月4日に総務大臣にあてて特定基地局の開設に関する計画の認可申請をした(関連記事:次世代マルチメディア放送巡り戦線激化、NTTドコモ陣営が特定基地局の開設計画)。

今後、ますます1枠を争うアピール合戦は激化していきそうだ。しかし、携帯端末向けの放送サービスがビジネスとして成立するかは未知数。過去には「モバイル放送」がサービスを提供したが、2009年3月に撤退している。ワンセグは地上デジタル放送の一部の帯域を使い、ほとんどが地上波放送と内容が同じサイマル放送であることで成立している。新しい携帯端末向けの放送サービスが日の目を見ることになるのか、しばらく見守っていきたい。

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