▼AT&T

米国第2位の携帯通信事業者であるAT&Tが6月2日（米国時間）付で、データ通信の料金プランを大幅に変更すると発表したと、多くのオンラインメディアやブログが伝えている。

それらの報じたところによると、同社はこれまで月額30ドルで提供していた上限なしの「定額使い放題」メニューをなくし、代わりに2つの新たなメニューを用意するという。具体的には、月額15ドルで200MBまでの"DataPlus"と、月額25ドルで2GBの制限がある"DataPro"だが、それぞれ追加料金として前者では200MBあたり15ドル、後者では1GBあたり10ドルを支払うことで、基本のデータ量を超えた場合もサービスを使い続けることができるようになるなど、「使っただけ支払う」式の料金体系になっている。

今回の変更の狙いは、データトラフィック全体の約4割を占める上位2%程度のヘビーユーザーに対し、相応の負担を求めることで、他のユーザーがより快適に利用できるようにすることだという。

いっぽう、以前から各所で噂されていた新しいiPhone（ver. 4.0）に搭載されるティザリング機能に対応するべく、AT&TではDataProのオプションとして、ユーザーが月額20ドル（合計45ドル）を払えばスマートフォンを使ったティザリングが利用できるという追加メニューも用意する。

また、これまで月額30ドルで使い放題だったiPadについては、新規契約者に限って、スマートフォンと同じ月額25ドルで2GBの料金となるという。

AT&Tにはこれまで、ネットワークのつながりにくさや反応速度の遅さに関してユーザーから不満の声があがっていた。通常のスマートフォンに比べて何倍も通信量が多いiPhoneユーザーによるデータトラフィックの負荷が主な原因だが、iPhoneへの依存度が高い同社では、この問題解消のために今年だけで約20億ドルをインフラ整備につぎ込むと表明していた。ただし、増加の一途をたどるiPhoneユーザーに加え、新たにiPadユーザーのデータトラフィックも処理しなくてはならないことを考えると、さらに多くのデータのやりとりが見込まれるティザリング利用は簡単に認められそうもないとの見方もあった。

だが、今回のサービスメニュー変更によって「使った分だけ支払う」料金体系が主になることから、超ヘビーユーザーの利用量も抑制される可能性が高まるとみて、同社ではティザリングを認める決断を下したとみられる。

さらに、前日（6月1日）にWall Street Journal主催の「D8」カンファレンスに登場したアップル（Apple）のスティーブ・ジョブズ（Steve Jobs）CEOは、「いつになったらiPhoneでまともに電話をかけられるようになりますか」という聴衆からの質問に対し、「今後数ヶ月以内にAT&Tはこの問題を解決できるだろう」という見通しを明らかにしていた。

なお、7日に正式発表が噂される新型iPhoneには、ティザリング機能のほか、主にビデオ会議用の2つめのカメラも搭載されるといわれている。従来の「定額使い放題」を残したまま、これらの大量にデータをやりとりするアプリケーション（利用用途）に対応しようとすれば、明らかにAT&T側への負担が増す一方であり、そうした事態をさける意味でも今回の料金プラン変更が決まったものと思われる。

【参照情報】
・AT&T Announces New Lower-Priced Wireless Data Plans to Make Mobile Internet More Affordable to More People (プレスリリース）
・AT&T Cuts Some Data Plan Prices, Ends IPhone Unlimited Offer (Bloomberg)
・AT&T Will Finally Allow iPhone "Tethering" -- For $20 Extra A Month (Business Insider)
・AT&T makes sweeping changes to data plans, iPhone tethering coming at OS 4 launch (Engadget)
・D8 Video: Steve Jobs Holds Out Hope That AT&T Can Fix Its iPhone Problem (All Things Digital)
・iPadのトラフィック負荷に耐えられるか - さらなる混雑が懸念されるAT&Tの3G回線