スマートフォンラジオの人気で、米国のインターネットラジオ広告が好調
2010.07.15
Updated by WirelessWire News編集部 on July 15, 2010, 12:00 pm JST
2010.07.15
Updated by WirelessWire News編集部 on July 15, 2010, 12:00 pm JST
自動車で通勤するアメリカ人はラジオを聴く時間が長く、ラジオは未だに重要なエンターテインメント産業だが、ここにもインターネットの大きなうねりが押し寄せているようだ。Business Weekによると、ネットラジオ広告の売上規模の比率は今のところPC向けの方が多いが、2015年までにはiPhoneやBlackBerry、Androidデバイスなどのモバイル向けが増えてPC向けと拮抗するようになるという。
アメリカのインターネットラジオ局としては、登録ユーザ数5,800万人と言われるPandora(カリフォルニア州オークランド)があるが、うち3,000万人以上がモバイル利用となってパソコンを追い抜いたという。また、Appleは音楽サービスのLalaを2009年に買収、nuTsieを買収したHPやGoogleもスマートフォンによる音楽配信サービスを計画中と報道されるなど、音楽を中心に業界が過熱気味だ。
従来型地上波ラジオ局を800持っている米国最大手のClear Channel(テキサス州サンアントニオ)も今年1月にはモバイル向け広告の在庫をすべて売り切ったので、旧来ラジオで落ち込んでいた広告収入の激減という下降線から脱出する足がかりになると期待されている。2009年末、Clear ChannelのiPhoneとBlackBerryアプリケーション"iheartradio"の利用者は平均で1週間当たり120分、ラジオを聴いていたが、7月にはこれが137分に増えている。ちなみに旧来ラジオの聴取時間は1週間当たり2005年で10時間だったものが今年は4時間に激減しているとのこと。
パソコンでインターネットラジオを聴く人は、他の仕事を「マルチタスク」で行っている「ながら」族が多いが、スマートフォンで聴く人は番組の内容に集中している場合が多く、有料の音楽をダウンロード購入する比率も高い。しかも、移動中の方が広告のターゲットとしては価値が高いそうだ。オフィスや家からファストフード店やスーパーマーケットに顧客を連れ出すのは容易ではないが、移動中であれば不自然ではない。
スマートフォンはPND(パーソナルナビゲーションデバイス)としても期待されているので、冒頭に述べた自動車の中での利用も期待できる。ラジオ広告でURLや検索キーワードを連呼し、オフィスや自宅のパソコンで検索させるというスタイルから、クルマの中や移動中のどこかで認知から検索、購買行動まで完結するスタイルへのシフトも予想される。広告主にとっては、実に魅力的な媒体だ。
パソコンとモバイル向けのラジオ広告の売上は2009年で4億8000万ドル(1ドル=88.99円換算だと427億円余)だったが、2015年には2倍以上の10億ドル(約890億円)に膨れ上がるという(ちなみに2009年の日本のラジオ広告費は前年比11.6%減の1,370億円)。
ただし、インターネットラジオの経営は難しく、Pandoraでさえ収支均衡がやっとという状況。これは音楽使用料が旧来メディアに比べて高額なこと(売上の50から60%)が理由らしい。
なお、ヨーロッパではWi-FiでPCとつなぎ、電波の入らない屋内などで聴くためのネットラジオのハードウェアがよく売れるそうだ。
日本でのインターネットラジオといえば、サン電子がBibio wGateインターネットラジオチューナーを販売し、インターネットラジオメニューも提供していたが、ハードウェアは2006年に販売中止となり、サービスも来年3月に終了が決定している。
現在、スマートフォンで聞けるラジオとしては、TOKYO FMがiPhone向けにサイマル放送(地上波で放送している番組をそのまま配信する)を行うアプリケーションを実証実験として提供。また、東京・大阪のラジオ局13局が構成する「IPサイマルラジオ協議会」が、2010年3月15日から8月末までの予定で加盟局のラジオ放送をそのままIPネットワーク上でストリーム配信する「radiko」の実験放送を行っており、iPhone用のアプリケーションを提供している。いずれも広告については、地上波ラジオで放送されるものを原則としてそのまま放送しており、独自の広告販売は行っていない。
【参照情報】
・Smartphones Make Mobile Radio Sing - BusinessWeek
・HPがクラウド音楽サービス会社を買収へ - AppleやGoogleのライバルに - マイコミジャーナル
・iheartradio
・Pandoraに見るインターネット音楽ビジネスの厳しい経営構造-海賊サイトが流行るのも当然? - TechCrunch日本版
・Philipsのネットワーク・ミュージック・プレーヤー
・Bibioインターネットラジオメニュー サービス終了のお知らせ(サン電子)
・もっと気軽に、簡単に。TOKYO FMがiPhone・iPod touch・iPadで聴ける!(TOKYO FM)
・iPhone版「radiko.jp」(radiko公式アプリ)について(PDF)(IPサイマルラジオ協議会)
・日本の広告費(PDF)(電通)
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