英ボーダフォン(Vodafone)グループは、7月15日(現地時間)、「オープンソース・イノベーションへの貢献を示す」というタイトルのプレスリリースを自社サイトに掲載した。端的に言うと同社がナビゲーション事業から事実上撤退を表明したということのようだ。
同社が位置情報サービス(LBS(ロケーション・ベースド・サービス))のWayFinder社(スウェーデン)を2400万ユーロ(当時の1ユーロ=約128円換算では約30億7200万円)での買収を発表したのは2008年12月。通信キャリアのLBS事業参入として注目を集めたが、Google Maps Navigationなど無料のナビゲーション・サービスで事態は一変する。
今年5月にはすでに同社スポークスパーソンのAnna Cloke氏が「我々は他社(NokiaやGoogle)が無料で提供しているものに値段をつけることができなかった」とコメントしている。結局ボーダフォンは自社事業としての続行を諦め、WayFinderのコードをオープンソースにすると発表した。
当該プレスリリースには同社インターネット・サービス部門の役員であるPieter Knook氏の、「自社のコア事業としてターン・バイ・ターンのLBSのサービス開発を止める以上、我々の持つコードをオープンソースにするという決定は極めて自然なことに思われる」という言葉が掲載されている。「将来、さまざまなアプリケーションに使われるようになることを期待している」とも書かれている。
また、ボーダフォンは有償のWayFinder利用者に対しては返金する準備も進めているようだ。詳細は9月に発表されるようだが、返金の原資を含めてボーダフォンにとっては苦しい決断だったのではないだろうか。
この動きは、無料で攻勢をかけてくる競合に対して自社の資産をオープンソースにすることで、コミュニティによって防衛する新しい試みなのかも知れない。現にプレスリリース文にはボーダフォンのこの動きを歓迎し、新製品の開発を開始するというソフトウェアベンダーの声も紹介されている。
【報道発表資料】
・Vodafone Demonstrates Commitment to Open Source Innovation
【参照情報】
・Vodafone pulls out of the Navigation business - Rethink Wireless
・Vodafone Acquires Sweden's WayFinder For EURO 24 Million - TechCrunch
・Vodafone's Wayfinder is first victim of free smartphone navigation services - Engadget
・WayFinderのソースコード
・ガーミンのGPSスマートフォンが苦戦 - WirelessWire News
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