▼Leapfactor

9月8日（米国現地時間）、欧州最大規模のソフトウェア会社である独SAP AGのパートナーであり、シリコンバレーのスタートアップ企業、Leapfactorがクラウド型モバイル・アプリケーション・サービス「Leapfactor Mobile Enterprise Platform」を発表した。会計や顧客サポートなどの既存アプリケーションを簡単にモバイル環境で利用できるようになるという。1ユーザ当たり月額9.99ドル（1ドル＝83.90円換算では約839円）で、業務アプリケーションをAndroid、BlackBerry、iOSプラットフォームから利用可能になる。

同社CEOのLionel Carrasco氏はSAP関係の仕事をした経験から企業用業務アプリケーションの構築プロセスの煩雑さや、オンプレミスでのインフラストラクチャーやソフトウェアのインテグレーションに要する時間、導入にかかる時間、さらに、巨額の投資に見合わないリターンなどを見てきた。Carrasco氏はComputerworldのインタビューの中で「LeapFactorのプラットフォームはクラウドの中にあるので、新たにモバイルのミドルウェアを作る必要はない。多くの企業はすでにSOA（サービス指向アーキテクチャ）を導入しているだろうし、XMLにも対応しているはず」だから、ほとんどの企業は現在利用中のサービスをクラウドにアップするだけで（対応したアプリケーションを）利用できると語っている。

「Leapfactor Mobile Enterprise Platform」のユーザーは、クラウド上で無料で提供されるユーザインタフェースのライブラリを使って、モバイルアプリケーションを開発・展開できる。企業のバックエンドのシステムからXMLでデータを取り出し、暗号化したチャネルでクラウドに送ると、クラウドのリソースが動的に割り当てられてデータをユーザのモバイル端末に送るので、消費者向けアプリケーションと同じようなユーザインタフェースでビジネス情報を見せることができるという。

また、今回、「Business Alerts」（緊急情報から日常のメール、RSSなどの各種通知）、「Business Indicator」（売上などビジネス情報や指標のダッシュボード表示）、「Business Approval」（ワークフローのようなもの）という"マイクロ・アプリ"が3種類用意され、すぐに導入することができるとのこと。すでに5月から試験的にiPhone App Storeにて提供中で、ダウンロードは4,000件に達しているそうだ。

このようなアプローチは、携帯電話事業者にとって朗報だという記事もある。すでに固定系ではベライゾン・ビジネス（Verizon Business）もAT&Tも、アクセンチュア（Accenture）と提携し、法人向けにSAPを売り込んでいるようだが、モバイル利用の場合はPCよりもハードルが高い場合が多い。

すでに法人契約している携帯電話やスマートフォンは機種が多種多様で、特定の業務アプリケーションのために使うためには、既存端末をいったん捨てて、機種を揃えた上、情報システム部門がアプリケーションを新しい端末にインストールして配布するなど大きな手間とコストがかかる。Leapfactorのクラウド・サービスが額面通りに動くなら、機種依存度は低そうなので、まずこの点がクリアできそうだ。

また、携帯電話事業者はVPNなどセキュアな通信路を提供、あるいは、リモートワイプ（遠隔データ消去）などのサービスを提供することで、このサービスを補強することもできる。Leapfactor社としても、SAPのパートナーという立場から、さらに広い顧客ベースを持っている大手通信キャリアとの提携を狙いたいに違いない。

【参照情報】
・LEAPFACTOR BRINGS CLOUD-BASED MOBILITY PLATFORM TO ENTERPRISE CUSTOMERS [PDF] (Leapfactor社プレスリリース)
・Startup Sees Enterprise Apps as Telco Opportunity (Light Reading Mobile)
・SAP partner launches cloud-based mobile app service (Computerworld)
・Leapfrogging the Enterprise into Mobility via the Cloud (CTO Edge)
・Leapfactor: Platform Overview (Leapfactor社)