▼中国移动通信集团公司

中国の携帯電話市場が成熟しつつあるなか、世界最大の契約者数を誇るチャイナ・モバイル（China Mobile：中国移動） が新たな収益源を求めてデータ通信分野の取り組みを強化する姿勢を鮮明にしている。

中国では過去10年間に携帯電話の普及率が全人口の10%からの60%へと急増、この市場拡大に伴い、チャイナ・モバイルでは同期間の売上が約7倍に増加した。だが、携帯通信大手3社の契約者数が合計で8億人を超え、北京や上海などの大都市部では普及率が9割に達するなかで、チャイナ・モバイルの成長率も鈍化し、今年の売上は前年比7%増の約4840億元（720億ドル)にとどまるとの予測も出されている。この売上増加率は同社が1997年に香港市場に上場して以来最低の伸びで、アナリストらは来年以降も成長率はさらに低下するとみている。なお現在チャイナ・モバイルでは売上の約7割を音声通話サービスからあげているという。

また、同社と競合するチャイナ・ユニコム（China Unicom：中国聯通）は昨年、同市場でアップル（Apple）「iPhone」の販売を開始したが、それに対してチャイナ・モバイルは自社が採用する中国独自の3G規格「TD-SCDMA」にiPhoneが対応していないことから、アップル製品のヒットの恩恵にもあずかれずにいる。

▼中国联通

そうしたなか、チャイナ・モバイル会長の王建宙（Wang Jianzhou）氏は、天津で開催された世界経済フォーラム（World Economic Forum）でBloombergのインタビューに応え、今後大きな成長が期待できるデータ通信分野への重点シフトを進めるとともに、具体的な新規事業のひとつとして検索サービスを来年立ち上げる計画があることを明らかにした。

中国のネット検索市場は現在、最大手のバイドゥー（Baidu/百度）が約7割のシェアを押さえ、第2位のグーグル（Google - シェアは27%）に大きな差を付けている（iResearch調べ）。また、バイドゥーはモバイル検索市場でも全体の約3割超のシェアを持つ。ただし、チャイナ・モバイルでは「この市場は競争がとても激しいが、依然として大きな成長の余地がある」（王氏）とみている。

チャイナ・モバイルでは検索サービス市場への新規参入に際して、同社最大の強みである携帯電話端末の影響力を利用するほか、親会社のチャイナ・モバイル・コミュニケーションズ（China Mobile Communications Corp.）を通じて提携した国営新華社通信（Xinhua News Agency）との協力関係も利用する考えだという。

チャイナ・モバイルが計画する検索サービスは、PCと携帯端末の両方に向けたものとなるが、同社の販売する携帯端末からバイドゥーのサービスを閉め出すことは考えていないという。

また、チャイナ・モバイルは携帯端末を利用したモバイル・ペイメント分野にも大きな期待を寄せているという。この新サービス展開に向け、同社は今年に入って上海浦東＿発展銀行（Shanghai Pudong Development Bank）の株式の20%を約59億ドルで取得していた。この新サービスは現在重慶などで実証実験中が進んでおり、チャイナ・モバイルでは来年から国内の主要都市で展開していく予定だという。

さらに、チャイナ・モバイルでは、英ボーダフォン（Vodafone）と協力して、LTE対応の高速データ通信用カードの開発を進める意向も明らかにした。ボーダフォンは先頃、約10年にわたって保有していたチャイナ・モバイル株式（発行済み株式全体の3.2%）を約65億ドルで売却し、資本面では提携関係を解消していたが、両社は引き続き協力を続けていくとしていた。

iPhoneおよびiPadの取り扱い可能性について、王氏は「残念ながら、まだ契約に至っていない」ことを認めつつも、「われわれはこの課題について協議をつづけており、今年はじめには私自身がスティーブ・ジョブズ氏（アップルCEO）と会って話をした。交渉はいまも続いている。いずれ両社が受け入れ可能な解決策を見つけることができると考えている」とコメントしている。

【参照情報】
・China Mobile, Vodafone to Ally on High-Speed Wireless - Bloomberg Business Week
・China Mobile Turns to Internet Search for Growth, Challenging Leader Baidu - Bloomberg