先週(11/8〜12の週)、ニューヨークに5日間ほど滞在した。現地に着くと、さっそくマンハッタンの5番街と45th通りの角にある家電量販店ベストバイ(Best Buy)に脚を運んだ。地下1階がAVコーナーで、各社のテレビが並んでいる真中にグーグルTVが陳列されていた。
けっこうテレビ売り場に人はいたのだが、とくにグーグルTVが人気というわけでもなく、むしろひっそりと陳列されている印象だった。展示されていたのはソニー製の46インチモデルで、価格は1399ドル。目の前には、インターネット接続が可能なサムソン製のテレビ(同じく46インチ)が1099ドルで売られていた。
グーグルTVといえば、まるでテレビゲーム機のコントローラのようなそのリモコンには、90個ものボタンが詰め込まれている。テレビのリモコンとしては異例で、両手での操作を前提に設計されている。
▼Sony Internet TV with Google TV
ニューヨークで参加したあるカンファレンスでは、テレビ関連の技術開発を行うヒルクレスト・ラボ(Hillcrest Labs)社のCEOが、「グーグルTVのリモコンは複雑すぎる。われわれが手がけるモーション技術を使えば、ボタンの数を劇的に少なくできる」と述べていた。
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グーグルTVの魅力は、いろいろなサービスがひとつのスクリーン上に詰まっていること。たとえばTwitterができたり、ウェブサイトを閲覧できたりと、できることが多くて楽しいのだが、ただし本気で普及させようと思えば、あのリモコンを簡素化する必要がある。
サービスの数が増えるに従い、リモコンが複雑になってはユーザーが戸惑うばかりだ。そこで、リモコン操作を簡略化するには、ボタンやキーボードを押す代わりに、音声でチャンネルを切り替えたり、機器を傾けて電源をオフにするような工夫が必要だろう。
あるいは、リモコンさえも不要で、iPhoneやAndroidケータイのアプリでテレビを操作することも考えられる。すでにグーグル自身が、Android端末をリモコンとして使えるようにするためのアプリ開発計画を打ち出しているが、それ以外に選択肢となり得そうな候補も存在する。2010年のCESには、テレビのリモコン機能を持つiPhoneアプリを発売したNew Kinetixという企業が出展していた。
また、i.TVというベンチャー企業では、iPhoneで家庭のDVRを録画予約できるアプリを作っている。いまのところ、こうしたモバイル端末のアプリは、録画予約をしたり、レンタルDVDを予約するなどの機能に留まっている。ただし、グーグルTVは、外部企業がリモコンやアプリを作ることが可能。だから、たとえばソニー製純正リモコンの複雑さを目に付けたベンチャー企業が、機能を絞り込んだ面白いリモコンを出すか可能性も十分に考えられる。
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登録はこちら情報通信総合研究所主任研究員。1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年ケータイWOWOW設立、代表取締役就任。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号を取得。文系・理系に通じ、さらには国内外のメディア事情、コンテンツ産業に精通。著書に『ネットテレビの衝撃―20XX年のテレビビジネス』(東洋経済新報社)『明日のテレビ チャンネルが消える日』(朝日新書)がある。