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インド発、モバイル広告世界最大手のインモビに聞く

2010.12.21

Updated by Kazutaka Shimura on December 21, 2010, 17:00 pm JST

InMobi
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欧米で成長しているモバイルアプリ向け広告

モバイル広告市場は、日本のように携帯通信キャリアと広告代理店とが結びつくモデルと、アップル(Apple)やグーグル(Google)のように端末/OSと広告プラットフォームが垂直統合されているモデルの、2つの種類がある。

ところが、スマートフォンが普及し、またフェイスブック(Facebook)のように5億人以上の登録会員をもつウェブサービスが台頭してくると、こうした垂直統合型広告ビジネスだけでなく、グローバルに広告配信を可能にする広告代理店が登場する。

インドのインモビ(inMobi)はそうした新しい形の広告代理店のひとつで、モバイル広告の分野ではすでに世界最大手の1社となっている。同社は、インド、タイ、インドネシアでそれぞれ60%以上、また南アフリカでも40%のシェアを持つ。

そのインモビが、2010年4月に東京にも拠点を開設した。同社の現状と今後の展開について、インモビ・ジャパンの天野耕太マネージャーに話を聞いた。

Q:アプリ向け広告は成長しているか

A:欧米ではスマートフォン向けアプリ広告が伸びている。ただ、アプリ制作企業が広告主となって、違うアプリに広告を出している状態で、今後もっと違う業種の広告主も開拓する必要があるだろう。インドやアフリカの広告市場は、まだ日本の数年前と同じ状態でバナー広告が主流となっている。

Q. 国をまたがって広告を出すクライアントは増えているか

A:通信キャリアがインドネシアとマレーシアの両国向けに、文言だけ変えて出稿するケースがある。海外の広告主が日本向けに出稿するケースについては、すでにアフリカのある国の観光局が日本からの旅行客を増やそうと出稿を検討している話などもあるが、全体にまだこれからだ。

Q:アプリの盛り上がりは、広告代理店にとってプラスに働くのか

A:ウェブサイトよりも簡単に作れるアプリの開発意欲は高い。アプリ内でのコンテンツ課金も今後盛んになっていく。広告事業者からみると、サイトは検索されて偶然見に来てくれる可能性もあるが、アプリはアプリ内だけで行動が完結してしまうので、ビジネスがやりづらいという面もある。それとは別に、海外市場へ広告出稿したい企業へのコンサルティング需要もある。

Q:インモビの日本展開の展望を聞かせて欲しい

A:日本ではまだ広告媒体としてのアプリがそれほど多くない。また、アプリはメモやスケジュール管理など長く利用されるツール系のものと、ゲームなど利用期間が短いエンタメ系の2種類がある。日本では、ブランド力のあるサイトと長期的な関係を築きながら、アプリの開拓も進めている。

Q:海外市場に広告を出稿したい日本企業とのビジネスも可能ではないか

A:米国やインドなどへモバイル広告を出稿したい企業へ、その方法などをコンサルティングできると考えている。

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新たな付加価値を加えて、広告主に提案するアドネットワーク

Q:日本のモバイル広告市場をどう見ているか

A:コンテンツプロバイダー以外にも広告主の開拓が必要だ。そのためには、広告商品の価値を高めなければならない。ロングテールな広告枠を束ねているアドネットワークは、行動ターゲティングや、リターゲティング広告といった新たな手法で付加価値をつけ、販売している。

Q:インド発ならではの強みはなにか

A:モバイル分野は、新しいサービスや端末、技術が次々と生まれている。そして、そのたびに、広告配信の仕組みも変えていかなければならない。その点で、インモビはインド南部のバンガロールに本社があり、比較的低コストで開発が可能だ。

Q:バンガロールはIT企業が集積していると聞くが

A:バンガロールの本社ビルの周りには、ヤフー(Yahoo)やデル(Dell)のオフィスがある。それぞれのビルの真ん中に中庭があって、働く人たちが気軽に交流している。彼らは、自分のキャリアアップに貪欲で、条件の良い企業があれば、すぐ噂が広まり、いいエンジニアが集まる。

日本国内ではすでに約9000万台の携帯端末が普及しているが、この端末に向けたモバイル広告の市場規模は、2009年度に1031億円となった(電通調べ)。いまのところ、国境を超えた広告出稿の依頼は少ないが、これからどのような展開になるのか、とても興味深い。

【参照情報】
グローバルなモバイルベンチャー
1億7900万人にリーチするインドのInMobi、米モバイル広告市場へ本格進出

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志村 一隆(しむら・かずたか)

情報通信総合研究所主任研究員。1991年早稲田大学卒業、WOWOW入社。2001年ケータイWOWOW設立、代表取締役就任。2007年より情報通信総合研究所で、メディア、インターネットの海外動向の研究に従事。2000年エモリー大学でMBA、2005年高知工科大学で博士号を取得。文系・理系に通じ、さらには国内外のメディア事情、コンテンツ産業に精通。著書に『ネットテレビの衝撃―20XX年のテレビビジネス』(東洋経済新報社)『明日のテレビ チャンネルが消える日』(朝日新書)がある。