[Xi Watching Report #4]Xiの加入者計画に対する進捗確認/SBMのLTE戦略と700Mhz/900Mhz割当てに際しての与件事項の確認
2011.04.19
Updated by WirelessWire News編集部 on April 19, 2011, 12:00 pm JST
2011.04.19
Updated by WirelessWire News編集部 on April 19, 2011, 12:00 pm JST
前回は、「Xiの加入者計画に対する進捗確認、加入者動向から読み取ることが出来る需要の変化について考える」と題し、データカード市場の需要の変化について考察した。
今回は、前回に引き続き月次契約者数の動向を今年度Xi加入者計画5万件に対しての進捗状況のモニタリングをすると共に、少し古い話になるがMWC(Mobile World Congress)にて明らかになった、ソフトバンクモバイル(SBM)のLTEなど次世代戦略と今冬にも割当先が付与される見込みの、700Mhz/900Mhz帯の割当てに際しての与件事項について考察したい。
昨年12月24日のXiサービス開始時に公表された、2010年度のXiの加入者計画5万件については、概ねその半分程度しか達成されていない。エリアカバレッジがまだまだ不十分であることや、データカード2機種のみのスモールスタートであった事、「Xi Watching Report」の連載の中でも何度か触れた通り、計画に対しての進捗が芳しく無かった事を鑑みれば、当然の結果であったと言えよう。計画の5万件というのも、あくまでも努力目標で、きりの良い数字で公表したという事であったようだ。
いずれにせよ、今すぐ成果が出るようなものでも無く、今夏にはWi-Fiルータが、今冬にはスマートフォンがそれぞれLTEに対応し、発売されるという事を従前よりドコモは公表しているので、2011年度以降、ようやく本腰が入るといった所であろう。終わった2010年度は、努力目標の半分程度しか達成できなかったXiの加入者計画であるが、サービス開始後4ヶ月を経てデータカード契約の純増数に占めるXi比率は、月を追う毎に増えつつあるようだ。
▼Xi契約数、純増数、データカード契約純増数などの推移
上の表は、昨年12月以降のXiの加入者数、純増数、ドコモ全体のデータカード契約純増数の推移。「データカード契約純増数」については、ドコモから正規な公表が無い為、あくまでも概算・参考値になるのだが、筆者が主要なドコモの販売代理店などからの取材によりヒアリングしている所では、昨年12月〜今年の2月は概ね6万件、3月は8万件程度との事。このうち、昨年12月以降のXi純増数の構成比がどの程度なのか比較すると、12月:2.0%、1月:6.3%、2月:11.2%、3月:17.4%とデータカード契約純増への構成比が4-5%ずつ毎月上がっていることがわかる。販売店やユーザ認知が上がってきていることの証左と言えよう。
当該連載で何度か触れたとおり、データカード市場は、より汎用性の高いWi-Fiルータにシフトしつつある事、そもそもエリアカバレッジが不十分であることからすれば、構成比が上がっていることは意外である。今夏にも発売されるであろう、Wi-Fiルータなどの動向も引き続き注視していきたい。
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既に衆目の知るとおり、ソフトバンクはウィルコムの救済にあたり、現行PHSについてはそのまま会社更生法の適用を受けたウィルコムが事業を継続し、ウィルコムが元々事業認可を受けていた2.5Ghz帯で提供される次世代PHS「XGP」については、新たに設立された「ワイヤレスシティプランニング(WCP)」という会社に引き継がれた。
当該会社は、KDDI系のUQコミュニケーションズと似た会社で、3Gライセンス保有会社との出資関係は1/3未満とするという規定に従い、ソフトバンクの出資比率は1/3未満に抑えられたが、社長はソフトバンクの孫社長が兼務するほど、ソフトバンクにとっては戦略的位置付けの会社だ。
XGPや次世代XGPの「XGP2」は、同じTDD方式だが、TD-LTEとは別物。元々、2007年12月にウィルコムに2.5Ghz帯の免許付与がなされた際も、XGPで運用することが前提となって免許付与もなされている為、仮にWCPがTD-LTEでの運用をするには、総務省の承認を受けなければならないだろう。
但し、2.5Ghz帯の免許付与当時、免許付与希望社4社を比較審査した上で、当時のウィルコムとUQコミュニケーションズ(免許付与当時はワイヤレスブロードバンド企画)に免許付与がなされているのだが、免許付与の決め手となった審査項目 [PDF]は、基地局配置計画、電波の利用効率向上に向けた技術導入の計画、財務的基盤、MVNOの促進といった点であった。
結果論としてだが、その後ウィルコムは経営破たんし、「財務的基盤」については、審査の目が甘かったこととなったのだが、「基地局配置計画」、「電波の利用効率」、「MVNOの促進」などの点において、XGPやXGP2よりもTD-LTEの方がより優れているという評価や総務省の理解が得られれば、XGPから実質的にTD-LTEへの鞍替えというのも十分にありえる話であろう。
「Global TD-LTE Initiative」の設立発表が行われた、「LTE TDD/FDD International Summit」の講演でソフトバンクの孫社長は、「次世代XGPは100%TD-LTEと互換」と発言しているころからも、TD-LTEを採用する事が既に前提となっているものと考えられ、総務省もXGPからTD-LTEへの鞍替えはさして問題視しないのではないかと想定される。
いずれにせよ、現時点においてソフトバンクはLTEの導入時期について、明確な発言を控えているが、ドコモがLTEのみであるのに対し、KDDIは既にLTEを導入する計画でグループ会社のUQコミュニケーションズを通じてWi-Maxを提供。SBMは、LTEとTD-LTEといった様にKDDI・SBMの2社はLTE以外のネットワークを持つ形になる可能性が高い。
既に、KDDIは現行世代のCDMAとWi-Maxのデュアル機 HTC EVOを発表しているように、急拡大するパケットトラフィックのオフロード先としてのWi-Maxの活用に力を入れ始めており、LTE導入時も同様の事を考えるであろう。当然、SBMもXGP、XGP2(又は、TD-LTE)をオフロード先として活用する事を視野に入れているものと想定される。こうなると、LTE以外のオフロード先を持たないのがドコモだけとうことになる。
今冬には700Mhz/900Mhz帯の付与先が決定される見込みである。現在の所、MCAなどの既存利用者の他の周波数帯の移転費用として700Mhz/900Mhzでそれぞれ最大1,000億ずつ新たな利用者が拠出することとなっているが、これも震災復興財源として活用する視点から、ここに来て上限を設けない完全なオークション形式の導入についても検討すべきと一部民主党議員の声も聞こえ始めている(尤も、これについては、電波法の改正時期などの観点から難しいとの意見もあるが)。
元々、700Mhz/900Mhzについては、ドコモ・KDDIが従前より800Mhz帯の割当をうけていることから、SBMへの割当が有力視されている。ただし、仮に1,000億円の上限が撤廃されるとなると圧倒的に資金力でドコモの方が優るのは言うまでも無い。加えて、オフロード先を持たないことが比較審査上有利に働く可能性もあろう。一方、SBMの本音は1,000億円の上限のまま、ドコモ・KDDI・SBM・イーモバイルの4社が応募し、比較審査の上800HMzを持たない事を理由にSBMへ割り当てられるということを望んでいるのであろう。
現在、SBMは1.5Ghz帯(DC-HSDPA)/2GHz帯(W-CDMA→LTE)/1.9Ghz帯(ウィルコムPHS)/2.5Ghz帯(WCP・XGP)という帯域をグループ会社含め割当てられており、オフロード先も十分に確保しつるある事が比較審査上どのように働くかも焦点となりそうだ。
仮に、SBMへ700Mhz/900Mhzの割り当てがなされた際には、700Mhzもしくは900Mhzと2Ghzでグローバル端末と共に一気にLTEへ注力し、ウィルコムとWCPはほどほどに。700Mhz/900Mhzの割当がなされなかった場合は、2Ghzでグローバル端末機を収容する事を基本として、Wi-Fiルータなどとセットで販売し、WCPが運用する予定のTD-LTEにオフロードさせるという戦略へ一気に注力することになるのではないかと想定する。SBMの今後数年の動きは700Mhz/900Mhzの割当次第である程度見えてくることになりそうだ。
文・梶本 浩平(金融機関にてアナリストとして通信セクターを担当)
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