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[2011年第14週]大震災の中で3月は大幅な携帯純増、スマートフォン時代への施策が続々

2011.04.11

Updated by Naohisa Iwamoto on April 11, 2011, 10:00 am JST

大震災の傷跡はいまだに大きく残っているものの、少しずつ日常の活動が戻ってきた4月。通信業界でも静かながらも前向きの動きが活発化してきている。

春商戦は震災に負けず

201104111000-1.jpg2011年3月末の携帯電話・PHSの事業者別契約数が、電気通信事業者協会(TCA)から発表された。それによると、今年は携帯電話だけで130万契約を超す大きな純増を記録することになった。この数字は、TCAが公開している96年以降の統計で3番目に当たる月間純増数。例年3月は新入学シーズンなどにより需要が高まるが、スマートフォンシフトの効果は震災の影響を上回り、大きな純増へとつながった。UQコミュニケーションズとウィルコムも大幅な純増となったのもポイントだ(関連記事:3月の携帯純増は130万超の大記録、ドコモはソフトバンクに肉薄、UQとウィルコムも躍進)。

事業者の新しい動きもあった。日本通信は、SIMロック解除された端末での利用を想定したSIM製品「b-mobile Fair」(ビーモバイル・フェア)を4月15日に発売する。NTTドコモの3Gネットワークを使い、下り最大7.2Mbps、上り最大5.4Mbpsの高速通信ができる。同社のネット通販価格では、4カ月の有効期間内に1GBの通信が可能な「b-mobile Fair 1GB」が9800円、追加購入は1GBで8350円となる(関連記事:日本通信、SIMロック解除端末に向け1GB単位でチャージするSIM製品を発売)。

b-mobile Fairの「Fair」は公平を意味するという。「数%のヘビーユーザーがトラフィックの大半を占有している。この不平等な世界的な潮流を正していきたい」(日本通信の三田聖二社長)という思いから、このSIM製品の投入に至った。データ通信サービスに新しい潮流を起こせるか注目していきたい(関連記事:「42人で1人のヘビーユーザーを支えるデータ通信の現状を変えたい」--日本通信の三田社長)。

あれから時は流れ--スマートフォン2題

201104111000-2.jpgスマートフォンの話題は日々流れていく中で、発表から時間が経過した話題を2つ紹介する。

1つはKDDIの「IS03」(シャープ製)。Android 2.1を基本ソフトとして採用するスマートフォンであり、2010年10月の発表時点でAndroid 2.2への対応をうたっていた。このアップデートが現実のものとなり、4月14日の10時以降に現行のAndroid 2.1からAndroid 2.2へと更新が可能になる。Flash Player 10.1の利用やアプリケーション実行速度の向上、などが実現する。IS03単体ではアップデートできず、インターネットに接続したパソコンを介してアップデートを実行する点に注意が必要だ(関連記事:KDDI、「IS03」のAndroid 2.2へのアップデートを4月14日から実施)。

一方、時間の経過で状況が変わってしまったものもある。ソフトバンクモバイルは、スマートフォン「IDEOS X3 SoftBank 004HW」の発売を中止したと発表した。IDEOS X3 SoftBank 004HWはファーウェイ製の端末で、2010年11月に春商戦向けに製品発表していたもの。スマートフォンは進化のスピードが早く、次期モデルの発売タイミングが近づいてしまい、開発資源を次期モデルに集中させる(関連記事:ソフトバンク、発表済みの「IDEOS X3 SoftBank 004HW」の発売を中止)。

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スマートフォンの新しいサービスたち

2010年の春と2011年の春の大きな違いの1つにとして、携帯電話関連のサービスが完全にフィーチャーフォンからスマートフォンへと流れを変えたことが挙げられる。iPhoneと発売されたばかりのXperiaだけといっても過言ではなかった2010年4月のスマートフォン市場は、2011年4月には大きく様変わりした。端末が増えればサービスもシフトする流れが加速する。

201104111000-3.jpgNTTドコモは、法人向けのクラウドサービス「モバイルグループウェア」を4月25日に提供する。スマートフォンなどのモバイル端末を利用して社内情報を手軽に共有できる。具体的には、Webメール、スケジュール、ドキュメント管理、営業日報、住所録、ToDo・伝言メモといった機能を、スマートフォンなどで利用できる。クラウド型サービスであるため初期費用がかからないなど、短期間かつ少ないコスト負担で導入が可能だ(関連記事:NTTドコモ、スマートフォンで社内情報を共有できるクラウドサービスを提供)。

既存のクラウドサービスを活用するソリューションも登場した。日本技芸が提供するクラウド型のグループカレンダー「rakumoカレンダー2011」がそれ。米グーグルのGoogle Appsの主要機能である「Googleカレンダー」の拡張機能として提供する。Googleカレンダーでは不足しているグループ単位でのスケジュール閲覧・作成といった機能を付加し、クラウド型サービスでグループウエアを活用できるようになる(関連記事:日本技芸、スマートフォンに対応したGoogle Apps利用のグループカレンダー)。

パーソナルな利用での顧客満足度を向上させるための取り組みもある。KDDIは女性をターゲットにしたスマートフォン用のポータルサイト「au one Woman Style」を開設した。掃除、節約のコツや暮らしの手続きマニュアルなど、女性の生活に密着した情報を提供することで、女性のスマートフォン移行をサポートする(関連記事:KDDIが女性対象にAndroid端末向けのポータルサイトを開設)。

201104111000-4.jpg同じくKDDIは、Android端末で利用できるライブ壁紙サービスとして、「au Smart Sportsライブ壁紙(β版)」を開始した。「au Smart Sports Run&Walk」と連動した新サービスで、ワークアウトした距離に応じてライブ壁紙上で世界各地の名所を旅行できるようなエンターテインメント性を備える(関連記事:KDDI、楽しみながら歩行距離を確認できるAndroid向けライブ壁紙)。

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大きな余震でまたしても通信に影響が

201104111000-5.jpg2011年4月7日の23時32分ごろ、宮城県沖で発生した地震の影響で、通信事業者のサービスに影響が起こってしまった。東北関東大震災の被災地域に被害が重なるため、さらなる通信サービスの不通により復興や生活に影響を及ぼす可能性がありそうだ(関連記事:4月7日深夜の宮城県沖地震の影響で、通信網に再び影響が発生)。

支援の手は引き続き差し伸べられている。NTTPCコミュニケーションズ(以下NTTPC)とインターコミュニケーションズ(以下インターコム)は、東北地方太平洋沖地震及び長野北部地震の被災地にモバイルインターネット環境を提供する支援策を実施すると発表した。避難場所・施設が対象で、4月中旬から10月末日まで機器とサービスを無償で提供する(関連記事:NTTPCとインターコム、被災地にモバイルWi-Fiルーターを使ったネット接続環境を提供)。

NTTドコモは、大震災に伴って携帯電話が利用できなかった期間の基本使用料を返還すると発表(東日本大震災に伴う基本使用料等の返還について)。また被災地の利用者に対する携帯電話料金の支払い期限を再延長する施策も続々と報告されている(NTTドコモKDDIソフトバンクモバイル)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。