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[2011年第21週]Wireless Japanで新技術や新サービスが続々、携帯番号に「070」を検討

2011.05.30

Updated by Naohisa Iwamoto on May 30, 2011, 12:00 pm JST

5月も下旬になったこの週、ワイヤレス業界の必見イベント「Wireless Japan 2011」が開催された。展示会では最新の製品やサービス、今後を占う技術などの展示がところ狭しと並び、多くの来場者で賑わった。この週、総務省は携帯電話の番号が枯渇することに対して、「070」番号の利用などの検討を情報通信審議会に諮問した。

盛況だった「Wireless Japan 2011」

今年のWireless Japanは例年よりも2カ月近く早く、2011年5月25日〜27日に東京ビッグサイトで開催された。前週に発表されたばかりのスマートフォンやモバイルWi-Fiルーターなど夏モデル新製品がずらりと並び、感触を確かめようとする来場者が列をなしていた。人気はスマートフォンで、キャリアーやメーカーの新製品コーナーには、着飾った若い女性の姿などもチラホラと見られた。

201105301200-1.jpg新製品に加えて、先をにらんだ展示も多い。NTTドコモはLTEの次世代に当たる「LTE-Advanced」や、クラウドを利用した「通訳電話」などを展示。KDDIは2012年末に提供予定のLTEサービスに向けた進捗状況を示したり、ネットワークの効率化を図る「すきま通信」などの新しいアイデアも披露していた。NECと京セラは2画面のAndroid端末を展示し、スマートデバイスの新しい使い方への提案をアピールしていた(関連記事:最新端末に加えて次世代の通信技術やソリューションが目白押し--Wireless Japan 2011フォトレポート)。

また、NFCに関連した展示が見られたのも今年の特徴だ。VISAがNFCを使ったモバイル決済サービスの提供を発表したり、Googleがいよいよモバイル決済プラットフォームのお披露目を報じられるなど、このところ海外でもNFCをめぐる動きが慌ただしい。そうした中で、トッパン・フォームズやインターネットイニシアティブ(IIJ)がNFCソリューションを大々的にアピールしていた(関連記事:NFC普及を見込んだソリューション展示が多数)。

震災時の状況分析、パソコン利用者の今後の対策

201105301200-2.jpg携帯電話の位置登録情報などから震災時の人口動向がくっきりと見えてきた。「前週の同時刻には歌舞伎町や池袋、渋谷など限られた繁華街に人が集まっているのに、震災が発生した夜の1時には23区内に人がたくさんいることが分かります」-NTTドコモで現在研究中の「モバイル空間統計」で、震災当日の帰宅困難者の分布がはっきりと可視化された。Wireless Japanの基調講演でNTTドコモ代表取締役社長 山田隆持氏は、モバイル空間統計によって得られた貴重なデータを明らかにした(関連記事:「モバイル空間統計」で可視化された、東日本大震災時の帰宅困難者)。

ささやかだけれど、総体となれば大きく効果がありそうな取り組みも始まった。NECとNECパーソナルプロダクツが発表したピークシフト設定ツールの「ピークシフト機能」がそれ。設定した時間帯になると自動的にパソコンの電源供給をACアダプターから内蔵バッテリーに切り替える。これにより電量消費のピーク時には充電したバッテリーの電力でパソコンを動かすことで、ピーク時の節電につなげる。個人向けパソコン「LaVie」シリーズ向けに無償で提供する(関連記事:NEC、ピーク時間帯の消費電力を抑えるソフトをノートパソコン向けに提供)。

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増加する契約、トラフィックの様相

国内の人口に近づいた携帯電話の契約数だが、その伸びは止まっていない。これはM2Mなどの推進により、様々な機器などに携帯電話機能が搭載されてきたことが大きい。こうした状況で、現在のペースで携帯電話の加入が増え続けると、2014年2月に電話番号が不足すると想定される。このため総務省は「携帯電話の電話番号数の拡大に向けた電気通信番号に係る制度等の在り方」について情報通信審議会に諮問した。解決策として、現在はPHSに割り当てられている「070」番号の携帯電話への転用や、PHSと携帯電話の間での番号ポータビリティ導入などの検討が必要という(関連記事:総務省、携帯電話の番号不足にPHSの「070」利用などを検討)。

201105301200-3.jpgグローバルの携帯電話の利用状況のアナウンスもあった。日本エリクソンが報道関係者に向けたプレスセミナーの中で明らかにしたもの。世界でのHSPA+およびLTEの現状、無線ネットワークの進化などをエリクソンの施策とともに解説した。4G携帯電話方式のLTEについては、導入をコミットしている事業者は80カ国の208事業者に上る。すでに商用化した事業者は17事業者で、サービスエリアがカバーする人口は1.5億人にまで達しているという。

一方でモバイルのトラフィックに目を向けると、音声・データを含めたモバイルの全トラフィックは、2016年までの5年間で15倍に増加すると予測する。中でもモバイルデータのトラフィックは音声の10倍の速度で増加しており、全トラフィックの増加を牽引するとの見方だ(関連記事:2016年までに携帯のトラフィックは15倍--グローバルの通信事情を日本エリクソンが解説)。

SuicaのAndroid対応などスマホ向けサービスも進展

201105301200-4.jpg急速に普及しているスマートフォンに向けては、各種のサービスも対応を進めている。まず東日本旅客鉄道(JR東日本)は、おサイフケータイ対応のAndroid搭載スマートフォンに対して「モバイルSuica」のサービスを開始すると発表した。サービス開始は7月23日。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの各社のおサイフケータイで利用できるようになる。これまで、従来型の携帯電話でサービスを提供していたが、おサイフケータイ搭載のスマートフォンに対しては国内での販売開始から半年強の時差でサービスが始まることになった(関連記事:モバイルSuica、7月23日からAndroid搭載スマートフォンに対応)。

ソフトバンクモバイルとミクシィは、SoftBankスマートフォン向けにmixi連動アプリなどをセットにした「mixiセレクト」を提供する。mixiセレクトでは、mixiと連動したAndroid向けアプリと、mixi用にデザインしたホーム画面を提供する。月額使用料は無料で、2011年6月中旬以降に提供を始める(関連記事:ソフトバンクとミクシィ、「mixi」連動アプリなどをSoftBankスマートフォン向けに提供)。

通信と異なる業界からもスマートフォンで利用できるサービスが始まる。キヤノンマーケティングは、オンラインのフォトブックサービス「PHOTOPRESSO」(フォトプレッソ)を同日から一般公開したと発表した。PHOTOPRESSOはスマートフォンやソーシャルメディアと連携するフォトブックサービス。写真の登録や閲覧が無料でできる。撮影した自慢の写真をフォトブックにして、スマートフォンから手軽に見られるサービスとなり、遠隔地の親族に子どものアルバムを見せる1つの方法にもなりそうだ(関連記事:キヤノン、スマートフォンなどで閲覧できるフォトブック「PHOTOPRESSO」を一般に公開)。

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端末購入のサポートや法人向けのサービスも続々

端末に関連するニュースもあった。NTTドコモは、同社のタブレット端末を2台目以降として購入するユーザーに向けた割引サービス「月々サポートセット割」を6月1日から開始すると発表した。既存の契約に追加するタブレット端末で、最大24カ月にわたり月々の利用金額から機種ごとに決められた一定額を割引する。「月々サポートセット割」は、既存の月々サポートと合わせて適用になるため、タブレット端末をさらに購入しやすくなる(関連記事:NTTドコモ、タブレット端末の2台目以降の購入を支援する「月々サポートセット割」)。

夏モデルの新製品発表会を開催しなかったソフトバンクモバイルは、小出しに端末を発表している。5月23日には、Android 2.3をOSに採用したスマートフォン「Sweety SoftBank 003P」(以下003P)を2011年7月下旬に発売すると発表した。パナソニックモバイルコミュニケーションズ製で、4.3インチの大画面液晶を搭載する。003Pではメニューに相当し円形に操作する「タッチスピードセレクター」を、利き手に応じて左側、右側に動かせるようにした。また、キーパッドのサイズや位置を変更できる「フィットキー」で、片手での簡単操作を目指した(関連記事:ソフトバンク、利き手に併せてUIの位置を変えられる「Sweety SoftBank 003P」

スマートフォンの普及拡大により、広告分野でも動きが出てきた。mediba、KDDI、ノボットの3社は2011年5月27日、スマートフォン分野における広告需要の拡大に対応するために業務提携すると発表した。提携の1つの成果として、2011年5月末から広告の配信を開始する。最初の取り組みは、medibaとKDDIが共同で提供しているアドネットワークサービス「mediba ad ネットワーク スマートフォン」の広告を、ノボットが運営するアドネットワークサービス「AdMaker」の媒体に配信する(関連記事:スマホ向け広告需要の拡大に対応、medibaとKDDI、ノボットが提携)。

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モバイルデータ通信を活用した法人向けのサービスとして、NTTドコモはFOMA対応電子POP配信サービス「MobilePOPサービス」を提供する。FOMA網を利用して電子POP端末を遠隔で管理できるサービスで、POPのコンテンツ一斉配信などが可能になる。サービスは6月28日に開始する。きのこの販売などをてがけるホクトが導入を決めており、すぐに実際におめにかかることができそうだ(関連記事:NTTドコモ、FOMA網を経由して電子POPを配信するサービス)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。