[Xi Watching Report #8]Xiの加入者計画に対する月次進捗確認/KDDIのLTE立ち上げ本気度
2011.09.15
Updated by WirelessWire News編集部 on September 15, 2011, 18:30 pm JST
2011.09.15
Updated by WirelessWire News編集部 on September 15, 2011, 18:30 pm JST
今月のXi Watching Reportは、引き続きXiの月次契約動向と会社計画に対する進捗状況を確認すると共に、KDDIのLTE基地局設置状況から垣間見える、LTE立ち上げの本気度について考察したい。
先月分(7月の契約動向)のXiウォッチングレポートについては、お休みを頂戴したので、7月の契約動向と合わせてXiの最新契約動向について月次進捗を確認する。
▼表1:ドコモXi契約者数推移 ※クリックして拡大
(出所):会社資料、取材などから筆者作成
表1の通り、Xi純増数7月84,300件、8月90,500件と、6月までの状況からすると好調な純増獲得そのもの。6月末には待望のWi-Fiルータ型のXi端末が発売された事も好調の要因ではあろうが、常々お話を伺っているドコモ系販売代理店幹部の話では、Xiの全国販売が可能となった事に加え、引き続き高めの販売奨励金がドコモから支払われている事でセットとするPCやキャッシュバックキャンペーンなど売りやすい商材になっている、という事のようだ。
なお、8月末の契約者数は29万6,200件まで伸張。今年度の会社計画の102万6,000件まで、約73万件となっており、年度内残り7ヶ月間ほぼ現状のペースを維持すれば達成可能な状況となりつつある。現時点では、データカード2機種、Wi-Fiルータ1機種という端末ラインアップで約9万の純増を獲得出来る状況にまでになってきているが、今後バッファロー製のWi-Fiルータ型端末BF-01Cや、先日発表となった富士通とサムスン製のタブレット型に加え、冬には4機種のスマートフォン型が販売を控えている事を考慮すると、会社のXi加入者獲得計画も上ぶれて来る可能性も出てきたと考えられる。
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加入者獲得状況と合わせて、毎回確認しているLTE基地局の設置状況だが、7月末時点では3,100局程度まで、基地局数を増やしている。
▼表2:ドコモLTE基地局数推移 ※クリックして拡大
(出所):ドコモLTE基地局については総務省無線局情報検索にて電波形式「5M00X7W」を集計し、会社資料を参考にしながら、筆者作成
(注):ドコモ公表値と総務省無線局情報検索との差分は、ドコモ公表値は基地局設置場所数であり、免許数ではない事に起因すると想定している
今秋〜今冬のタブレット型やスマートフォン型の発売を控え、前倒しで準備しているということなのだろう。ドコモとしても、高トラヒックユーザについては、電波の利用効率が高いLTEに移行させることで3Gのトラヒックを一部オフロードしたいという意図もあるのであろう。今年度会社計画5,000局に対して、7月末時点で3,100局まで基地局設置が進んでおり、かなりハイペースだといえる。
しかし、このLTE基地局設置状況がハイペースであるのは、単にトラヒック対策だけでなく、次ぎに触れる、KDDIのLTEの本気度合いをドコモも十分に察知しているからではないか?というのが筆者の見方だ。
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予てよりKDDIは、2012年12月にLTEをサービス開始するとしている。一昨年の1.5Ghz帯の周波数付与時に総務省に提出したLTE基地局の開設計画でも、2011年11月に運用開始し、2012年12月にサービス開始として提出しており、ドコモが昨年の12月のサービス開始した所から起算すると2年遅れの導入ということとなる。現時点でも1年以上の先の話であるので、まだ「気が早い」と言われそうだが、総務省に提出している免許申請状況から、KDDIのLTE立ち上げの本気度が垣間見えてきた。
▼表3:KDDIのLTE基地局免許申請状況
(出所):総務省無線局情報検索にて電波形式「10M0X7W」を集計し、会社資料を参考にしながら、筆者作成
表3は、KDDIのLTE基地局の免許申請状況。本年4月より、免許申請を開始し7月末時点では既に800Mhz・1.5Ghz合わせて660局程度。一昨年のLTE基地局開設計画では2011年11月から運用開始との事であるので、現状は免許申請のみ行い、基地局の建設に着手し始めたばかりということだろうが、ドコモのLTE基地局の推移(表2)と比較すると、ドコモが昨年末にLTEを開始した際は690局程度の基地局数であったことを鑑みると、1年3ヶ月以上先のサービス開始にしては相当早い準備を進めているという印象だ。
また、4月〜7月の基地局数の月次推移を見ると基地局の月当たりの増加数も、140〜200局へとペースが増えている。仮に今後200局ずつ来年12月まで設置したとすると、3,000局程度の基地局数でスタートすることとなり、明らかにドコモのサービス開始時より基地局数が多い。一昨年の開設計画では、2014年度末に29,361局設置すると計画を出している事から、恐らくは、来年12月時点では3,000局以上、10,000局程度の開設をターゲットとしているのではないかと推察する。
ドコモは昨年12月のサービス開始は当初東京・名古屋・大阪の大都市圏のみに絞り、その後本年7月から全国政令指定都市クラスの都市でサービス開始したが、KDDIは来年12月のサービスは全国で一斉にサービス開始することを狙っていると見て間違い無さそうだ。来年の12月時点でのドコモのカバレッジが今以上に拡大している事を考えれば当然といえるかもしれないが、KDDIとしてもスタートダッシュを図るべく準備している印象だ。
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更に、それを裏付けるのがKDDIの免許申請で見ることが出来る、KDDIのLTEのスペックだ。
▼図1:KDDIのLTE基地局
出所:総務省
図1は、総務省の無線局情報検索で検索可能なKDDIの千代田区内にある基地局の免許申請状況。わかり難いかも知れないが、図内の「電波の型式」の項目をご覧頂きたい。「10M0X7W」とあるが、「10M」とは占有帯域幅を示すもの。つまり、10Mhz幅で電波を占有する事を意味する。
これがどういう意味を持つのか、上述の基地局全てが10Mhz幅で免許申請されているのだが、表4を見ながら、LTEにおける帯域占有幅とスループットの理論値について簡単に解説したい。
▼表4:LTEのU/Eカテゴリとスループットの理論値
(出所):会社資料、3GPP資料を基に筆者作成
表4は、3GPPで定めるLTEの端末(user equipmentの略U/E)カテゴリと帯域幅を示したもの。現状、ドコモは2Ghz帯の5Mhz幅(及び一部エリアでは10Mhz幅)でLTEを提供しており、U/Eカテゴリ3の端末を提供している。従って、スループットの理論値は37.5Mbps〜75Mbpsとなっている。
KDDIは、現状免許申請を10Mhz幅で行なっているためカテゴリ3の端末であれば、全国どこでも75Mbpsの理論値、カテゴリ5の端末であれば150Mbpsを目指す事が可能な状況となる。
ドコモも1.5Ghz帯では15Mhz幅(2014年3月まで東名阪は5Mhz幅)、1.7Ghz帯では15Mhz幅(東名阪バンド)の帯域を確保しており、いずれもLTEの運用に割当てる方針を示している事から、15Mhz幅であればカテゴリ3で100Mbps、カテゴリ5では225Mbpsのスループットが可能。KDDIがドコモのスループットを上回る事は無さそうだが、ドコモの1.5Ghz・1.7Ghz帯の基地局設置の状況次第では、地域によってはドコモより早い、KDDIのLTEとなる可能性すらある。
現状、来年12月の端末ラインナップは全くわからないが、少なくとも基地局免許申請状況から見て、KDDIのLTEはかなり本気で立ち上げる意思を感じること、保有帯域幅からドコモも基地局設置次第では十分に100Mbps超を目指せる状況であることが、カタログスペックからは読み取れる。来年12月のKDDIのLTE開始と共に、ドコモ-KDDI間のLTE競争が始まるが、KDDIの本気度から、先に始めたドコモも普及に向け相当力を入れてくるであろう。来年12月以降、日本のLTE市場が一気に立ち上がるかもしれない。
文・梶本 浩平(金融機関にてアナリストとして通信セクターを担当)
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