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[2011年第38〜39週]新作続々でスマホシフトが鮮明に

2011.10.02

Updated by Naohisa Iwamoto on October 2, 2011, 10:30 am JST

10月4日から開催される「CEATEC JAPAN 2011」を前に、各社が新端末や新サービスなどを軒並み発表している。まずは新端末の発表からチェックしていこう。

秋冬の新製品はスマホが中心

201110031030-1.jpgKDDIは2011年秋冬発売の新製品を9月26日に発表した。スマートフォン「IS series」6機種、フィーチャーフォン3機種、タブレット1機種、データ通信端末1機種のラインアップを用意する。「未来は選べる」をコンセプトに、デュアルコアCPU搭載4機種、WiMAX搭載6機種を用意する。また、2011年10月分から2012年1月分まで、「+WiMAX」利用料月額525円を無料にするキャンペーンを実施する(関連記事:KDDIの2011年秋冬モデルはWiMAX対応が主流に、iPhoneについては「ノーコメント」)。

次いでソフトバンクモバイルは9月29日に、2011年冬〜2012年の商戦に向けた新製品12機種を発表した。スマートフォンが9機種と、フィーチャーフォン、データ通信端末、ホームセキュリティ端末がそれぞれ1機種である。スマートフォンのうち4機種が下り最大21Mbpsの「ULTRA SPEED」に対応、データ通信端末は下り最大76Mbpsの高速通信が可能な「SoftBank 4G」に対応する(関連記事:ソフトバンクモバイル、下り最大21M対応のスマホ4機種など、冬春モデル12機種を発表)。

新製品の発表を見ると、スマートフォンへのシフトが加速している。フィーチャーフォンはKDDIが3機種、ソフトバンクモバイルにいたっては1機種しか新作がない。NTTドコモもフィーチャーフォンの上位機種を廃止してスマートフォンにシフトするといった報道がなされている。先進ユーザーから一般ユーザーへとスマートフォン需要が広がり、それに対応する施策なのだろう。とは言え、フィーチャーフォンの需要は簡単にはなくならない。やっと携帯電話を使えるようになった高齢者などに、また新しいユーザーインタフェースを強要することになるのはユーザー軽視につながる。簡単にフィーチャーフォンの火を絶やしてはいけない。

201110031030-2.jpg一方、ウィルコムは携帯電話事業者の発表に先立つ9月21日、同社が提供するPHSサービスなどの端末の新製品10機種を発表した。個人向けのPHS電話機5機種のほか、新コンセプトの電話機3機種、下り最大42Mbpsの3Gデータ通信サービス「ULTRA SPEED」対応端末1機種、事業所用コードレスシステム対応の法人向け端末1機種となる。家庭の固定電話機のような「イエデンワ」など個性的な端末も多い。また、スマートフォンへの再参入も明らかにしている(関連記事:ウィルコム、2011年秋冬モデルの10機種29色を一挙に発表)。

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3G機能付きReader、1GB3100円のバリエーション

秋冬の新製品のほかにも端末の発表があった。ソニーは、電子書籍端末「Reader」の新機種を2モデル発売する。実売価格が2万6000円前後の「3G+Wi-Fiモデル」と、同2万円前後の「Wi-Fiモデルで」で、いずれも6型の電子ペーパーを搭載する。「3G+Wi-Fiモデル」は、KDDI(au)の3G携帯電話ネットワークを利用し、2年間無料でReader Storeを利用できるプランなどを用意する(報道発表資料:3GおよびWi-Fiに対応し、いつでもどこでも電子書籍を購入できる電子書籍リーダー"Reader" 2機種発売)。

201110031030-3.jpg日本通信は、1GBのモバイルデータ通信を30日の有効期間内に3100円で利用できる「1GB定額3100円」の提供形態を相次いで拡大する発表を行っている。1つは音声サービスを付加した「talking 1GB定額」、もう1つはiPhoneなどのスマートフォンとセットで提供する「スマートWiFiパッケージ」である(関連記事:日本通信、「1GB定額3100円」を音声通信付きやiPhone 4セットなどに展開)。

未来へ向けての技術もあった。KDDIは新たに開発した「音声振動素子」を受話口(レシーバー)に搭載したスマートフォンを試作した。音声振動素子は、耳に接触させることで、空気の振動を介さずに音の情報を内耳に伝えるもの。空気の振動を使わないため、外部環境の「音」に左右されずにクリアーな音を聞き取ることができるほか、防水性能や小型化の実現にも役立つ(関連記事:KDDI、イヤホンや耳栓をしたままでも通話できる音声振動レシーバー搭載スマホを試作)。

最大110Mbpsの新サービス、山陽新幹線のエリア化

201110031030-4.jpg高速データ通信が可能な新サービスとして、Wireless City Planningは下り最大110Mbpsの高速ネットワークサービスを2011年11月1日に開始する。下り最大110Mbps、上り最大15Mbpsのベストエフォートサービスとして提供する。11月1日時点のサービス提供エリアは、東京、大阪、福岡の一部地域。Wireless City Planningは、ウィルコムからXGP事業を継承したソフトバンクグループの会社である(関連記事:Wireless City Planning、下り最大110Mbpsの「AXGP」を11月1日に開始)。

既存の携帯電話のエリア拡大の話題もある。NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は2011年9月27日、岡山駅と三原駅の間の山陽新幹線のトンネル内で携帯電話を利用できるようにすると発表した。西日本旅客鉄道(JR西日本)と共同でエリア整備を進めているもので、今回の施策により新大阪〜三原のトンネル内で携帯電話が利用できるようになる(関連記事:山陽新幹線の岡山〜三原間のトンネルが携帯電話のエリアに)。

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スマホ向けのサービスも続々

NTTコミュニケーションズは、IP電話サービス「050 plus」の対象OSと端末を拡大し、Androidスマートフォンやパソコンからも利用できるようにした。これまで050 plusはiPhoneで利用できるアプリを提供し、サービスを行っていた。050 plusは月額315円の基本料金を支払うことで、スマートフォンなどからの通話料金を安くできるIP電話サービスだ(関連記事:NTTコムのIP電話サービス「050 plus」、AndroidとPCに対象を拡大)。

201110031030-5.jpgソフトバンクモバイルは、BBソフトサービスが開発したAndroid搭載スマートフォン向けオンライン詐欺対策ソフトを利用したサービスを10月下旬以降に提供する。スマートフォンからWebサイトを閲覧するときに、リスクが高いフィッシング詐欺サイトやワンクリック詐欺サイトを検知する。ソフトは、ソフトバンクグループのBBソフトサービスが、セキュアブレインが開発したWindows版の「Internet SagiWall」の技術をベースにして開発した(関連記事:ソフトバンク、スマートフォン向けのオンライン詐欺対策ソフトを導入)。

サッカーファンに朗報。TVバンクとスカパーJSATは、Android端末で「2011Jリーグディビジョン1」のハイライト動画を楽しめるアプリ「まるごとJリーグ動画」の提供を開始し、サービスを開始したと発表した。J1リーグの全試合のハイライトシーンやゴールシーンなど、シーズン中に1000本以上もの動画を視聴できる。9月26日にAndroid端末向けのアプリを提供し、iPhone向けのアプリも近日提供する予定である(関連記事:TVバンク、AndroidでJ1リーグ全試合のハイライト動画を楽しめるサービス)。

スマホのトラフィックを公衆無線LANサービスへ

201110031030-6.jpgスマートフォンの普及に従い、3G回線を流れるトラフィックが急増している。各携帯電話事業者は、トラフィックのオフロード先として、公衆無線LANサービスの活用を推進している。NTTドコモは、スマートフォンなどで公衆無線LANサービス「Mzone」を利用する際の月額料金の315円を無料にするキャンペーンを実施する。2011年10月1日から2013年3月31日まで。対象となるサービスは、「spモード」「mopera U」「ビジネスmoperaインターネット」「ブラックベリーサービス」の各ISPサービスのオプションサービスである「公衆無線LANコース」。いずれも月額料金は315円だが、キャンペーン期間中は無料で利用できるようになる。無料化により公衆無線LANサービスの利用推進を図る(関連記事:NTTドコモ、スマホの公衆無線LAN「Mzone」利用を無料にするキャンペーン)。

ソフトバンクモバイルは、公衆無線LANサービスの「ソフトバンクWi-Fiスポット」のアクセスポイントが10万カ所を突破したとアナウンスした。飲食店やカフェ、ファーストフード店を中心としてエリア拡大を進めていた。スマートフォンを主な対象とした公衆無線LANサービスでは、NTTドコモやKDDIが10万局を目標にした施策を発表していたが、ソフトバンクモバイルは数値目標を明言しておらず、今回いきなり他社の目標値に達したことを発表することになった(報道発表資料:「ソフトバンクWi-Fiスポット」、10万カ所を突破

フィーチャーフォンでもWi-Fiを使ったテザリングができるサービスを、ソニーマーケティングが提供する。auの3G回線を利用してWi-Fi機器がインターネット接続できるようになる「アタッチWi-Fi」で、11月下旬から始まる。au携帯電話にWi-Fi対応アクセサリー「NEX-fi/S」を装着するだけで利用できる。月額1575円の料金で、月間1GBまでのデータ通信は下り最大9.2Mbpsで利用できる。月間1GBを超えた分に関しては、128kbpsの速度制限がかかるが、利用は継続できる(関連記事:au携帯電話で月額1575円のテザリング、ソニーが「アタッチWi-Fi」サービス)。

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グローバル展開への模索

201110031030-7.jpgNTTドコモは、英ボーダフォンと事業提携を開始すると発表した。多国籍企業向けの法人営業を中心としたもので、12月1日を目標に提携を開始する。事業提携によりNTTドコモは、ボーダフォングループの通信事業者と連携して、多国籍企業に向けた通信料金やサービスを提案できるようになる(関連記事:NTTドコモ、ボーダフォンと多国籍企業向けの法人営業で事業提携)。

シャープは、フランステレコム(France Telecom-Orange)向けにスマートフォン「AQUOS PHONE SH80F」を製品化し、納入を開始することを発表した。10月からフランスで販売を開始する。フランステレコムはオレンジ(Orange)のブランドで欧州、インド、中東、アフリカなどで通信サービスを展開しており、フランスの携帯電話市場ではトップシェアを持つ(関連記事:「AQUOS PHONE」がオレンジで採用、10月からフランスで販売開始)。

法人とスマートデバイスの接近

201110031030-8.jpg全日本空輸(ANA)はグループの客室乗務員全員にiPadを配布し、電子マニュアルなどの利用を始める。導入台数は6000台に上る。ANAではiPadを利用し、電子化した乗務マニュアルによる管理業務改善や、自己学習形式の教育訓練の導入を進める(関連記事:ANA、電子マニュアルなどの利用で全客室乗務員に6000台のiPad導入)。

日本技芸は、企業のワークフローを処理するソリューション「rakumoワークフロー」にiPad版を追加したと発表した。ワークフローの承認者などがiPadを持ち運んで利用することで、業務の滞りを低減できる。rakumoワークフローを利用中のユーザーは、追加費用なしで利用できる(関連記事:日本技芸、iPadでワークフローの承認・認証ができるソリューション)。

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災害・トラブルへの対応

UQコミュニケーションズは、2011年9月21日の17時45分から続いていた東日本エリアでの通信障害が、9月22日の13時ごろに解消したと発表した。センター設備の障害により、広域でWiMAXサービスが利用できない状況が続いていた(関連記事:UQ、東日本エリアのWiMAXサービスの通信障害から復旧)。

UQコミュニケーションズでは、その後に障害発生の経緯を公表した。台風15号接近による交通機関の乱れなどから通常を超えるアクセスが発生し、それにともないセンター設備が高負荷状態になったところで、内在するバグによりセンターが停止したという(報道発表資料:2011年9月21日に発生した東日本におけるネットワーク障害に関する経緯と対処について)。

KDDIは2011年9月30日、「W52CA」、「EXILIMケータイW53CA」 (カシオ計算機製)、「Mobile Hi-Vision CAM Wooo (HIY01)」 (日立コンシューマエレクトロニクス製) の電池パックが発煙・溶融に至る危険性があることを発表した。対策を施した電池パックと交換する(関連記事:KDDI、au3機種の電池パックを発煙・溶融の恐れから交換へ)。

NTTドコモは、東日本大震災後の大規模災害への対策として掲げていた「大ゾーン基地局」を、全国で初めて名古屋市と岐阜市に設置した。大ゾーン基地局は、半径約7kmの広い範囲をカバーし、災害時に周囲の基地局が利用できなくなった際に通信を肩代わりする。2011年内に全国約100カ所の設置を予定しており、その第一弾となる(報道発表資料:大ゾーン基地局を設置)。

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。