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「米国の問題は帯域幅自体の不足ではない」とシティグループ・アナリスト - CTIAは反発

2011.10.03

Updated by WirelessWire News編集部 on October 3, 2011, 13:33 pm JST

米国では以前から、急激な利用拡大が見込まれるモバイル・ブロードバンドの普及に対応できるだけの帯域幅がないとの声が業界関係者などの間から上がっているが、先ごろシティグループに属する業界アナリストが、こうした主張を否定するかのような内容をふくむレポートを発表し、議論を呼んでいるという。

"Wireless Data: Supply and Demand Spectrum Control, Not Availability, Is the Real Constraint"というタイトルのこのレポートをまとめたジェイソン・バジネット(Jason Bazinet)とマイケル・ロリンズ(Michael Rollins)の両氏は、そのなかで「米国は周波数帯不足の問題に直面してはいないと考える」と記し、現状の問題について、実際には十分な周波数帯がありながら、その多くが4G網構築を計画していない企業や、計画はあっても資金面の問題などで実現が難しい企業の手に握られていること、ならびに大手事業者各社では既存の2Gおよび3Gサービス用に多くの帯域を取られすぎ、これらを4G向けに転換するのが容易ではないことの2つの理由を挙げているという。

米市場では、AT&Tが計画中のT-モバイル(T-Mobile USA)買収に関して、T-モバイルのもつ周波数帯が自社の4Gネットワーク全国展開に欠かせないとの理由を挙げており、また米連邦通信委員会(FCC)でもオバマ政権の意向を受ける形で少なくとも500MHz分の帯域を新たにモバイル・ブロードバンド用に振り向けるとする計画を打ち出している。また業界団体のCTIAでも、こうした潜在的な不足の懸念を理由に、アナログテレビ用として放送事業者に与えられていた周波数帯の再割当に向けたロビー活動を続けてきており、テレビ放送事業者などからの反発を招いている。

シティグループのレポートによると、米国の携帯通信事業者は現在、あわせて約538MHz分の周波数帯をすでに手にしているものの、そのなかで実際に利用されているのは192MHzにすぎず、さらにこのうちの147MHzはすでに2G、3G、3.5Gのサービスに割り当てられてしまっているという。

いっぽう未活用の周波数帯については、4G網計画中のライトスクウェアード(LightSquared)が59MHz、有料衛星テレビ放送のディッシュ・ネットワーク(Dish Network)が47MHzをそれぞれ保有、またあわせて133MHzをもつクリアワイア(Clearwire)でも全国民の42%しかカバーできていないという。

こうした数字について、CTIA幹部のクリス・ガットマン・マッケイブ(Chris-Guttman-McCabe)氏は、いずれも「聞き覚えのないもの」とし、同レポートをまとめたアナリストらの調査方法などに疑問を呈している。

なお、米市場第1位のベライゾン・ワイアレス(Verizon Wireless)では2015年までの需要に対応できる周波数帯を確保しているものの、それ以降については現在2G/3G用に割り当てている帯域を4G LTE向けに転用していく見通しだと、同社親会社ベライゾン・コミュニケーションズ(Verizon Communications)のローウェル・マカダム(Lowell McAdam)は先ごろ語っていたという。シティグループのレポートによれば、携帯通信事業者は2G/3Gから4G LTEに周波数帯を転用することで、その利用効率を最大で約700%向上できるとCNETは記している。

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[出典:ReadWriteWeb]

【参照情報】
Wireless spectrum shortage? What spectrum shortage? - CNET
Citigroup Questions If US Spectrum Shortage Exists - PCWorld
Analysts: There's No Spectrum Shortage - ReadWriteWeb
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