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「iPhone 4S」先行レビューにみる「Siri」と「内蔵カメラ」(編集担当メモ)

2011.10.12

Updated by WirelessWire News編集部 on October 12, 2011, 21:46 pm JST

14日(米国時間)に迫った「iPhone 4S」の発売開始を控え、アップル(Apple)が一部のニュース媒体やブログなどに貸し出していた同端末についてのレビュー記事が公開され始めている。今回は、以前「Galaxy Tab」の時にも触れたWall Street Journalのウォルト・モスバーグ(Walt Mossberg)、New York Timesのデビッド・ポーグ(David Pogue)の両看板コラムニストに加え、新たにDaring Fireballブログのジョン・グルーバー(John Gruber)氏の記事からも、気になった点を紹介する。

まず3氏の記事に共通しているのは、目玉機能のひとつとされるパーソナルアシスタント機能「Siri」の取り扱いの大きさ。日常生活で英語(または仏語・独語)を使わないわれわれ日本人にはちょっと悔しいところだが、それでワクワクさせられる部分があることに間違いはなさそうだ。

このSiriについて、「アップルの発表イベントで、スコット・フォーストル(Scott Forstall Forstall)iOS担当SVPがやってみせたことは一通り試したが、ぜんぶ公約通りにうまくいった」というジョン・グルーバー氏は、なかなかユニークな例を記している。たとえば、「次に散髪に行くのはいつだっけ」("When is my next haircut?")と訊ねると、Siriは今月の予定が入っていると答えた。つぎに「最後に髪を切ったのはいつっだったっけ?」("When was my last haircut?")と訊くと、ひと月ほど前に入れていた予定のことを教えてくれた。「ローリングストーンズの曲をなにかかけて」("Play something by the Rolling Stones")というと、勝手にストーンズの曲を選んで再生した。曲の途中で、「ストーンズの"サムガールズ"をかけて」("Play 'Some Girls' by the Rolling Stones")というと、今度はその曲を流し始めた、など。

この後同氏は、Siriとの実際のやりとりの模様を文字にしている:

自分:「朝9時にアラームをかけて」("Set an alarm for 9 AM.")
Siri:「朝9時にセットしました」("It's set for 9 AM.")
自分:「朝10時に変更して」("Change that to 10 AM.")
Siri:「アラームを明日朝10時に変更しました」("I changed your alarm to 10 AM tomorrow.")
自分:「アラームを取り消して」("Cancel that alarm.")
Siri:「朝10時のアラームを削除しました」( "I deleted your 10 AM alarm.")
自分:「どうもありがとう」("Thank you, Siri.")
Siri:「あなたの意のままに」("Your wish is my command.")

Siriの「賢さ」を示す同様の例は、デビッド・ポーグ氏の記事中にも見られる。同氏は、グルーバー氏が記しているような基本的な用例を挙げた上で、さらに「今週末のツーソン(アリゾナ州)の天気はどうだろうね」(What's the weather going to be like in Tucson this weekend?")「今夜傘は要るかね」("Will I need an umbrella tonight?")といった質問にもSiriがきちんと答えたと記している。なお、おとぼけが売り物の同氏は「人生の意味って何だろうね」("What is the meaning of life?")と訊ねたところ、Siriがいろいろな面白い答えを返してきた、とも述べている。

また、ポーグ氏はSiriの受け答えぶりにも印象づけられたようで、自分が「パトリックとの約束を木曜の3時に入れて」("Make an appointment with Patrick for Thursday at 3.")というと、「今度の木曜はボストン出張があり、終日予定が埋まっています。とりあえず予定しておきましょうか」("Note that you already have an all-day appointment about 'Boston Trip' for this Thursday. Shall I schedule this anyway?")とSiriが答えたとし、「まったく信じられない」と書いている。

もっともそんなSiriも「スタートレックにでてくるコンピュータほど賢くはない」とボーグ氏は続け、たとえば「AT&Tで使える通話時間は、今月あとどれくらい残っていたっけ」("How many AT&T minutes do I have left this month?")とか、「ケチャップのシミはどうやったらとれる」("How do you get ketchup stains out?" )といっても、「済まなさそうに黙っているだけ」と書いている。また、もっと真面目に音声で「機内モード」に切り替えられたり、話しかけるだけで「Angry birds」アプリを立ち上げられたりしたらもっといいのにとも指摘している。

いっぽう、Daring Fireballのグルーバー氏は開発者の視点から、このSiriがiOSの「第2のインターフェイスである」と指摘。これまでのタッチスクリーン操作のインターフェイスの対極ともいえるSiri経由のインターフェイスでは、可能性が無限大でただし何ができそうかはすぐにはわからないと同氏は記し、さらに「これまでのiOSはユーザーが何かをしやすくするように設計されていた。それに対し、Siriは私たちのために何かしてくれるように設計されている」(iOS struck me being designed to make it easy for us to do things. Siri is designed to do things for us.)とべた褒め。そして、「スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)氏の復帰以来、アップルが見せたことのなかったような人口知能(AI)関連の大きな意欲が感じられる」と評している。

グルーバー氏は、Siriがいまのところアップル製のアプリなどにしか対応していない点に触れ、過去のiOSアプリの場合と同様に、いずれはサードパーティ開発者にもAPIが公開されるのではないかと推測し、そうなった場合に生じそうな課題にまで考察を加えている。同氏はその一例として、複数のカレンダーアプリがインストールされている端末で、Siriがまずどのアプリを選択するかなどは解決すべき点になろうと指摘。また「アップルの10年前の株価を教えて」と訊ねた場合に、Siriはすでに検索先として対応している「Wolfram Alpha」にはデータを探しにいかず、データを持っていない純正の「株価」アプリしか探さないため、質問に答えることができない、などの課題も挙げている。

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なお、同氏はSiriがiPhone 4Sでしか使えない点について、「表向きはハードウェア・スペックによる制限などとされているものの、実はSiriが問い合わせにいく先のサーバー/クラウド側の処理能力の問題に由来するものではないか」との説を紹介。つまり、旧モデルのiPhoneでもSiriを動かすことはできるが、すでに1億人を超えるiPhoneユーザーがいっせいにSiriを使い始めてしまうと、サーバー側がその負荷を処理しきれるかどうかわからないという懸念があるため、まずは当初100万〜200万人程度で済みそうなiPhone 4Sユーザーに限定して提供することにした、という説である。

次に、新しい内蔵カメラについて。
グルーバー氏は新しいカメラ機能について、画質よりも何よりも、まずその処理速度の速さが前モデルとの一番の違い、と指摘している。立ち上げ時のスピードだけでなく、シャッターを押した後つぎの撮影可能状態に移れるまでの速さは特筆もので、これに画面ロック時にも撮影できるようになった点を加えると「とても大きな違い」が生まれるとしている。また、同氏はiOS 5と4Sの開発事情に通じた知り合いから聞いた話として、アップルがこの「時間短縮」にむけた開発作業にかなりの労力を費やし、結果を確かめるためにストップウォッチを使った計測までやっていたという噂を紹介している。

いっぽう、WSJのモスバーグ氏はこのカメラ機能について、静止画やフルHDで撮った動画の画質もさることながら、付属の編集機能も使いやすく、他のスマートフォン内蔵カメラでは見たことのないほどと高い評価を与え、さらに「今回(iPhone 4Sをつかって)はじめて携帯電話のカメラをつかってみようという気持ちになった」と付け加えている。

なお、画質について前述のグルーバー氏は、iPhone 4SはiPhone 4よりも確実に向上しているものの、4年前に800ドルで買ったリコーのGR-Dにはまだ及ばないものの、常に携帯するiPhone 4SのせいでGR-Dを手にする機会が減りそうだとしている。

モスバーグ氏は、写真編集機能をはじめ、新しい「iOS 5」にアップデートするだけで手に入る機能がiMessengerなど多数あることなどから、「iPhone 4ユーザーは急いで買い換える必要はない」としながら、それ以外の携帯電話ユーザーには「買って損のない選択肢である」としてレビューをまとめている。

またボーグ氏は、iOS 5の自動同期機能「iCloud」の安定感などを買いつつ、まだAndroidスマートフォンに比べてキャッチアップが必要な部分も残っているとしながら、全体としては「たくさんの驚くべき技術が詰め込まれており、その一部はまるで魔法のようだ」と結んでいる。

【参照情報】
The iPhone 4S - Daring Fireball
New iPhone Conceals Sheer Magic - NYTimes
The iPhone Finds Its Voice - WSJ
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グラフ作成にあたっては、アップルのティム・クックCEOが口にしていた「iPhone出荷台数の半分をiPhone 4が占めている」という発言を考慮に入れている。

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