豪法廷「Galaxy Tab 10.1」販売差し止め判定の影響について(編集担当メモ)
2011.10.14
Updated by WirelessWire News編集部 on October 14, 2011, 10:51 am JST
2011.10.14
Updated by WirelessWire News編集部 on October 14, 2011, 10:51 am JST
アップル(Apple)が自社保有の特許侵害を理由に、サムスン(Samsung)製のAndroidタブレット「Galaxy Tab 10.1」のオーストラリアでの販売差し止めを求めていた件で、現地時間13日にシドニーの法廷は、アップル側の主張を認める判断を下した。これにより、同製品が豪市場で日の目をみる機会が事実上なくなることが確定した。
これまで再三に渡ってお伝えしてきているこの訴訟の結果については、日本の報道機関をはじめ、海外でもWall Street Journa(WSJ)やReutersなどで比較的大きく採り上げられている(iPhone 4S発売の「行列」についての話題ほどではないにせよ)。ここでは、今回の判定が世界各地で続いている両社間の訴訟や、他のAndroid陣営各社に及ぼす影響などを中心に気になった点を紹介してみたい。
まず、豪法廷の判断に対する反応だが、サムスン側はこれを不服とし、すでに控訴の可能性を示唆している。同社は「この判定を残念に思う。サムスンは訴訟を含むあらゆる手段を講じて、われわれの革新的な製品を消費者の手に届けられるようにしていく」とする声明を発表したとReutersは伝えている。また、韓国シンヨン証券(Shinyoung Securities)アナリスト、リー・センウー(Lee Seung-woo)氏の「この判定で、サムスンの最新製品が販売停止となった市場が増えたことから、タブレット端末市場におけるアップルの支配力がさらに高まるだろう」との見方を紹介している。
いっぽう、WSJでは「今回の判定はアップルにとって、短期的には勝利を意味するものの、長い目でみれば敗北」とするポール・バッデ(Paul Budde)氏という独立系アナリストの見方を紹介。同氏は、「これでアップルが革新的な新技術を生み出していたという主張の正しさがはっきりしたが、その一方で現実には、われわれはオープンな世界に暮らしており、そのなかでは特定の革新的技術をもっているからといって、他社が同じ方向に進もうとすることを食い止めることはできない」と理由を説明している。
なお、Reutersでは、両社間の一連の訴訟を詳しく追い続けているFOSS Patentsのフローリアン・ミューラー(Florian Mueller)氏の話として、今回の訴訟では、故スティーブ・ジョブズ氏が筆頭発明者("first inventor")として名を連ねるタッチスクリーン関連の特許が決め手になったと伝え、この特許が「アップルにとって、気持ちの上でも戦略上でも重要なものになった」という同氏のコメントを記している。
さて、そのミューラー氏は自らのブログに「スティーブ・ジョブズ氏の特許により、アップルは豪市場への新たなAndroid製品の投入を封じ込められることになった」("Steve Jobs patent enables Apple to shut down any new Android product in Australia")と題する記事を掲載している。この記事で特に目をひくのは、今回アップル側の主張が認められたことで、同社の保有する2つの特許が、Android陣営全体にとって根本的な脅威となるという点。
同氏は、「今日の判定を受けて、少なくとも豪市場では、サムスン以外のメーカーもタッチスクリーン技術を採用したAndroid端末を新たに投入することがほぼできなくなった」と記し、アップルと他の市場で訴訟を争っているHTC、モトローラ(Motorola Mobility)にも影響が出ると述べている。
既報の通り、豪での訴訟では争点がタッチスクリーン操作に関連する2つの特許に絞られていたが、ミューラー氏はこの2つの特許(豪特許番号 2005246219ならびに2009233675)はカバーする範囲が「とても広い」ため、グーグルやAndroid端末メーカーにとっては(侵害を)回避するのが難しく、もし別の方法を見つけられたとしてもそれを採用した製品は消費者にとって魅力のないものとなってしまう恐れがあるという。さらに同氏は、この2つの特許の有効性が他の国での訴訟で認められるかどうかはわからないとした上で、もし認められるようなことになれば「グーグルや端末メーカーが恐れるキラー・パテント」となると付け加えている。
なお、Galaxy Tab 10.1の販売については、先に独デュッセルドルフでの訴訟でも差し止め命令が下されていたが、こちらはデザイン関連の特許が争点になっていた。また、Galaxyシリーズのスマートフォン3機種を対象とする販売差し止め命令が出されているオランダでの訴訟については、「写真ギャラリー」機能の表示など回避策が比較的容易に見つかる部分が争点とされたいっぽう、Galaxy Tab 10.1の設計に関するアップルの訴えは退けられていた。
また、米国では13日からカリフォルニア北部地区連邦地裁でアップルとサムスンとの訴訟の審問が始まっているが、そのなかでアップルが販売仮差し止めを求めている3機種のGalaxyスマートフォン((Infuse 4G, Galaxy S 4G, Droid Charge)とGalaxy Tab 10.1については、デザイン関連の3つの特許ならびにリストのスクロール表示に関する特許が問題とされ、争点が異なる豪での訴訟の結果が直接影響することはないものの、「心理的な影響」がまったくないとは考えられないとミューラー氏は記している。
【参照情報】
・Steve Jobs patent enables Apple to shut down any new Android product in Australia - FOSS Patents
・Apple wins Samsung tablet ban in Australian court - Reuters
・Apple Wins Block on Samsung Tablet in Australia - WSJ
・サムスン、蘭で「修正版」Galaxyスマートフォンを投入へ - アップルの特許侵害を回避
・「S・ジョブズ氏自らがサムスンとの衝突回避に動いていた」 - 豪法廷で明らかに
・アップル対サムスンの特許訴訟 - 豪ではタッチスクリーン関連技術が争点に
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