スマートフォン/タブレット関連技術の特許侵害をめぐるアップルとの訴訟合戦で劣勢に立たされているサムスンが、日本とオーストラリア（豪）の裁判所に、先週金曜日に発売されたアップル「iPhone 4S」の販売差し止めを求める訴えをそれぞれ行った。また日本で（東京地裁に）提出された訴えでは、「iPhone 4」ならびに「iPad 2」も対象に含まれているという。

サムスンは、公式ブログにあげた声明のなかで、日本並びに豪州での訴えの根拠となる特許を列記。さらに「サムスンでは、これらの特許件侵害に照らして、当該のアップル製品の販売が禁じられるべきと考えている。アップルはわれわれの保有する特許の侵害、ならびにわれわれの技術へのタダ乗りを続けている。われわれはこれまで手をこまねいていたが、今後はしっかりと自らの知的財産を守っていく」と述べている。さらに、同社広報担当のジェームズ・チュン（James Chung）氏はWSJに対し、「われわれは再びアップルに反撃していく」とコメントしている。

両社の法廷での争いは、今年4月に、サムスンの「Galaxy」シリーズの携帯端末がアップル製品に酷似しているとして、アップルが米国でサムスンを訴えて以来、世界各地に飛び火。現在はあわせて10カ国で20数件の訴訟が続けられている。

サムスンは9月に、ドイツの法廷がアップル側の主張を認め、「Galaxy Tab 10.1」の販売仮差し止めの判定を下した前後から、アップルに対する積極的な反攻を示唆しており、10月はじめにはフランスとイタリアで、アップルの最新スマートフォン「iPhone 4S」の販売差し止めを求める訴えを実際に起こしていた。

いっぽう、日本ならびに豪では、Android OS搭載の「Galaxy」シリーズの製品に関する特許侵害でアップルから訴えられており、豪では先週「Galaxy Tab 10.1」の販売仮差し止めの判定が下され、同製品の市場投入の機会が事実上なくなるという事態に発展していた。

両社の法廷での戦いを追い続けているFOSS Patentsのフローリアン・ミューラー氏（Florian Mueller）氏は、今回の豪での訴えに関し、サムスンが権利侵害の根拠として挙げている3つの特許はいずれも、先週ハーグ（オランダ）の法廷で同社の主張が退けられたものと同じ、3G無線通信関連のいわゆる「FRAND」特許であることから、「サムスンにはほぼ勝ち目はなく」、逆に豪法廷がオランダの法廷と異なる判断を下したとすれば「そのほうが驚き」との考えを記している。

いっぽう、日本での訴えについては、豪の場合に比べて「不明な部分が多い」とし、HSPA関連の一件の特許に加え、ユーザーインターフェイス（UI）関連の3つの特許についてはFRANDに分類されるものでないため、販売差し止めの判定が出される可能性がなくはないと指摘している。

・日本での訴えに盛り込まれたサムスンの特許
１）HSPA関連技術の特許1件（データ送受信時に電力消費量を抑える方法に関するもの）
２）画面表示に不可欠なUIに関する特許3件（「機内モード」設定時に表示される飛行機アイコンに関するもの、ホーム画面のカスタマイズに関するもの、アップストアでのカテゴリの分類に関するもの）

・「機内モード」アイコンの比較

【参照情報】
・Samsung Requests Preliminary Injunction to Block iPhone4S Sales in Japan and Australia - Samsung
・Samsung won't get preliminary injunction against iPhone 4S in Australia, situation less clear in Japan - FOSS Patents
・Samsung sues to block iPhone 4S in Australia - Sydney Morning Herald
・Samsung tries to block iPhone 4S in Australia - ITNews.com.au
・Samsung Seeks iPhone 4S Sales Ban in Japan, Australia - WSJ
・オランダ法廷、サムスンのアップル製品販売差し止め請求を却下
・豪法廷「Galaxy Tab 10.1」販売差し止め判定の影響について（編集担当メモ）
・サムスン、アップルへの反攻開始へ - 仏、伊で「iPhone 4S」発売停止を求める訴え
・アップルによる日本でのサムスン提訴について（編集担当メモ）