チャイナ・モバイルとアップル、iPhoneをめぐって駆け引き- アプリ売上分配が議題に
2011.11.11
Updated by WirelessWire News編集部 on November 11, 2011, 12:47 pm JST
2011.11.11
Updated by WirelessWire News編集部 on November 11, 2011, 12:47 pm JST
iPhoneの取り扱いをめぐってチャイナ・モバイル(China Mobile)とアップル(Apple)との間で続いているとされる交渉について、新たな情報が一部のIT系ブログで報じられている。
今回の話の出所は、有名な「アップル・ウォッチャー」の一人として知られる米スターン・アギー(Sterne Agee)アナリストのショウ・ウー(Shaw Wu)氏。AllThingsDやRethink Wirelessでは、同氏が匿名の関係者から得た情報として、チャイナ・モバイルがアップルに対し、iPhone取り扱いの条件としてApp Storeを通じて販売されるiOSアプリの売上の一部を要求している、という話を伝えている。
加入者数で世界最大の携帯通信事業者であるチャイナ・モバイル(China Mobile)は以前から、iPhoneの取り扱いに関してアップルに秋波を送ってきている。今年はじめには同社の王建宙(Wang Jianzhou)会長が、「アップルははっきりと『TD-LTEをサポートする』と言っている」とReutersにコメント。また8月には同会長が、チャイナ・モバイルが展開する「TD-SCDMA」方式の3Gネットワークに対応したiPhoneの提供に関し、「(故)スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)CEOとこれまで何度か協議した」と発言したことが報じられ、いっぽうアップル側でも6月にティム・クック現CEOが北京のチャイナ・モバイル本社ロビーで目撃された、という話も伝えられていた。
今回浮上した情報によると、両社の交渉は、条件の折り合いが付かず話が途中で打ち切られたことが、これまでに少なくとも3度あったという。また現在は交渉が再開されているものの、チャイナ・モバイルがiPhoneの取り扱いと引き換えにiOSアプリの売上の一部を要求してていることから、両社の議論は平行線をたどったままだという。
アップルはApp Storeで販売した有料アプリについて、売上の30%を手数料として徴収しているが、その一部を携帯通信事業者を支払うという条件で契約を交わした前例はない。
チャイナ・モバイルには現在6億2800万人の加入者がいるが、そのなかにはフィーチャーフォンなどの従来型携帯電話機からスマートフォンへの買い替えを検討しているユーザーも多く存在する。また、アップルにとっても、今後もっとも大きな成長が期待できる中国市場での売上を伸ばす上で、チャイナ・モバイルとの契約は鍵を握るものとみられている。
中国ではこれまで、チャイナ・モバイルと競合するチャイナ・ユニコム(China Unicom)が独占的にiPhoneを販売してきている。これに対し、チャイナ・モバイルではiPhone利用を希望する消費者に向けて、2Gの音声通話のみ同社の回線を使い、インターネットへの接続についてはWi-Fi網経由で行うというプランを提供し、4ヶ月で約500万人の新規加入者を獲得。こうした形で同社サービスを利用するiPhoneユーザーの数はすでに1000万人にのぼっているという。ただし、この「苦肉の策」では利幅が極めて薄いため、2G市場の飽和による新規加入者の伸び止まりや1契約あたりの売上(ARPU)低下に直面する同社としては、iPhoneの正式な取り扱いをいち早く決めいたいはずとの見方もある。
アップルは自社の「ドル箱商品」となったiPhoneの取り扱いに関し、携帯通信事業者に対して他のスマートフォンメーカーよりも厳しい条件を課しているとされ、たとえば10月から同製品を扱い始めた米スプリント・ネクステル(Sprint Nextel)では、その「負担の重さ」に対する懸念などから株価が下落。同社ではこの不安を払拭するべく、10月なかばに行った決算発表のなかで具体的な採算の見通しを明らかにしていた。いっぽう、米の下位事業者などの間では、iPhone 4S取り扱いについて打診があったものの、アップルの提示した条件が受け入れられるものではないとして、結局取り扱いを見送ったという例も出てきている。
さらに、欧州の携帯通信各社などの間では以前から、スマートフォンの利用拡大によって生じたトラフィック増大への対応に関し、アップルやグーグル(Google)などのOS開発/ウェブサービス企業に対して「負担」を求める声も上がっている。
チャイナ・モバイルとアップルとの交渉について、All Things Digitalでは、アップルにとって「TD-SCDMA」方式の3G網に対応する端末を新たに製造する必要性はあまりなく、チャイナ・モバイルが4G網(TD-LTE方式)に移行するまでに交渉が成立すれば十分間に合うと指摘。いっぽう、Rethink Wirelessは、TD-SCDMA対応端末を新たに製造する必要性を考慮しても、チャイナ・モバイルと契約するメリットは大きく、アップルも中国ではやり方を変える可能性もあるとの見方を述べている。
なお、先ごろ米調査会社のフルーリー(Flurry)が発表したレポートによると、スマートフォン利用者の急増がつづく中国では対応するアプリの利用量も大幅な伸びを記録し、10月時点で米国に次ぐ規模に達しており、この勢いが続けば2013年末までに米国を追い越すと可能性もあるという。
【参照情報】
・China Mobile Wants Cut of Apple's App Store Revenues - AllThingsD
・China Mobile demands Apple revenue share - Rethink Wireless
・China Mobile: We Want A Cut Of App Store Revenue Or No iPhone - Cult of Mac
・「アップル、iPhoneのTD-LTE対応を確約」- チャイナ・モバイル会長がコメント
・チャイナ・モバイル会長:「アップルのスティーブ・ジョブズCEOと、TD-SCDMA版iPhoneについて協議」
・チャイナ・モバイル、「苦肉の策」で「iPhoneユーザー 500万人新規獲得」(編集担当メモ)
・スプリント、第3四半期決算発表 - iPhone関連の負担は「4年間で155億ドル以上」に
・「iPhone 4S」取り扱いを見送った米携帯通信キャリアの言い分
・【図・グラフ】中国、米国に次ぐ「スマートフォン・アプリ大国」に(米Flurry調べ)
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