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[2012年第28週]九州の大雨の影響、エリア拡大の施策、ドコモが海外連携

2012.07.17

Updated by Naohisa Iwamoto on July 17, 2012, 17:30 pm JST

前週に続き、九州地方を中心として記録的な大雨が生活に影響を及ぼしている。通信サービスにも影響があり、各社は災害用伝言板の運用などの対策に乗り出している。この週は、エリア整備の話題が集中して発表されている。つながるところが増えることは、ライフラインの確保の面でも望ましいこと。逆に、平時だけでなく災害時なども含めた携帯電話網への依存が強くなっていくことも示している。

大雨の影響が通信にも

NTTドコモとKDDI、ソフトバンクモバイルは、九州地方の大雨の影響で携帯電話が利用できない状況が発生していると発表している。7月12日から週末にかけて、福岡県、熊本県、福岡県、大分県の一部などで影響が出ている。各社とも大雨の影響による停電および伝送路故障が原因とのこと。車載型基地局などによるエリアの確保など、対策も始まっている。

この大雨に伴い携帯電話事業者各社は、被災地域における安否確認の手段として災害用音声お届けサービスと災害用伝言板を提供している。また、災害救助法適用地域に対して、料金支払期限の延期や故障修理代金の一部減額など支援措置を適用する(関連記事:九州地方の大雨でドコモとauに通信障害、災害用伝言板なども提供)。

携帯電話、Wi-Fi、WiMAXで広がるエリア

通信できるエリアや端末を増やす方策が各社から続々と発表された。まず事業者共同の取り組みから見ていく。

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は、仙台市地下鉄 南北線のトンネル区間(黒松駅〜富沢駅)で携帯電話サービスの提供を開始した。今回のエリア化で南北線は全線(泉中央駅〜富沢駅)の駅構内およびトンネル内で携帯電話サービスが利用できるようになった(報道発表資料:仙台市地下鉄 -南北線全線(泉中央駅〜富沢駅)で携帯電話サービスが利用可能に)。

また、UQコミュニケーションズ、KDDI、ケイ・オプティコム、ワイヤ・アンド・ワイヤレスは共同で、大阪市営地下鉄駅構内での公衆無線LAN環境とWiMAX設備を構築し、2012年7月から順次サービスを開始する。利用できるようになるのは、公衆無線LANサービスの「au Wi-Fi SPOT」「eoモバイル Wi-Fiスポット」「Wi2 300」「Wi2 300プレミアムプラン」(仮称)と、WiMAXサービスの「UQ WiMAX」。公衆無線LANサービスは、南港ポートタウン線トレードセンター前駅などの駅構内で2012年7月17日から、WiMAXサービスは四つ橋線本町駅と中央線本町駅で2012年8月27日から、それぞれ利用可能になる(報道発表資料:UQコミュニケーションズ、KDDI、ケイ・オプティコム、及び、Wi2 4社協力による大阪市営地下鉄への公衆無線LAN及びWiMAX環境の整備について)。

鉄道のエリア整備としては、イー・アクセスからも発表があった。東海道新幹線「東京駅〜新大阪駅」間で「EMOBILE G4」エリア化を完了したというもの。これにより駅構内や沿線だけではなく、トンネル内でもイー・モバイルのデータ通信などが利用可能になった。携帯電話事業者ではすでに、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイルの各社が東海道新幹線のトンネル内でのサービスを提供していた(報道発表資料:東海道新幹線トンネル内のイー・モバイル エリア化完了について)。

ソフトバンクモバイルの施策を2つ。パソコンやタブレット端末などソフトバンクモバイル以外の端末からも同社の公衆無線LANサービス 「ソフトバンクWi-Fiスポット」を1日当たり490円で使える「ソフトバンクWi-Fiスポット(EX)」を提供する。利用できるのはサービスの購入申し込みを承諾した時点から24時間で、利用権の終了日時はメールで知らせる。携帯電話の公衆無線LANサービスとしてはスポット数が最も多く、ソフトバンクモバイルの端末を持たない層にも利便性を提供する(報道発表資料:スポット数No.1のソフトバンクWi-Fiスポットがソフトバンクモバイル契約端末以外からもご利用可能に)。

もう1つは夏の海外旅行シーズンに合わせた施策。ソフトバンクモバイルの海外向けパケット定額サービス「海外パケットし放題」の対象エリアに、38の国・地域を追加した。国内事業者で最多となる114の国・地域で海外パケット定額サービスを使えるようになり、海外でパケット通信する99.6%のユーザーが「海外パケットし放題」を使えるようになるという(報道発表資料:国内事業者で最多となる114の国・地域で海外向けパケット定額サービスが利用可能に)。

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海外との連携進めるドコモ

NTTドコモが海外との連携を進展させている。まず、中国のインターネット検索事業者のBaidu(百度)と共同で設立した合弁会社「百度移信網絡技術」(以下、百度移信)への出資。NTTドコモは、持分比率の20%にあたる2250万米ドル(約17億8000万円)の出資を完了した。中国における百度のブランド力やユーザー基盤を活用してサービスやコンテンツを充実させるほか、今後はドコモが日本で得た付加価値サービス運営のノウハウを採り入れていく(関連記事:NTTドコモと中国Baidu、合弁会社で携帯電話向けサービスを提供へ)。

また、多地域の通信事業者との連携も発表されている。NTTドコモが海外の6つの通信事業者との間で、M2M(マシン・ツー・マシン)サービスのグローバル展開に向けた検討を進めるというもの。M2M専業の米ジャスパー・ワイヤレス(Jasper Wireless)のプラットフォームを活用して、グローバルなM2Mサービスを提供する。NTTドコモとともにM2Mサービスのグローバル展開の検討を開始するのは、スペインのテレフォニカ(Telefonica)、オランダのKPN、ロシアのヴィンペルコム(VimpelCom)、カナダのロジャース(Rogers)、オーストラリアのテルストラ(Telstra)、シンガポールのシングテル(SingTel)の6事業者(関連記事:NTTドコモ、海外の6事業者とM2Mサービスのグローバル展開に合意)。

スマホやタブレットの業務利用は?

その他のトピックを2つ。NTTコミュニケーションズが発表した「モバイルコネクト」の機能強化では、外出先のスマートフォンからMicrosoft Office365やSalesforce.comなどの各種クラウドサービスを安全に使える接続機能を提供する。機能強化で対応するクラウドサービスは、「Bizメール」「Microsoft Office365」「Salesforce.com」「Cybozu.com」「GoogleApps」。BYOD時代に、業務で活用できるサービスの幅が広がる(関連記事:NTTコム、「モバイルコネクト」を機能強化しスマホからクラウドを安全に活用)。

タブレット端末の利用実態調査の結果。ジーエフケー マーケティングサービス ジャパン(GfK Japan)によれば、2012年4月期にタブレット端末を導入済みの企業は19%で、前回調査の2011年10月期に比べて7ポイント上昇していることがわかった。ただし、タブレット型端末が業務に本格的に活用されているかというと、まだその段階には達していないようだ。「導入している」企業のうち、「本格導入」と回答したのは33%で、「一部試験的導入」が58%だった(関連記事:企業のタブレット端末導入は19%、導入予定と検討は計33%--GfK Japan)。

2012年4月期 企業のタブレット型端末導入状況調査(PDF)
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昨年の第28週のできごと

・ユーザーや一般家庭での節電対策を支援
・アップデートで進化する携帯端末
・ソフトバンクがLTE実証実験、5月の端末出荷は減少

[2011年第28週]節電対策の夏が始まる、ケータイはアップデートで進化する時代に

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。