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[2012年第49週]ドコモついに純減に、ソフトバンクがiPadでテザリング、面白スマホ周辺機器続々

2012.12.10

Updated by Naohisa Iwamoto on December 10, 2012, 12:00 pm JST

この週のトップニュースは、NTTドコモが純減に転じた話題だろう。電気通信事業者協会(TCA)が発表した2012年11月末時点の事業者別契約数によると、NTTドコモが過去最大の純減となり、iPhone 5効果で堅調な純増を得ているソフトバンクモバイルおよびKDDIと明暗がわかれた。

携帯電話では、ソフトバンクモバイルが30万1900件の純増で2カ月ぶりに30万の大台を取り戻した。KDDIも22万8800件の純増で、3カ月連続で22万件を超える安定した数値を残している。いずれも9月にiPhone 5を発売しており、その後の好調ぶりが伺える。一方でiPhoneをラインアップに持たないNTTドコモは、ついに4万800件の純減となった。NTTドコモが純減になるのは2007年8月以来で、純減の数値としては最悪となった(関連記事:11月の契約数はドコモが4万超の純減、iPhone 5の影響が直撃

2012年11月末現在 事業者別契約数
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キャリアーの動向、iPadのテザリング、700MHz帯推進など

キャリアーの話題をいくつかチェックしよう。1つは、ソフトバンクモバイルが2012年12月6日にiPad向けにテザリングオプションの提供を開始したこと。iPadをモバイルWi-Fiルーターとして利用して、他のWi-Fi対応機器をインターネットに接続できる。テザリングオプションの対象となるのは、「iPad mini」と「iPad Retinaディスプレイモデル」(第4世代iPad)で、LTE/3Gの通信機能を備えるWi-Fi+Cellularモデル。いずれも、テザリングを利用するためにはキャリア設定のアップデートが必要となる。テザリングオプションの料金は月額525円だが、2012年12月31日までに申し込むと実質的には無料となる(関連記事:ソフトバンクモバイル、iPhone 5に先駆けiPadでテザリングを開始

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NTTドコモとパイオニアが共同で、しゃべった音声の意図を解釈して情報を調べてくれる自動車向けの技術を開発したニュースもあった。NTTドコモの音声エージェント機能「しゃべってコンシェル」の音声認識および意図解釈技術と、パイオニアの自動車向けコンテンツ配信技術などを組み合わせた。これにより、「ペットと入れるレストラン、ない?」「車どこに停めたらいい?」といった自然な言葉で情報を得られるようになる。スマートフォンやドコモタブレットで利用できるカーナビゲーションサービス「ドコモ ドライブネット」に新機能として搭載し、12月5日から提供を開始した(報道発表資料:ドコモとパイオニアが「しゃべってコンシェル」技術を応用した自動車向け音声意図解釈技術を共同で開発

一方、新しい周波数帯の利用促進に関する話題もあった。NTTドコモ、KDDI、イー・アクセス、沖縄セルラー電話の4社は「一般社団法人700MHz利用推進協会」を設立した。700MHz帯の周波数帯は、2012年6月に総務省がNTTドコモとKDDI/沖縄セルラー電話、イー・アクセスの3グループに新規で割り当てた。この周波数帯には、これまでテレビの無線中継に使う「FPU」と、放送局や劇場、ホールなどで使うプロ用のワイヤレスマイクである「特定ラジオマイク」が割り当てられていた。同推進協会はこれらを新周波数帯に移行するための移行措置の推進を目的として設立したもの(関連記事:ドコモ、KDDI、イー・アクセスなど、700MHz帯の早期利用に向け「利用推進協会」を設立)。

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法人向けのM2M、ビジネスWi-Fiソリューション

法人向けのソリューションで2つの話題をチェック。NTTドコモは、M2M(参考情報)用途で国内外の通信回線を一元管理できる「docomo M2Mプラットフォーム」の提供を開始した。docomo M2Mプラットフォームは、これまで企業が国ごとに管理していた通信回線を一元管理できるようにすることで、回線監視やトラブル診断といった運用の手間を減らすほか、システム開発費も削減できるという効果を狙ったもの。車両や建設機械、情報機器など通信モジュールを組み込んで、複数の国にまたがって運行管理や状態管理などのM2M用途で利用する企業が対象のサービスである(関連記事:ドコモ、国内外の回線を一元管理できるM2Mプラットフォームを提供)。

一方、KDDIは法人向けにセキュリティーを高めたWi-Fi環境を提供する「KDDI ビジネスセキュアWi-Fi」の提供を開始する。12月17日に申し込みの受付を始める。KDDI ビジネスセキュアWi-Fiは、IEEE802.11n対応による高速なWi-Fi環境、WPA2エンタープライズ に対応した強固な暗号化機能、ユーザ認証やデバイス認証機能--などにより、業務で必要なセキュリティーを確保し、イントラネットへの安心・安全なアクセスを実現する。フリーアドレスのオフィスや、店舗内での場所を選ばない接客などに活用できる(報道発表資料: 「KDDI ビジネスセキュアWi-Fi」の提供開始について)。

鉄道のサービスエリア拡大も進展

NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4社は、都営地下鉄の携帯電話エリア拡大を続けている。この週は、3路線4区間のエリア化を発表した。まず、12月6日に三田線の日比谷駅〜水道橋駅間、新宿線の九段下駅〜馬喰横山駅間でサービスを開始した。続いて12月10日正午には三田線の白金高輪駅〜日比谷駅間、大江戸線の森下駅〜大門駅間でサービスを始める。すでに提供しているエリアとつながるため、三田線では志村坂上駅〜白金高輪駅の間、新宿線では新宿駅〜森下駅の間、大江戸線では新宿駅〜都庁前駅〜森下駅〜大門駅のルートで連続して携帯電話のサービスが利用できるようになる(報道発表資料:都営地下鉄の一部路線における携帯電話のサービスエリア拡大について)。

小田急電鉄は、KDDI、UQコミュニケーションズと提携し、特急ロマンスカー・EXE (30000形) 4編成に公衆無線LANサービス「au Wi-Fi SPOT」を導入する。2012年12月13日にサービスを開始する。また、ワイヤ・アンド・ワイヤレス公衆無線LANサービス「Wi2 300」も同時に導入することで、auスマートフォン以外の利用者もWi-Fiを利用できるようにする。ロマンスカー・EXEは観光のほか通勤用途にも利用する特急列車で、2013年1月初旬には保有全7編成に導入を完了する見込み。いわゆる私鉄の有料特急車両で公衆無線LANサービスを導入するのは国内で初めてという(報道発表資料:民鉄有料特急初の公衆無線LANサービス登場! ロマンスカー・EXEに「au Wi-Fi SPOT」を導入)。

KDDIのニュースリリースより
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注目のスマホの周辺機器が続々

スマートフォンの周辺機器で面白い製品が登場している。キングジムは、周囲にいる人たちと簡単にデータを共有できるワイヤレス共有メモリー「パケッタ」を12月19日に発売する。USBメモリーやインターネット接続環境がなくても、簡単に複数の人と無線でデータを共有できる。専用ソフトをインストールしたパソコンや、専用アプリをインストールしたiPhoneやiPadなどのiOS機器が、パケッタが作るネットワークにアクセスしてデータを共有できるようになる。1対1の受け渡しはもちろん、セミナーや講義などでのデータの配布や収集にも活用できる(関連記事:キングジム、Wi-Fiでデータ共有できる小型メモリー「パケッタ」を発売)。

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また、スマートフォンで問題になりがちなバッテリー減少時の対策になる2つの製品が発表されている。ラナは、「iPhone5専用バッテリー内蔵カスタムカバー」の予約販売を開始する。iPhone 5のカバー内に2000mAhのリチウムポリマーバッテリーが内蔵されている。本体のバッテリーが少なくなったときには、カバーのボタンを長押しすることで本体への充電が始まる。価格は1万3440円で、2013年1月下旬から予約者に順次発送を開始する。カラーはBLACK・WHITE・REDの3色、重さは約70gである(報道発表資料:iPhone5専用バッテリー内蔵カスタムカバー発売!)。

もう1つは、ラトックシステムが発表したスマートフォン充電機能付き「Wi-Fi SDカードリーダー」(REX-WIFISD1)。3つの機能を提供する。1つは、iPhoneやスマートフォンなどとWi-Fiで接続し、専用のアプリ「WiDrawer」を使うことでデータの読み込み/書き出しができるWi-Fiストレージ機能。SD/SDHC/SDXCに対応し、最大128GBのSDカードを使える。2つ目はモバイルバッテリーとしての機能。3000mAhのバッテリーを内蔵し、スマートフォンの充電が可能。3つ目はUSBカードリーダーとしての機能で、パソコンなどで利用できる。12月中旬に出荷を開始する。価格はオープン(報道発表資料:スマホに充電もできる!SDXC対応Wi-Fi SDカードリーダー登場

昨年の第49週のできごと

・Xi契約者が急増、パナソニックは海外展開へ
・地下鉄、フェムトなどインフラ整備へまい進
・安いSIM、スマホで動画など、各種サービス
・法人向けのスマートフォン利用に

[2011年第49週]Xi急速増殖中、Carrier ID国内では搭載なし、東京の地下鉄エリア化

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岩元 直久(いわもと・なおひさ)

日経BP社でネットワーク、モバイル、デジタル関連の各種メディアの記者・編集者を経て独立。WirelessWire News編集委員を務めるとともに、フリーランスライターとして雑誌や書籍、Webサイトに幅広く執筆している。