東京大学とコーセラが大規模公開オンライン講座配信に関する協定を締結 9月から2講座を配信へ
2013.02.22
Updated by Asako Itagaki on February 22, 2013, 19:19 pm JST
2013.02.22
Updated by Asako Itagaki on February 22, 2013, 19:19 pm JST
▼The University of Tokyo (Coursera)
2月22日、東京大学(以下東大)は、米国のコーセラ社(Coursera)との間で大規模公開オンライン講座(以下MOOC)配信に関する協定を締結したことを発表した。9月から実証実験として、2講座を英語で配信する。
配信されるのは、政策ビジョン研究センター安全保障研究ユニット長・大学院法学政治学研究科 藤原帰一教授による「戦争と平和の条件(Conditions of War and Peace)」と、カブリ数物連携宇宙研究機構 機構長 村山斉特任教授による「ビッグバンからダークエネルギーまで(From the Big Bang to Dark Energy)」。
この2名の講座を最初に選んだ理由として、東京大学副学長・教育企画室長の吉見俊哉氏(写真左)は、「それぞれの分野の世界的なトップランナーに講義をしていただきたいこと、英語でアトラクティブな授業をしていただける方であること、グローバルな教養人であること」と、先端性、国際性、リベラルアーツ的な教養を挙げた。2コースを合わせて世界各国から数万人の利用を予想する。
講座は開講日から4~5週間の学習期間を1タームとして、週当たり5時間程度の学習時間を想定する。1週間ごとに評価が行われる。難易度は東大の通常の講義と同等とし、学部2年生程度のレベルを想定する。履修については無料で、世界中どこからでも受講できる。
なお、履修証については、コーセラ社の制度として、講座終了時の評価で一定レベル以上の受講生に発行される無償の履修証と、キーストロークダイナミクス認証(キーボードを打つ時の癖によって本人を認証する技術)と写真を組み合わせた認証により受講生の本人確認の上で有償発行される「本人確認付履修証」2種類があり、発行の手続きについては現在協議中。「本人確認付履修証」は他大学では30ドル~100ドルで発行されており、東大で導入する場合もおよそ同程度の価格となる見込み。なお、履修証についてはあくまでも「講座を一定の成績で終了した」ことの証明であり、単位の認定ではない。
MOOCは授業資料を無償公開するOCW(オンラインコースウェア)と異なり、授業そのものを公開し、修了者には履修証を発行するのが特徴。オンライン大学とは異なり、多数の大学がコンソーシアムを組んで、科目ごとに履修認定を行う。世界中の誰でも無償で受講できるので、高等教育機関が整備されていない国を中心に多くの履修者を集めている。
今回、東大がMOOCを提供するコーセラ社は、2012年にスタンフォード大学のアンドリュー・ネグ教授とダフニー・コーラー教授によって設立されたソーシャルベンチャー企業。2013年3月現在の参加大学数は62大学で、223講義が提供されている。登録者数は270万人と、Facebook、Twitter以上の急速な立ち上がりを見せている。また、MOOCプラットフォームとしてはコーセラ社の他にMITとハーバードが共同設立したedXなどいくつか存在している。
▼代表的なMOOCプラットフォーム
MOOCが注目される理由として、東大の江川雅子理事(写真右)は、世界中から優秀な学生が集まり、優秀な学生はトップの大学に集中することや、世界中の学生に対して自校の講義をアピールすることで、留学生を引き付けることなどを挙げ、「世界中の学生に我々の大学教育を知ってもらい、東大の国際化に役立ててもらいたい」と述べた。
また、吉見副学長は、「東大は日本の中の東大ではなく世界の中の東大にならなくてはいけない。MOOCへのそのための一環と考えている」と述べ、世界中にいる、今までリーチできなかた学生に対して、東大の教育をアピールするチャネルとしてMOOCへの期待を示した。
今後は、オンライン授業で基礎を学び、対面型授業で応用を学ぶ「反転授業(Flipped Classroom)」についても試行的実践と評価を行う。「反転授業」は、従来型の「学校で先生に基礎を学び、宿題として家庭で応用問題を解く」という方法に対して、学校と家庭の役割を反転させているところからそう呼ばれている。米国では初等・中等教育での実践で効果が認められたことから急速に広がっている。2011年からスタンフォード大学などで試行実験が始まっており、東大でも取り組んでいく。
【報道発表資料】
・東京大学とコーセラ(米国)が大規模公開オンライン講座(MOOC)配信に関する協定を締結
【関連URL】
・The University of Tokyo (Coursera)
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登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。