日本企業はグローバルに提供できるM2Mアプリケーションを持っている ~Telenor Connexion AB CEO ペア・シモンセン氏インタビュー
2013.05.10
Updated by Asako Itagaki on May 10, 2013, 10:31 am JST
2013.05.10
Updated by Asako Itagaki on May 10, 2013, 10:31 am JST
KDDIとスウェーデンのM2M専業プロバイダーTelenor Connexion AB(以下 Telenor Connexion社)は、Telenor Connexion社が持つグローバル M2M(参考情報)プラットフォームを活用し、「KDDI グローバル M2M ソリューション」として提供する。2013年5月8日から、法人顧客を対象に提供を開始する。
Telenor Connexionは、産業機械などにSIMカードを組み込んで遠隔監視・制御ができるM2Mプラットフォームを約200の国・地域で提供している。KDDI グローバル M2M ソリューションは、同プラットフォームを活用して、法人顧客の海外に展開する産業機械などの監視・制御を、日本からセキュアなネットワーク経由で可能にする。
対地ごとにSIMカードの変更が不要な「グローバル M2M ローミング SIM」により、SIMカードの切り替えなどの運用面の負担が軽減できる。契約、保守、運用は日本のKDDIがワンストップで対応し、現地での障害発生時はKDDIの海外現地法人がサポートする。
▼Telenor Connexionで提供するM2Mモジュールの例(SIERRA WIRELESS社製)
KDDIは元々auの3G網を利用した通信モジュールサービスを提供しており、現在国内では230万回線のM2Mモジュールを提供している。製造業、プラントメーカー、建設業などを中心に、海外にあるプラントやデバイスからの情報収集や監視を目的に、海外でのM2Mサービスへの需要が高まっていた。Telenor Connexion社との提携により、こうした要望に対応する。
Telenor Connexion社 CEOのペア・シモンセン(Per Simonsen)氏に、今回の提携の目的とM2M市場の可能性について話を聞いた。
▼Telenor Connexion AB ペア・シモンセンCEO
――Telenor Connexion社について、日本のユーザーにご紹介をお願いします。
シモンセン氏:Telenorグループは、11カ国・1億5千万回線の契約を持つ、世界でも最も大きい移動体キャリアグループの一つです。また、ロシアのVIMPELCOMの株主でもあり、同社を合わせるとグループ全体で18ヵ国でサービスを提供しています。グループの本社はノルウェイにあり、全世界で社員数31,000人、2012年の売上は1兆7015億円でした。
Telenor ConnexionはM2Mサービスの専業子会社で、Telenorが100%出資しています。本社はスウェーデンにあります。スウェーデンは北欧ではM2M市場が最も大きく、技術者も多く、一番先進的です。研究開発センター、技術センターはスウェーデンにありますが、フランス、UK、ドイツ、アメリカ、日本にオフィスがあります。
当社の設立は2008年ですが、Telenor本社は15年前からM2Mにフォーカスしていました。今では、190か国でサービスを提供しており、グローバル企業のお客様も数多くいらっしゃいます。例えばボルボ、ダイムラー、クアルコムなどです。日本企業ではオムロン、日立建機、日産などがお客様です。
――今回、KDDIと一緒に提供される「グローバルM2Mサービス」の特徴を教えてください。
シモンセン氏:Telenor Connexionのサービスは、1枚のグローバルSIMで190カ国・400社のパートナーのネットワークにローミングでアクセスできるのが強みです。KDDIは日本のM2M市場のリーダーであり、この提携で、日本のより多くのお客様が、日本で使用しているSIMと同じSIMで、世界中の国でM2Mのグローバルなローミングサービスを利用することができるようになります。
▼Telenor Connexionが提供するグローバルM2Mサービスの概要
――つまり、日本企業が世界に進出するためのサービスなのですね。
シモンセン氏:その通りです。自動車メーカーや、アセットマネジメントといって、建設機械など監視・運用が必要な資産を世界中で運用しているような企業にはメリットがあると思います。日本国内ではそうした企業にKDDIがサービスを提供していますので、KDDI経由で多くのお客様がカバーできると思います。
日本のお客様は高いポテンシャルを持っていると思います。例えば、スウェーデンのM2M市場の大きなユーザーとしてはスマートメーターがあり、人口900万人の国で100万件の家庭が既につながっています。日本でいえば東京電力などはいいお客様になるのではないでしょうか。
具体的なお客様の数やSIMの数などの数値目標はまだありませんが、先行してグローバルなサービスを立ち上げることで、シェアを多くとっていきたいと考えています。
――北欧といえば世界に先駆けてLTEの導入に早くから取り組むなどネットワーク高度化が進んでいる印象があります。御社のM2MネットワークのLTEへの対応はいかがでしょうか。
シモンセン氏:現在はGSMと3Gのネットワークを主に利用していますが、M2Mも徐々にLTEに移動していくと考えています。システムは完全にLTEをサポートできるようになっており、お客様はLTEが利用できるローミング契約がある国であれば、利用できるようになっています。
自動車メーカーのお客様と、いつもそういう話はしています。自動車分野での新しいM2Mサービスのニーズは2つあって、1つは車載システムへのアクセス、もう一つはインフォテインメントと言われている分野です。車の中から地図のアップデートをしたい、インターネットコンテンツにアクセスしたいといったニーズがあります。あるいは、車の外から、スマートフォン経由でエアコンのスイッチを入れたい、電気自動車の場合であればバッテリー残量をチェックしたいといったニーズもあります。世界中でこうしたニーズは増えています。
自動車メーカーに限らず、もの作りの会社では、「自社の商品がどのようにつながればいいのか」を考えています。世の中に存在するもののうち、99%はまだネットワークにつながっていません。将来的には商品だけではなく商品+サービスを売りたいとみんな思っていますから、開発レベルから「ネットワークにつながる」ことを考え始めています。
――「ものがつながる」ことで、何が変わるのでしょうか。
シモンセン氏:まずメーカーの立場から見ると、ユーザーの使い方、統計、改善すべき点などの情報が商品からフィードバックされるということが第一です。また、ユーザーが何もしなくても、ファームウェアのアップグレードや、場合によっては商品なども、メーカーがプッシュできます。逆にコンシューマーの立場から見ると、ものがつながることで、ユーザーにとって最も重要な商品であるコンテンツにアクセスすることができるようになります。
例を挙げると、医療の世界では、さまざまなアプリケーションが既にあります。アメリカのTELCAREというメーカーは、ワイヤレスでネットワークに接続できる血糖値測定装置を提供しています。この装置とスマートフォンアプリを組み合わせることで、ユーザーは自分の血糖値をいつでも自分で確認し、コントロールできます。イノベーティブなアプリケーションです。
高齢者のためのアラームサービスもあります。日本でもセコムやALSOKのようなサービスがありますね。ベーシックな、何かあったらボタンを押すというものだけではなく、倒れてしまった、元気がない、といった状態をリモートでチェックできるサービスを、ノルウェイで提供しています。
世界中で高齢者は増加しています。慢性疾患と付き合いながら健康状態を維持することが必要とされています。こうしたアラームやモニタリングサービスで、在宅でも自分の状態をコントロールでき、医療コストが下げられます。患者のQOL(Quality of Life)も上がります。
――今回の提携でサービスを提供することになった、日本の市場をどのように見ていますか。
シモンセン氏:私たちからは、日本のお客様はグローバルに提供できるアプリケーションをたくさん持っているように見受けられます。このパートナーシップは、世界にそうしたサービスを展開していくチャンスになると思います。日本のお客様のサービスをサポートするのが、KDDIとTelenor Connexionの提携の目的です。
――ありがとうございました。
▼5/10まで東京ビックサイトで開催中のワイヤレスM2M展のKDDIブース内に、Telenor Connexionのスペースが設置されている
【関連情報】
・「KDDI グローバルM2Mソリューション」の提供に関するTelenor Connexionとの提携について (報道発表資料)
・Telenor Connexion
おすすめ記事と編集部のお知らせをお送りします。(毎週月曜日配信)
登録はこちらWirelessWire News編集委員。独立系SIerにてシステムコンサルティングに従事した後、1995年から情報通信分野を中心にフリーで執筆活動を行う。2010年4月から2017年9月までWirelessWire News編集長。「人と組織と社会の関係を創造的に破壊し、再構築する」ヒト・モノ・コトをつなぐために、自身のメディアOrgannova (https://organnova.jp)を立ち上げる。