1996年にテキサス州で少女誘拐事件が発生し、結果的に9歳の少女は殺害されてしまったが、地元の警察には犯人や連れ去られた少女の特徴が分かっていたため、早い段階で住民にそれを広く伝える手段があれば通報により保護することができたのではないかと悔やむ声が上がったという。
これを受けて開発されたのがアンバー・アラート(Amber Alert)で、名称は誘拐された少女の名前(Amber Hagerman)であると同時に、America's Missing: Broadcasting Emergency Responseの頭文字でもある。誘拐事件が発生すると、警察などからこのシステムを使ってテレビやラジオなどのメディアに情報が伝達され、放送を通じて住民に知らされる。フリーウェイの電光掲示板に情報(車種やナンバー)が掲示されることもある。インターネットのポータルサイトやグーグルなども対応している。
2013年8月5日(月)午後11時ごろ、カリフォルニア州に住む人々の携帯電話が一斉にブーっという音を出した。モバイル向けに発せられる初めてのアンバー・アラートで、州南部のサンディエゴで連れ去られた2人の子供に関する情報だった。日産の青いヴァーサ(日本ではティーダ)4ドアだったようだ。ナンバーのほか、8歳の少年と16歳の少女の特徴も伝えられた。
モバイル向けのアンバー・アラートは2005年導入だが、今年になって大きな変更が加えられたという。従来はオプトインで、情報を受信したい人が自発的に申し込まなければならなかったが、今はオプトアウトに変更され、受信したくない人が機能をオフにしない限り必ず受信するようになった。また、テキストメッセージによる配信ではなく特定の周波数で同報し、いわゆるマナーモードになっていても音が出るようになっている。
オプトイン時代にはアラートが届く先は80万人にも満たなかったが、今では3億台以上ある全米の携帯電話の97パーセントに届けることができるという。当然のごとく、初めて受信した人は戸惑い、ツイッターなどに多くの書き込みがなされたようだ。ちなみに隣接するオレゴン州やネバダ州、北のワシントン州などでもカリフォルニア州の事件のアンバー・アラートが発出された。
誘拐に関するアンバー・アラートに加えて、ハリケーンなどの気象条件、国家的な危機の発生を伝えるシステムはWEA(Wireless Emergency Alerts)と呼ばれ、政府機関から国民に宛てて情報が通知される。このほかにもスマートフォン用のアプリで、ping4alerts!を導入している地方政府もあるそうだ。こちらも核施設の事故、アンバー・アラート、自然災害などの情報を提供する。
【参照情報】
・アメリカの連邦緊急事態管理庁(FEMA)のWEA紹介ページ
・ping4alertsのウェブサイト
・California issues first cellphone Amber Alert, opt-out available
・AMBER Alert for abducted Calif. teen reaches 4 states
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