アフリカの村々は常に伝染病の流行(アウトブレーク)に立ち向かわなければならない厳しい状況にある。ザンビアはアフリカ諸国の中でも特に医療事情の悪い国の一つだが、同国の保健省がアメリカの疾病管理予防センター(CDC)と2010年にスマートケア(SmartCare)というシステムを共同開発した。患者の医療(診断と診療)記録を顔写真入りのスマートカード(1.3ドル)に暗号化して保存するとともに、地元のクリニックのサーバーとSmartCareネットワークのサーバーに保管する。身分証明書のようなカードを、患者は財布に入れて持ち歩いているようだ。
例えば人口5万人に医療サービスを提供している施設があって、一日に麻疹(はしか)の患者が6人来たとすると、医療記録が紙で残される場合、流行の兆しをキャッチするためには、診断する医師とは別の誰かが常に医療機関全体の紙記録に目を光らせていなければならない。電子化されていれば、閾値を6人と決めておくだけで、容易に察知できる。医療関係者が使うシステムもタッチスクリーン式で簡単に操作に習熟できるよう設計されているほか、バッテリー内蔵なので往診時に持ち運べるようになっているという。
スマートケア・システムはザンビア国内各地の550の医療機関のほか、エチオピアや南アフリカでも採用されている。どの機関でも同じカードを利用することができるらしい。アメリカにも日本にも、そのようなカードは今のところ存在しない。ヒラリー・クリントン前アメリカ国務長官は、ザンビア訪問時にスマートケア・システムのビジョンを称えるスピーチを行っている。
地域によって、また季節によってどの病気が脅威となるかが違うため、今後は各地域の条件に応じたチューニングが求められているそうだ。
【参照情報】
・SmartCareのウェブページ
・SMARTCARE IS IMPROVING AFRICAN HEALTH CARE ONE CARD AT A TIME
・This African Smart Card Helps Catch Disease Outbreaks
・Zambia Leads the Way in SmartCare Electronic Health Records System, A Benefit to Both Providers and Patients
・外務省・在外公館医務官情報:ザンビア
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