黒澤明監督の「生きる」は、病気でいくばくもない自分の余命に考えを至らせた初老の官吏を描いた作品だ(1952年公開)。残り少ない時間をどう使うべきか、どう使えるのかという自己への問い掛けは古くからあるが色あせることはないのではないか。
ティッカー(Tikker)と名づけられた腕時計は、自分があと何年、何時間、何秒生きていられるかを知らせてくれる腕時計だ。
ユーザーはまず、ティッカーに同梱されたパンフレットにある質問に答える。質問はユーザーのライフスタイルなどを問うもので、それによって人生の残り時間が計算される。これを腕時計に設定すると、カウントダウンが始まる。もちろん、その時間は正確ではないが、腕時計は文字盤を覗くたびに命の長さは有限で、終わりが近づいていることを思い出させてくれる。ティッカーの目的は、残り時間を示すことではなく、いかにその時間を過ごし、何をするべきかを考えさせることにあるという。辛い一年よりも幸福な一週間の方が、ずっと価値があるということだ。
仕掛けは極めてシンプルで、時計そのものも3段の数字が表示されるデジタル時計で、デザインはシンプルそのものだが、このコンセプトは人々の琴線に触れるようで、クラウドファンディングのKickstarterで目標額を簡単に突破する支持を集めた(1個39ドル)。
将来的には例えば禁煙プログラムを組み込んで、時計に激励のメッセージを表示するとか、生活習慣を変えたら残り時間が増えるようにするなど、構想はいろいろあるようだが、今の時点ではティッカーの機能は極めてシンプルだ。
この時計、各国の記事では「デス・ウォッチ(death watch)」とか、「メメント・モリ・ウォッチ(memento mori watch)」と呼ばれている。ラテン語の"memento mori"とは、「汝の死を覚えよ」という意味だそうだ。
【参照情報】
・KickstarterのTikkerのページ
・Kickstarter of the Week: New Watch Tells You When You'll Die(YouTubeのページ)
・Technology Meets Philosophy with 'Death Watch'
・The Tikker: a 'death watch' that counts down how long you have left to live
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