パテント・トロール対策をねらう「Innovation Act」法案、米下院を通過
2013.12.06
Updated by WirelessWire News編集部 on December 6, 2013, 13:48 pm JST
2013.12.06
Updated by WirelessWire News編集部 on December 6, 2013, 13:48 pm JST
いわゆる「パテント・トロール」への対策を狙いとした「Innovation Act」法案に関する採決が米国時間5日に連邦議会下院で行われ、賛成325票対反対91票で可決されたが、この法案が概して大企業に有利な内容となっていることなどから、小規模な事業者や大学関係者などからは反発の声も上がっているという。
特許権を買い漁り、また集めた特許権を根拠に他社への訴訟を繰り返す「パテント・トロール」については以前から弊害が指摘されていたが、とくにこうした訴訟の対象になりやすい大企業からは、取り締まりを求める声が高まっていた。そのため、ボブ・グットラテ(Bob Goodlatte)下院法務委員会委員長が起草し、今回下院を通過した発案についても、グーグル(Google)などのテクノロジー企業やベンチャーキャピタリストなどが支持を表明、またオバマ政権でもこれを支持する姿勢を示していたとThe Vergeは記している。
この法案では、特許権の保有者が、特許権を侵害していると思われる相手に抗議の書面を送る際に、どの製品のどの部分が自社のどの特許権を侵害しているのかなどを具体的に示すことが義務付けられている。また、原告が裁判で敗訴し、訴えが適切でないと判断された場合は、原告が裁判費用を負担する必要があるとされている。
こうした内容に対し、小規模な企業などがつくる団体からは批判の声も上がっている。National Small Business Association(NSBA)では、この法案が成立した場合、中小企業や個人にとっては訴訟に関わる負担が増すことから、保有する特許権を守りにくくなるなどと主張。また同法案についての審議が十分に行われておらず、法務委員会への提出からわずか2ヶ月足らずという短期間で下院を通過してしまったことに対して警戒感を示しているという。
さらに研究の成果を商品化せず、代わりに企業などにライセンス提供して利益を得ている一部の大学などでも、この法案の対象が広すぎる点や収入の機会が失われかねない点などを問題視しているほか、クアルコム(Qualcomm)のポール・ジェイコブ(Paul Jacob)CEOもこの法案をめぐる議論に「発明者の視点が欠けている」と指摘していたという。
この話題を採り上げたGigaOMでは、特許権を侵害している可能性があるとみれば相手かまわず書面を送りつけ、裁判で争うだけの資金力やリソースを持たない中小企業や個人などに和解金を要求するタイプのパテント・トロールに対しては、この法案が一定の効力をもつであろうと指摘。そのいっぽうで、そもそも認められるべきでなかった質の低い特許権が多すぎ、その点を解決しない限りは、特許権をめぐる諸問題の根本的な解決は難しいなどと記している。
【参照情報】
・House Passes Bill Aimed at Patent 'Trolls' - WSJ
・House of Representatives passes widely supported bill to fight patent trolls - The Verge
・House passes Innovation Act by vote of 325-91: a small solution to a big patent problem - GigaOM
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